〜春を呼ぶ妖精たちの祝祭〜【完結】
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この章の夢小説設定ヒロイン≠ユウ
転生トリップ女性
男装している
オンボロ寮生
恋人未満
レオナのお世話係
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「よーし、もう一息…っ!」
「お前ら、どけ」
「!!」
「格の違いってもんを見せてやるよ」
バサッと衣装を靡かせながら、二人の間を抜けたレオナ。
「妖精ども!ありがたく、俺のショーを目に焼き付けろ!」
妖精A《ま、真ん中の妖精…オーラが凄すぎて圧倒される…》
妖精B《なんて堂々とした歩き方!とても洗練されてる!》
「ようやく2本足で歩けるようになったばかりとは誰も思わないだろうな」
「うるせえ。目立ってるんだからそれでいいだろうが」
女王《まぁ、!彼はどちらの郷の妖精かしら?クチュールのデザインもとても素敵…》
「女王がこっちを見てるぞ!」
「視線を“独り占め”にするまで後一息…!」
「…仕上げだな」
司会妖精《太陽のような瞳と、健康的に焼けた肌、パワフルな肉体を包む純白の羽衣!今回のフェアリーガラのテーマである“エキゾチック”にマッチしています》
妖精A《物憂げながら、見事な足さばき…一体なんの妖精だろう》
妖精B《滲み出る気品と、豪華な衣装。さぞ名のある妖精に違いないね》
「わぁわぁ好き勝手騒ぎやがって…余裕で評価してられるのも今のうちだ」
司会妖精《いよいよランウェイの先端までやって来ましたね。一体どんなポーズを見せてくれるのでしょうか》
「癪に障るが…ヴィルも認めた“とっておき”を見せてやる。〖ティアラも視線も独り占め大作戦〗…俺が成功させてやるよ!」
司会妖精《こっ、これは!!!???》
---バサァ!!
司会妖精《……なんということだ。さっきまでミステリアスで儚げだった妖精が…重厚なケープをめくり、足を大きく広げて雄々しくターンしました!始めのアンニュイさはそのままに、それでいてダイナミック!!!こんなに大胆で力強いポーズをとった妖精は、いまだかつて見たことがなーーい!!!会場中が、ランウェイに釘付けです!》
妖精A《荒々しくも美しいポーズの数々。あのほつれて顔にかかった、髪の1束になりたい》
妖精B《鋭い瞳に、挑発的な眉間のシワ…なんてエキゾチック》
「おいお前ら!ヒソヒソ話してないで…もっと俺を褒め称えてくれよ」
妖精たち《きゃーーー!!!!》
妖精A《お願い!あなたの鱗粉振りかけて!!》
妖精B《バサ〜してッ!》
「おらよ!」
---バサッ!!
妖精たち《きゃ〜〜!!!!!》
「オレたちもとっておきの技を見せるぜ!会場のみんなも、一緒に踊ろう!」
「さあ、座っていないで!手を叩いて、歌って、春を祝おう!」
妖精A《素敵なリズム…!体が勝手に動いちゃう!》
妖精B《みんなで春をお祝いしょう》
妖精たち《ワアアアアアァッ……》
女王《あぁ、妖精たちがみな、春を喜んでいる。笑顔と花があふれて…なんて素晴らしいショーなんでしょう。この光景を、ずっと眺めていたい…》
「今だ!!」
---ブーッ!ブーッ!
