〜春を呼ぶ妖精たちの祝祭〜【完結】
夢小説設定
この章の夢小説設定ヒロイン≠ユウ
転生トリップ女性
男装している
オンボロ寮生
恋人未満
レオナのお世話係
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
---ポムフィオーレ寮ボールルーム
いよいよ今日は、フェアリーガラ当日。
ボールルームに集まって、衣装とヘアメイクの最終調整をしている。
「この布、どこに巻けばいいんだっけ」
「貸してみろ。こうして肩にかけて…、これでいい」
「やっぱこんな高そうな服着るのは緊張っていうか…むずむずするッス」
「堂々としてりゃお前だってそれなりに見えるんだよ。おどおどすんな」
「みんなキラキラして眩しいんだゾ!」
「刺繍のおかげもあるけど、ふりかけられた妖精の粉の効果かもな…」
「皆さん、似合ってますよ」
『グリムもかわいいよ』
金や銀の刺繍と、キラキラの妖精の粉の効果もあって、ボールルームは一層キラキラと輝いていた。
そんな中、特に煌めきを放つ主役の王子様…レオナの傍に寄り、声をかけた。
『レオナさん、今日は私に出来る限りサポート頑張りますので、ステージでは楽しんできてくださいね』
「…ふーん、そういうお前は…まぁ、草食動物にしちゃ悪くない」
なまえの髪を撫ぜて耳にかけ、自分の装飾品から外した髪飾りを刺した。
その姿にニヤリと満足気に笑ったレオナは、瞼に彩られたキラキラのアイシャドウや、肌にかけられたキラキラのルースパウダーが落ちない様に気を使いながら、そっと目元にキスを落とした。
『っ、!?』
「お前は俺だけを見てろ。余所見するんじゃねぇぞ」
王子の急なMAXファンサに、なまえの顔はチークとは誤魔化せない程真っ赤になってしまった。
倒れなかっただけでも拍手が欲しい…
『はわ、れ、れおなさん…』
「ふん、」グルグル
レオナは満足気に、気分が良いのか猫のように喉を鳴らしている。
「よかったね、なまえ」
『ユウくん…!ひぇ、…』
そんな甘い(?)雰囲気を他所に、他のメンバーの支度は整ったようだ。
「うん。ユウもちゃんと妖精らしく見えている」
「アンタたち、準備はできた?最後で気を抜いたら、厳しい特訓に耐えた意味がない。鏡を見て、メイクのチェックも入念になさい。最初は無様な芋洗い状態でどうなることかと思ったけど…今日のアンタたちの仕上がり、悪くないわ」
「ヴ……ヴィル先生〜〜!!」
感極まったカリムがヴィルに縋るように抱きついた。
「踊れるようになったのは、ヴィル先生のおかげだ。オレ、本番も頑張るからな!」
「本来の目的を忘れないで。アンタたちの任務は、妖精に奪われた魔法石を奪還すること。魔法石がなければ学園に平穏は訪れない…。いいこと?ランウェイの上は、戦場よ。最高のパフォーマンスで、視線とティアラを奪い取ってきなさい!」
「はい!」
こうして、ヴィルに送り出された一行は、フェアリーガラの会場である、植物園前に来ていた。
「フェアリーガラの会場である植物園は、この中だ。…ここから先、会うヤツはみんな妖精だ。俺たちが人間であることを知られてはいけない。十分に気を付けてくれ。特に……ん?おい、カリムはどこだ!?」
「えっ?…そう言えばさっきからいないッス!」
「あの野郎、さっそくふらふらと…」
「おーい、みんなー!」
「カリム!!勝手にフラフラするな。まったく…緊張感がなさすぎる」
「大変なんだ。ちょっとこっちに来て、手をかしてくれ!」
「はあ?なにか珍しいものでもあったのか?でも今は遊んでる場合じゃ…」
「いいから、早く早く!」
カリムの少し焦った声に、一同は不信に思い仕方なくカリムの言う所に向かった。
「……で、一体なんなんだ?」
「こいつ!見てくれよ」
ものづくりの妖精《チリン…チリン…》
カリムの言うそこには、小さな妖精がぐったりと横たわっていた。
