-BlueRosePrincess-【凍結】
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ドレスアップなど、用意が出来上がり枢のエスコートでパーティーを行っている庭まで来たはいいが、どうやら誕生日パーティーには相応しくない会話をしているようだ。
「あれは“元人間”の吸血鬼だ。汚らわしい」
「……っ、」
「藍堂」
英の殆ど感情の見られない突き放した言動に怯える優姫。
見かねた拓麻が英を軽くたしなめた。
「優姫ちゃん…吸血鬼の社会は頂点の数人の[純血種]と一握りの[貴族階級]の吸血鬼が支配しているんだ。夜間部は全員貴族階級以上なんだけど…」
「ピラミッドに喩えるなら、純血種はレベル:A、貴族階級はレベル:B、一般の吸血鬼はレベル:C、“元人間”は一般の吸血鬼の更に下(レベル:D)だから…正直あまり大事にされてない。僕が殺したあの吸血鬼はそのピラミッドからも外れてしまった存在――レベル:E」
「レベル…E…?」
混乱し始めた優姫に暁が更に補足を加える。
「正確には[LEVEL:END]そのくらいまでなら隣にいる錐生が知ってるんじゃないか?吸血鬼ハンターの家の生まれだぞ」
「(零が?でも…)」
戸惑う優姫を見向きせず、淡々と零は話の続きを述べた。
「…“元人間”は遅かれ早かれ必ずそのレベル:Eに堕ちるんだ…優姫。徐々に理性を蝕まれ“END”限界・破滅に行きつく」
「そう…そして際限なく血に飢え、手あたりしだい人を襲うようになる。だからこそ、元人間の吸血鬼は貴族階級以上によって管理されるものなんだ」
「管…理…」
“管理”という言葉に優姫が反応した。
奥でこの会話をこっそり聞いていた私たちは、枢が手を引くことによって再び足を進めた。
「だけど希にアクシデントもあってね、」
「狂った吸血鬼が貴族の支配下から逃げ出し、人間社会に迷い込むことも…今日この街に〈レベル:E〉の吸血鬼が現れるという報告があったんだよ。一条と支葵にはそれを狩りに行ってもらったんだ…僕の命令でね」
「…枢様」
「なまえ様…」
「枢センパイに、なまえセンパイ…!」
「枢様となまえ様が揃われて夜会に…」
「珍しいことだ…」
枢となまえが現れたことによって会場はざわつきだした。
動揺する優姫にそっと笑いかけた。
「センパイが、あの吸血鬼を…」
『…優姫、どうして理事長に報告しなかったの?』
「風紀委員のくせに、一条に言われるまま」
「それはっ…!」
「こんな危ないところに来てしまって…」
「…簡単に告げ口していいものとは思えなくて…それに、直接確かめたかったし」
「直接…ね…、こっちおいで。優姫も錐生くんも」
ため息をついた枢はなまえを引き寄せてソファーに腰掛けると二人をそばに置いた。
『優姫はここにお座り?』
「へ、!?」
枢と自分の間を空けたら、枢の気に触ったようで…
枢が真ん中になるように間を空けた。
零の様子を伺った優姫は断りを入れたが、枢は許さなかった。
渋々ソファーに座った優姫にこっそり、
『ここが一番安全よ』
「なまえ、センパイ…」
枢はサッと優姫の腕を取り、今回のことを叱りながらも治療するのだろう…包帯を解き始めた。
『(こんなことで、心が少し痛むだなんて…私はどんなけ嫉妬深いんだ…)』
「…元は人間の吸血鬼なんて、本当は生み出されてはいけないんだ。けれど昔、歴史の裏で吸血鬼と吸血鬼ハンターの戦いが最悪を極めた頃…吸血鬼側が多くの人間を“戦力”として同族に引き込んだんだよ…。そして今、貴族階級以上の者はその時の生き残り達を管理する義務を負っている」
「あの、枢センパイ…」
「時には、始末をつけてやらなければならないことも…」
「吸血鬼を狩るのは吸血鬼ハンターの役割ですよ」
「…じゃあどうして、君が彼を殺してあげなかった?もしかして、錐生くん…“彼”に同情した?」
瞬間、空気が一気に緊迫した。
星煉が零の首に爪を刺し、零が枢に銃を向ける。
他の吸血鬼たちもそれぞれ武器を手にし、戦闘態勢に…
『星煉、ダメ。今のは枢が悪いわ。零もごめんね。銃を下ろして?』
「零…」
星煉は爪についた血を払い、零は不服そうにも銃を下ろした。
『ありがとう』
「…びっくりしたなぁもう、」
「枢様に銃口を向けるとはね…錐生…この場で八つ裂きにしてもまだ足りない」
「こらこら藍堂、本当にやっちゃだめだよ」
「ああ、なるべく堪えるよ。学園にいる間は…黒主理事長の“平和主義”を僕は否定したくない。だが忘れるな。“純血の吸血鬼”枢様となまえ様がいるからこそ、僕たちもまたこの黒主学園に集ったんだ」
「枢センパイと、なまえセンパイが“純血種”…(零の家族を襲った吸血鬼と同じ…)」
『…初めて知ったような顔ね、優姫…』
「怖い…?」
「枢センパイは昔から少し、怖いです…」
『優姫、私は…?』
「なまえセンパイは、怖くない、です。むしろ優しくて、憧れというか…」
そのあとは、変な空気を一転させるように一条が手を叩き、誕生会を再会させた。
真実は残酷で
(枢、拓磨におめでとう言ってない)
(後でね)
(あ、ケーキ!ケーキ食べたいな?)
(星煉)
(はい、…どうぞ、なまえ様)
(…ありがとう(腰から手を離してはもらえなさそうね))
2013.06.13