「きた、合図!!………ふう、すり替え成功!」
「にゃ、にゃにっ!!気付いたらもう終わってたんだゾ!早技すぎて全然見えなかった」
「ティアラを髪に固定してたピン外して戻して6秒ってとこッスね。10秒もいるもんか。レオナさん、オレを侮りすぎッスよ。シシシッ!おっ、ユウくんおかえり!タイミングバッチリだったッスよ」
「女王も全然気づいてませんでした」
「シシシッ。まっ、素人と一緒にされたら困るッス。よし!早くここを離れよう」
司会妖精《みなさん…盛大な拍手を!!!》
「レオナ先輩、お疲れ様でした」
「歓声がうるさすぎて耳が痛い…休憩してくる」
「でも、温室の入り口でラギーたちを待たないと!」
「…用をすませたら行く。もうショーは終わったんだ。あとは好きにやらせろ。行くぞ、なまえ」
「でも、レオナ…!」
「ただでさえ尻尾が窮屈で不便してるんだ。これ以上俺をイラつかせるな」
『レオナさん…!』
ジャミルとカリムの静止を振り切り、なまえの腕を掴んで強引にその場を離れた。
『どうかしましたか?何かあるんですか!?』
「どうかしたのはお前だろう。なんだ、そのシケた面は」
『えっ、!?』
「俺のステージを見て、惚れ直したんじゃなかったのか」
『…っあ、…その、……』
てっきり、ステージが終わると真っ先に駆け寄ってきて、興奮したように輝いた瞳で寄ってくると思っていたレオナは肩透かしをくっていた。
なまえの手首を掴んだまま、亜熱帯ゾーンに足を向けていたレオナは別の異変に気付いた。
---シャアアア…
「ぶわっつめてえっ!?なんだ!?雨が降ってきたんだゾ!?」
「違う、これは…植物園のスプリンクラーッス!やばい、亜熱帯ゾーンにはスコールタイムが設定されてたの忘れてた!このままじゃ…」
「水で〖妖精の粉〗が全部落ちる!」
「!やばいっ、誰か来る!ひとまず物陰に隠れるっス!」
妖精C《なんだ…?このあたり…すごく、人間くさい!妖精の祝祭に人間が紛れ込んでいたのか?なんと不敬な》
妖精B《匂いが近い。どこに隠れている!出てこい!》
「(このままじゃ見つかっちまう…!)」
妖精C《ここか…!》
絶体絶命…!そう思われた時、圧倒的王者の声が響いた。
「おい、お前」
妖精C《ん?》
「「(えっ!?この声は)」」
「お前だよ、お前」
妖精C《あっ、あなたは…さっきのショーで会場中を感動の渦に巻き込んだ…どこぞの高貴な妖精様!!》
「こっちを見ろ」
「(レオナさ〜〜ん!ナイスタイミングッス〜〜!!)」
「アイツ、オレ様たちを助けにきてくれたのか!?」
「たぶんそうッス」
「俺の控え室の水がぬるい。俺は冷えた水しか飲まないんだ。今すぐ取り替えろ」
「レオナのヤツ、ああいう偉そうな演技がめちゃくちゃ似合うんだゾ…」
「いや、あれは演技じゃないッス。いつも通りのレオナさんッス」
妖精C《で、ですが私には見張りの任が…》
「あ?…俺の言うことが聞けないって言うのか?」
妖精C《いえっ!!そういうわけでは…な、なんだ?体が自然と従ってしまう…》
「あの妖精、レオナの迫力に圧倒されてるんだゾ」
「もうレオナ先輩のことしか見てない…これは〖警備員の視線も独り占め大作戦〗ッスね!」
「…ん?なんかレオナが口をぱくぱくしてるんだぞ」
「?い、ま、の…う、ち、に…」
「(さ・っ・さ・と・行・け)」
「よし!今のうちにこっそり行きましょう」
「このまま脱出なんだゾ!!」
無事に3人の脱出を見送ったレオナは、興が醒めたと言い、近くの植物の影に待機させていたなまえを手を再び引いてその場を離れた。
亜熱帯ゾーンから離れた2人は、改めていつもの温暖エリアで向かい合った。
「で、話を戻すが…その顔は何だ」
『…私も、わからないんです。最初は緊張していたんですが…レオナさんの鼓動を聞いて、皆さんのウォーキングを見ていたら気持ちも落ち着いて、むしろワクワクしてきて楽しかったんです。でも…』
この気持ちを、感情を、どうやって言葉にすればいいのかわからないなまえはグルグルと目が回る思いだった。
そっと両手を握って向かい合い、なまえの目をしっかり覗き込むレオナのキラキラした翠の瞳に吸い込まれる様に、なまえは再び気持ちを零した。
『妖精さんのみんなが、レオナさんを見てキラキラと紅潮して居る姿を見て、何だかとても、遠く感じたんです』
「遠く?」
『レオナさんは、私のモノでもないし、誰のモノでもないのに…取られちゃった様な、独り占めしたいような…寂しくて、悔しくて…』
「つまり、嫉妬したと」
『…、嫉妬…?』
漸く理解したレオナは安堵の溜息を零して、そっとなまえを抱き寄せた。
『ふぁ!?えっ、』
「終わった時お前が…興奮した顔でしっぽ振って来るかと思ってた。なのに違った。俺達がステージにいる間に何かあったのかと思って…焦った」
『えっ!?心配、してくれたんですか…?』
「……そうだ。悪いか」
『あっ、いえ、!とても…嬉しいです』
なまえもよくわからないが、レオナが抱きしめてくれることに安心した様で、そっと背中に手を回した。
それに気を良くしたレオナは、喉をゴロゴロ鳴らしながらなまえの頭に頬を擦り寄せた。
『(あっ、可愛い…!それと、嬉しい…なんだろう、この気持ち…私、もしかして…)』
なまえがこの気持ちに名前をつけるまであと少し。
黄色い歓声
{皆さんをお待たせしてますよね!}
{メインストリートに向かいましょう!}
2020.06.30