かくれんぼ
名前変換
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"魔界之先生と一緒に、かくれんぼしてみたいです!"
そんなお願いを言ったものだから私は今、先生とかくれんぼをしている。ドクタケ教室がある敷地内――こぢんまりとした室内から鬱蒼とした木々に囲まれた庭まで。先生が鬼役で私は逃げて隠れる。どこに身を潜めようかと、しかめっ面で辺りをうろうろする。
「27、28、29、30……名前さん、もういいかな〜?」
先生ののんびりした声が遠くから響く。
「あと少し、待ってくださ〜いっ!」
大きな声で当てもなく応えれば、再び先生が数を数え始めた。結局慌てて近くの教室裏の物陰に隠れる。
それは数日前、どくたま達とかくれんぼをする魔界之先生を見かけたことから始まった。それがあまりにも楽しそうだったから。つい、先生にわがままを言ってしまったのだ。
普段ドクタケ城でバイトする私は、ドクタケ教室の存在は知っていた。やり手で周りから畏れられているという首領、八方斎様と真紅に身を包んだ忍者部隊。
彼らを見てみたいと思っても、城の掃除をしたり雑用を任されたりで、忍者教室に向かう必要も、そんな用事もない。……はずなのに、魔界之先生宛の通販の品が間違って城に届くから、その度に下っ端の私が先生の元へ渡しに行くことになり仲良くなってしまったのだ。
忍者の先生だから厳しくて怖い人だと思ったのに。言い訳しながら、照れくさそうに受け取る魔界之先生。想像していた姿と正反対の先生に驚いて、そしてなんだか気になってしまう。もっと話してみたいし、先生のことを知りたいと思う、ふしぎな気持ち。
「先生、もういいですよ〜!」
教室の裏の木陰に隠れていると、トントン、と肩をたたかれハッとする。まさか、もう見つかった!? おそるおそる振り返ると、そこには困った顔の八方斎様がいた。
「おい、君はたしか……」
「名前です、城でアルバイトをしていまして」
「あぁ、だから見たことがあったのだな。どくたまに頼もうと思ったんだが、名前君。君に頼むことにした」
「な、なんでしょう?」
*
かくれんぼの途中で、急きょ街へお使いに行くことになってしまった。殿のため、部下のため、話題の甘味を買ってきて欲しいと言われて、断れないはずがない。八方斎様には、魔界之先生への伝言をお願いしたんだけど大丈夫だろうか……?
用が済んで急いでドクタケ教室に戻ってみると、そこは誰もいないがらんとしたものだった。少ししてバタバタと足音が聞こえ辺りを窺うと、魔界之先生が慌ててやってきた。
「名前さん、どこに行ってたんですか〜! 私とかくれんぼしたいって言ったでしょう?」
額に汗を滲ませてちょっと責めるような口ぶりだ。眉をしかめて……これは機嫌を損ねてしまったに違いない。
胸元で握ったこぶしをぎゅっとして、遠慮がちに先生を見上げる。赤いサングラスの奥にある瞳は見えなくて、先生の気持ちが読み取れない。
「八方斎様に、急にお使いを頼まれてしまったんです」
「そうだったのですか〜! 心配したんですよ、敷地内にあなたの気配もないし、仕掛けワナに引っかかったんじゃないかと!」
「すみません、うまくお伝え出来ていなくて……」
いつもより少し早口で声が大きい魔界之先生の様子から、本当に心配してくれたのが分かる。申し訳ないのに、もしワナにかかって助け出してもらえたら……?なんて変な想像が頭をよぎり、ほほが熱くなる。
「あっ、そうだ、かくれんぼ! 今回はできなかったけど、きっと先生なら私のことなんてすぐ見つけちゃいますよね。だって一流の忍者ですもの」
「先生ですからね。そりゃそうなのだが、」
眉を下げて嬉しさを誤魔化す先生にクスッと笑みをもらす。
「あの、魔界之先生。こんど一緒に街へお買い物なんてどうですか? なんだかデートみたいですけどっ」
「……っ、名前さん!?」
「えっ、わたし、変なことを……!」
少し気が緩んだからか、それとも先生が心配してくれたのが嬉しかったからか。突然とんでもないことを言ってしまった、と後になって気づく。
前から先生に淡い想いを抱いていたのは確かだけど……。迷惑だったらどうしよう。途端に恥ずかしくなって「冗談です」と言おうとしたのに。先生の顔がほんの少し赤くなって、その姿に言葉を飲み込む。
「まったく。あなたはずるいのだ」
ため息まじりに笑って、ぷくっとしたほほを掻く先生。それって、期待していいってことなのかな……? なんと言っていいか迷っていると、そっと両手を包まれた。先生の、ふんわりした手のひらが心地よい。
「通販もいいですが、あなたとお店で買い物するの、楽しみです」
「先生……! わ、わたしも楽しみです」
嬉しすぎて、きっと私の顔も赤くなってるはずだ。そのサングラスが、この気持ちを隠してくれたら良いのに、なんて思うのだった。
