〜春を呼ぶ妖精たちの祝祭〜【完結】
夢小説設定
この章の夢小説設定ヒロイン≠ユウ
転生トリップ女性
男装している
オンボロ寮生
恋人未満
レオナのお世話係
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---ポムフィオーレ寮ボールルーム
【腰は揺らさず、足だけ前に…地面に足がついている間は、膝をまっすぐ…1本の線の上を歩くように、足をクロス…でも歩幅は広く、胸を張る】
「おら、どーだよ。ファッションショーのウォーキング、これなら文句ねぇだろ?」
ジャミルが出ていった後、ボールルーム内のコースを見事に歩ききったレオナはドヤ顔でヴィルを見た。
なまえはそんなレオナの素晴らしくカッコイイ姿にまた見惚れてしまっている。
この様子だと、妖精の女王様を見惚れさせるのも十分可能であろう。
「…満点だわ。数日前とは別人じゃない。どうして急に本気を出したの?」
「ファッションショーなんてくだらなさすぎてやる気が起きなかったが…いい加減お前に付きまとわれるのは、もううんざりだ。それならさっさとクリアしちまった方が楽だと思ってなァ。どうだ、なかなか素直だろ?」
「楽するためなら、本気を出すってこと?感心するほど怠惰ね」
「ウォーキングはクリアしたぞ。これで“レッスン”とはおさらばだな」
飽き飽きとしたレオナは帰ろうと、ボールルームの扉へ向かって歩き出した。
「甘いわね。私たちの世界の“ウォーキング”が、ただ歩くだけで済むと思ってるの?」
「はぁ?まだなにかあるのか!?」
「当然よ。ショーの中で一番重要なもの。それは…」
ポージング!!!!
「ポージング…?」
『なるほど!決めポーズってやつですね!』
「そうよ。ランウェイを歩いて視線を集め、魅力的なポーズをキメる!それが、ファッションショー。素人でも、テレビや雑誌なんかで見たことぐらいはあるでしょう。ランウェイの先端を折り返すとき、例えば腰に手を当て…」
---キリッ!
「………」
『ふおお!』パチパチパチパチ
「こんなふうに、ポーズをとるの」
「…歩きと関係ねえじゃねぇか」
「“ポージング”はウォーキングの一部よ。それがキマらなきゃ、会場中の目線なんて奪えっこない」
確かに一理ある。
「そして、ポーズはモデルの人生を映し出すもの。アタシとまるきり同じでいいわけじゃない」
「あーあー、めんどくせぇ。お前が適当に見繕えよ」
「…ふっ、アンタなら面倒くさがってそう言うと思ったわ。非協力的なアンタでもやる気が出るように、強力な助っ人を用意しておいたわよ」
「…この流れ、嫌な予感がする」
レオナの予想は見事に的中した。
「やあ、ロア·ドゥ·レオン(獅子の君)!今日も素敵な毛並みだね、トレビアン!」
「真面目なレオナくんとかレア〜!記念に1枚マジカメ上げちゃお♪」
---パシャッ
「なまえくんとレオナくんの可愛いツーショ取れちゃった!後で送っておくね〜」
「………」
『はわ!ルークさんとケイトさん!』
「やかましいのが2人も来やがった…」
嵐のような登場にイマイチ着いていけていないなまえ。
「どうしてこいつらが助っ人になるんだ」
「美に敏感なルーク。トレンドに詳しいケイト。ポージングのアドバイザーにはうってつけでしょう」
「レオナくんの“美しさ”を引き出せばいいんだろう?私に任せてくれ」
「オレたちがサイコーに盛れるポーズを教えてあげるね♪」
「…はぁ、まあいい。ずっと口うるさいのと居て気が滅入ってたんだ。さっさと済ませるぞ」
「レオナがファッションショーで一番目立つためのポージング開発…まずはルークとケイトの意見を聞かせて」
「んー、そうだな…」
「………」
『(あ、この空気、私でもわかる…“嫌な予感”ってやつだ…)』
「モテ間違いなしの、ミステリアスな上目遣いとかどう?グッ!と顎を引いてみよっ☆」
---グッ!
「ぐっ、!!」
「もう少し儚さがほしいな。レオナくん、私のほうに手を差し出してくれるかい?虚空を一心に見つめ、…そう、まるで王子に助けを求めるように…!」
「は?訳のわからねぇ事を言ってんじゃね…」
「ノン!体は正面に向けて!!肩もシャキッと、地面と並行に!!!」
---グイッ!
「うっ!!!」
「そうだ、花を持ってみては?黄色と桃色どっちが似合うだろうか。プリンセスはどちらが似合うと思う?」
「「………?」」
「おや?君のことだよ、なまえ・みょうじ」
『…は!?え、!?私!??』
「え?なんでなまえくんがプリンセス??確かに女の子みたいだけど…」
『うぁ、えっと…(ど、どうすれば…)』
バレているという事なのだろうか?それとも言葉のあや?どう対処するのが正解なのか分からず、狼狽えることしか出来ないなまえの不安に押し潰されそうな瞳に、表情に、痺れを切らしたレオナは助け舟を出した。
「なまえのカラーはピンクだ。オレのカラーはイエローかグリーンだろ。なあ、カリスマモデルの“ヴィル様”」
「え!?あ、ええ、そうね。よく分かってるじゃない」
「…ふん、」
レオナのおかげで変な空気から脱することが出来た。
安堵からか、なまえの瞳にはじんわりと涙が滲んでいた。
「御託はいいから実践させろ。そっちのほうがずっと早い」
「…なに?やけに自信たっぷりじゃない」
「テメェらの要望は、“ミステリアス”で“凄い”ポーズだな?リクエストに答えてやる。黙って見とけ」
その言葉通り、彼はミステリアスで儚くカッコイイ、それでいて彼らしく雄々しい…自分の魅力を分かった上での、計算され洗礼されたポージング。
なまえは完全にレオナの空気に取り込まれてしまった。
「ほらよ。これで満足だろ」
「「………」」
「ロア·ドゥ·レオン(獅子の君)…」
「とても美しいポージングだったよ!!」
「しかも超自然〜!レオナくん何気に慣れてない!?」
「実家じゃ、肖像画やら記念写真やらでポーズをとらされることも多かったからな。これぐらい当然だ」
「しょ、肖像画ってさすが王族」
「……確かに、悪くはない」
「ははっ!そーだろ!?んじゃ、今度こそレッスンは終わり」
「でも」
「「でも??」」
「……普通ね」
今度こそ帰ろうとしたレオナの足を、またしても止めることとなった。
「「!?」」
「この俺に…ここまでさせておいて、…“普通”だと…!?」
「“普通に”きれいだとは思った。ミステリアスさも儚さも、コンセプトとしては悪くない。でもそれだけじゃだめ。《ティアラも視線も独り占め大作戦》のためには、普通を超える“何か”がなければいけない。レオナのポージングにはその“何か”が足りないわ」
「なるほど。確かに言われてみるとレオナくんの、この先を見てみたい気がする。やはりヴィルの美に対する意見はいつも的確だね」
「ただ、その足りない“なにか”の正体がわからなくて困っているの」
「これは難問だ。レオナくん自身はどう思う?」
みんなの視線がレオナの方に振り向くが…
「!?」
「レオナはどこ?」
「えっとぉ、レオナくんは…“飽きた”って言ってサバナクローに帰っちゃった♪」
「「!?」」
「なんて無責任な男なの…!追いかけるわよ!」
獅子のポテンシャル
{レオナさん、本当に抜けてよかったんですか?}
(知らねぇ。ほっとけ)
{ヴィルさん達怒ってそう…}
2020.06.29