-BlueRosePrincess-【凍結】
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――物語はもう、
動き始めている――
最近の枢はどこか忙しそうだ。
きっと黒主さんの言っていた“学園”のことについて、いろいろとあるのだろう。
私は関与しないと決めていたし、枢も何も言わないということは、関係ないのだろう。
書類に追われる枢を横目に、出掛ける支度をすると、それを目敏く見つけた枢が案の定声をかけてきた。
「どこ行くの?」
『優姫のところに。最近おざなりだったから、様子を見たくなって』
「ダメ。ここにいて、なまえ…(今はまだ、)」
『…何で?』
枢が言う意味がわからず、少し不機嫌な声が出た気がする。
「行ってほしくないんだよ、なまえ…」
『ちゃんと理由を言ってちょうだい』
「………(あいつがいるはずだから、なんて言えない)」
そう、今優姫の住んでいる黒主家にはもう一人、、
忌まわしき事件の男の子が住んでいるのだ。
今、吸血鬼が近付くと何をされるかわからないくらい、彼は気が立っているはず。
そんな所になまえ一人で行かせるなんてことは、出来るはずがなかった。
『理由が言えないようなら、私もう行くね。枢は忙しそうだから、私が代わりにちゃんと…』
「僕も行くよ」
『…え、?』
「拓麻に車を用意させるから、ここで待ってて」
『え、ちょ、…』
そのままスタスタと部屋を出た枢は数分後、また部屋に戻ってきて上着を羽織ると、私の手を引いて駐車場まできた。
(公式な場合は玄関ホールで車を待てばいいんだけど、非公式でこっそり出るから地下駐車場まで行く方が安全なのです)
そのまま枢の膝の上にかかえられ、車は発車した。
これはいつもの状態。
車は勿論、高級車で広さも十二分にある。
なのに車の中ではこうと、決まっている…らしい。(枢の中で)
黒主さんの家に着いて気付いた。
いつもと変わらないはずのそこには、他の、知らない気配があった。
なまえは暫く考えた後、直ぐに思い出した。
『(ああ、これは…)』
玄関で迎えてくれた優姫に誘われるままリビングへ向かうと、入口で枢は一度立ち止まり、私を壁際に隠して一人で中に入って行ってしまった。
すると部屋の中からは殺気を放つ男の子が立ち上がった。
そう、この男の子こそがあの忌まわしき事件の被害者“錐生零くん”
「なんでここに吸血鬼がいるんだ!!」
零はそのまま手元にあったナイフを握り、枢に向かって踊り出た。
『(ダメっ)』
なんともないことはわかっていても、体は、心は、枢のことだけだった。
「―っ、!なまえ!!」
枢の前に出てナイフから守ろうと思ったのに、そんな私を直ぐに抱きしめるとナイフから庇って脇腹を刺されてしまった。
『枢!!(意味ない!!)』
「大丈夫だから。これくらい、何ともないよ。それより、何で出てきたの?」
『―…』
黙り込んだ私を見て、はぁ、と溜め息を零すと
「びっくりさせないで。心臓が止まるかと思った」
『…そんなの、そんなの!私だって同じよ…。傷付くのがわかってて、黙ってなんて見過ごせない』
「なまえ…」
しょんぼりとした私の頭を撫でて、枢は少し嬉しそうな顔をした。
「勝手にお前らの世界に入ってんじゃねぇ吸血鬼なんて…!―っ、」
「零…、」
殺気を更に強くさせた零は優姫の声にも反応せず、今すぐにでも枢を殺したそうな目で睨んだ。
「復讐の相手を間違えてるよ、錐生くん」
「ホント、いきなりの切り付けてくるなんて…酷いね」
「黙れ吸血鬼!お前らからは“あの女”と同じ匂いがする」
「あの女…?じゃあ君が錐生…零…?(こいつが…)」
『―…、』
話には聞いていたが、実際に会ったのは今日が初めてだった枢は、未だに殺気を放つ零にはっきりと“殺される気はない”と断言さ、私の手を取った。
「今日は帰ろう、なまえ」
「枢様っ、血が…」
「なんでもないよ、すぐ治るから。僕は吸血鬼だから」
『本当の“痛み”を感じているのは彼なの、かも…』
「…え、?」
こうして世界は変わり始める。
(枢、血。手首の所まだ残ってるよ)
――すっ、
(何?)
(舐める?)
(…いらない)
(……ぺろ、)
2011.10.29