キラキラの羽に、葉っぱをお洋服に仕立て、キノコのような帽子を被っている小さな妖精さんが。
「ホワッ!!手のひらサイズのちっせー人間が道の脇にうずくまってるんだゾ!」
「透明な羽がはえてる…もしかして、これが妖精?」
ものづくりの妖精《チリン…チリン…》
『綺麗…』
「会場に行く途中で見つけたんだけど、なんか具合が悪そうなんだよ。でも言葉がわかんねぇからどうしてやればいいかわからなくて…」
「うわぁ、カリムくんって本当に絵に描いたようないいヤツッスね」
「チッ…余計な時間とらせやがって」
分かりやすく苦い顔をしたラギーとレオナを他所に、カリムは善意MAXでジャミルにお願いする。
「オレが具合悪い時、ジャミルはいつもバッチリ効く薬を出してくれるだろ?だから、この妖精のどこが調子悪いかわかるんじゃないかと思ってさ…」
「流石に妖精の生態には詳しくないから自信がないが…苦しそうに腹を押さえてる…もしかして、腹痛か?」
ものづくりの妖精《チリリリン!》
「腹痛なら…ええっと確か、あったあった!万が一の為に、オレがいつも持ってる腹痛用魔法薬!ジャミルが薬草を使って作ってくれたんだ。飲んでみろよ。きっとすぐ良くなるぜ」
ものづくりの妖精《リーン……》
少し警戒した妖精だったが、意を決した様にごくごくと飲み始めた。
---ごくごくっ
ものづくりの妖精《……!!…チリリン!チリーン!!》
「わっ、どうした?急に立ち上がって…苦かったか!?」
ものづくりの妖精《リーン!リンリン!!》
「うーん、やっぱりなに言ってるか全然わからないや」
すっかり元気になった様に見える妖精さんは、言葉が通じない事にピンと来た様で、急にまた何かを始めた。
ものづくりの妖精《…リン!!!》
---トンカントンカン!!
「きゅ、急にトンカチを叩き始めたッ ス…」
「なんか作り始めたな」
ものづくりの妖精《チリン!!》
出来上がった物は、綺麗な細工が施されたシルバーが艶めく鈴の様なもの。
一同、不思議そうにその様子を眺めた。
「これは、鈴?オレにくれるのか?…って、そんなにぐいぐい押すなよ!なんか怒ってんのか!?」
ものづくりの妖精《違います!!お礼を言いたかったんです!!》
「「えっ!!??」」
急に聞こえた透き通る声に、一同は声の出処に驚いた。
ものづくりの妖精《すぐにお腹の痛みがひきました。お薬をありがとう》
「そ、それはいいけど…」
「なんだ?急に言葉がわかるようになったぞ」
ものづくりの妖精《そんなの、あなたに渡した鈴…翻訳機のおかげに決まってるじゃないですか。大きな種族が小さな妖精と話すには、専用の翻訳機が必要です。たくさんの妖精が集まるフェアリーガラでは、欠かせない道具ですよ。もしかして、お家に忘れてきてしまったんですか?ふふふ、うっかりさんですね》
「ヘーそうなのか。知らなかっ…ふがっ!」
妖精からもたらされた情報に、即座に反応したジャミルは、うっかりを零しそうになったカリムの口を塞いだ。
「そうなんです。大切なものなのに、全員うっかり忘れてきてしまって…困っていたところで」
「いやぁ〜、本当にうっかりしちゃってたッスねぇ」
「それにしても、これだけのものをこんな短時間で作れるなんて…お前、何者だ?」
ものづくりの妖精《大したことじゃありませんよ。だって私は〖ものづくりの妖精〗ですから!》
そう言って当然だと言うようにニッコリ笑った妖精は、みんなの顔をぐるっと見渡した。
ものづくりの妖精《申し遅れました。私の名前はフェアリーメイシー。ものづくりの妖精のリーダーをしています。みなさん、鈴を忘れてしまったのなら、私に用意させてください。助けてくれたお礼に、プレゼントします!》
「本当か?ありがとな〜〜!!」
良いことすると良いことがある
(オレなら声もかけないッス。流石はカリムくん…)
2020.06.30