-BlueRosePrincess-【凍結】
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――またひとつ、歯車が動き出す――
聖・ショコラトルデーの時にも感じたが、どうやら最近零の様子がおかしい。
顔色も悪くて心配していたが、ふと、頭の中を過ったのは、運命のあの時が近付いていることだった。
(優姫が危ない…)
自分が替わることも出来るが、そうすると枢を酷く悲しませてしまうことはわかっている。
だから、どうしようもない事。だと、わかっていたつもりだったが…
「なまえ、ちょっといいかな」
『どうしたの?』
「なまえも気付いているだろうけど、錐生くんの事で理事長の所へ行くのだけど、一緒に来るかい?」
先程まで考えていたことが、まさか今日だったとは思いもしなかった。
なまえは一瞬考えて、すぐに首を横に振った。
『私は、行かない。代わりに瑠佳を連れて行ってあげたら?』
「…わかった。なまえはここに居てね。くれぐれも、部屋から出ないようにして」
にっこりと微笑みを返すだけで、返事はしなかった。
扉越しに感じた瑠佳達の気配に視線を反らして、枢の背中も見送った。
(だって私はきっと、零の所へ行ってしまうもの)
心の中で枢に謝ってから、なまえは静かに部屋を出た。
零の気配を探しながら…
思っていたより零は直ぐに見つかった。
どうやら階段の踊り場でへたり込んでしまったみたいだ。
『零、大丈夫?』
「―っ、何しに来た。帰れ」
『零を探してたの。もう、限界が近いのでしょう?』
「なんで、それを…」
答えは返さずに、にっこりと少し悲し気に微笑んで見せた。
その様子に零はため息を吐き、「お人好し」とこぼした。
『どこから噛みたい?私こういうことに免疫がなくて、よくわからないんだけど…』
雰囲気も何もないなまえの言動に黙ってしまった零だが、さらりとこぼれたなまえの髪の間から見えた白い首筋に、零の中で何かが切れた音がした。
『零?―っ、キャッ』
急に手を引かれ、抱き込まれたかと思うと、首筋にヌルリと舌の這う感触に肩を揺らした。
――ぶつり、
一度小さい頃に枢に噛まれた事はあったが、それ以来の経験に何とも言い難い不安と恐怖と、枢への罪悪感に苛まれる。
そんな時、階下から物音がして視線をやると、そこには優姫が立っていた。
出来れば見てほしくなかった姿に、なまえは益々悲しくなった。
「零…なまえセンパイ…」
「―っ、優姫…これは、」
―カツン、
新たな足音に三人は目をやると、そこにいたのは
「枢センパイ…!」
嗚呼、見つかってしまった…
優姫に見つかった時点で、いや、血を流した時点である程度予想はしていた事なのだが、やはりなまえはこの現状に目眩を覚えた。
ぐらりと傾いたなまえの体を素早く受け止めた枢は、視線だけで殺せそうな程の殺気で零を睨んだ。
それに気付いた優姫が素早く零の前に立ち、庇いに入ったが枢の怒りは治まることなく、
「優姫、この場で殺してしまわないように、錐生くんを連れて行ってくれないかな」
「…わかりました。行こう、零」
「理事長、僕はこのまま帰ります」
ぐったりとした体を抱えて、枢は寮へと帰って行った。
許して貰えるだろうか
(なまえは本当に酷い人だ)
(悲しそうな枢の声が)
(暗闇の中で聞こえた気がした)
2012.03.23