そんなお願いを言ったものだから私は今、先生とかくれんぼをしている。ドクタケ教室がある敷地内――こぢんまりとした室内から鬱蒼とした木々に囲まれた庭まで。先生が鬼役で私は逃げて隠れる。どこに身を潜めようかと、しかめっ面で辺りをうろうろする。
「27、28、29、30……名前さん、もういいかな〜?」
先生ののんびりした声が遠くから響く。
「あと少し、待ってくださ〜いっ!」
大きな声で当てもなく応えれば、再び先生が数を数え始めた。結局慌てて近くの教室裏の物陰に隠れる。
それは数日前、どくたま達とかくれんぼをする魔界之先生を見かけたことから始まった。それがあまりにも楽しそうだったから。つい、先生にわがままを言ってしまったのだ。
普段ドクタケ城でバイトする私は、ドクタケ教室の存在は知っていた。やり手で周りから畏れられているという首領、八方斎様と真紅に身を包んだ忍者部隊。
彼らを見てみたいと思っても、城の掃除をしたり雑用を任されたりで、忍者教室に向かう必要も、そんな用事もない。……はずなのに、魔界之先生宛の通販の品が間違って城に届くから、その度に下っ端の私が先生の元へ渡しに行くことになり仲良くなってしまったのだ。
忍者の先生だから厳しくて怖い人だと思ったのに。言い訳しながら、照れくさそうに受け取る魔界之先生。想像していた姿と正反対の先生に驚いて、そしてなんだか気になってしまう。もっと話してみたいし、先生のことを知りたいと思う、ふしぎな気持ち。
「先生、もういいですよ〜!」
教室の裏の木陰に隠れていると、トントン、と肩をたたかれハッとする。まさか、もう見つかった!? おそるおそる振り返ると、そこには困った顔の八方斎様がいた。
「おい、君はたしか……」
「名前です、城でアルバイトをしていまして」
「あぁ、だから見たことがあったのだな。どくたまに頼もうと思ったんだが、名前君。君に頼むことにした」
「な、なんでしょう?」
*
かくれんぼの途中で、急きょ街へお使いに行くことになってしまった。殿のため、部下のため、話題の甘味を買ってきて欲しいと言われて、断れないはずがない。八方斎様には、魔界之先生への伝言をお願いしたんだけど大丈夫だろうか……?
用が済んで急いでドクタケ教室に戻ってみると、そこは誰もいないがらんとしたものだった。少ししてバタバタと足音が聞こえ辺りを窺うと、魔界之先生が慌ててやってきた。
「名前さん、どこに行ってたんですか〜! 私とかくれんぼしたいって言ったでしょう?」
額に汗を滲ませてちょっと責めるような口ぶりだ。眉をしかめて……これは機嫌を損ねてしまったに違いない。
胸元で握ったこぶしをぎゅっとして、遠慮がちに先生を見上げる。赤いサングラスの奥にある瞳は見えなくて、先生の気持ちが読み取れない。
「八方斎様に、急にお使いを頼まれてしまったんです」
「そうだったのですか〜! 心配したんですよ、敷地内にあなたの気配もないし、仕掛けワナに引っかかったんじゃないかと!」
「すみません、うまくお伝え出来ていなくて……」
いつもより少し早口で声が大きい魔界之先生の様子から、本当に心配してくれたのが分かる。申し訳ないのに、もしワナにかかって助け出してもらえたら……?なんて変な想像が頭をよぎり、ほほが熱くなる。
「あっ、そうだ、かくれんぼ! 今回はできなかったけど、きっと先生なら私のことなんてすぐ見つけちゃいますよね。だって一流の忍者ですもの」
「先生ですからね。そりゃそうなのだが、」
眉を下げて嬉しさを誤魔化す先生にクスッと笑みをもらす。
「あの、魔界之先生。こんど一緒に街へお買い物なんてどうですか? なんだかデートみたいですけどっ」
「……っ、名前さん!?」
「えっ、わたし、変なことを……!」
少し気が緩んだからか、それとも先生が心配してくれたのが嬉しかったからか。突然とんでもないことを言ってしまった、と後になって気づく。
前から先生に淡い想いを抱いていたのは確かだけど……。迷惑だったらどうしよう。途端に恥ずかしくなって「冗談です」と言おうとしたのに。先生の顔がほんの少し赤くなって、その姿に言葉を飲み込む。
「まったく。あなたはずるいのだ」
ため息まじりに笑って、ぷくっとしたほほを掻く先生。それって、期待していいってことなのかな……? なんと言っていいか迷っていると、そっと両手を包まれた。先生の、ふんわりした手のひらが心地よい。
「通販もいいですが、あなたとお店で買い物するの、楽しみです」
「先生……! わ、わたしも楽しみです」
嬉しすぎて、きっと私の顔も赤くなってるはずだ。そのサングラスが、この気持ちを隠してくれたら良いのに、なんて思うのだった。
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