綾部喜八郎
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〜落とし穴に落ちたら〜
雲ひとつない抜けるような青空に目を奪われ、中庭をそろそろと進む。
……ふぅ。
深く息を吸い込み、まだ夏の暑さが残る空気を感じていると、身体がふわりとする。
――どすんっ
葉っぱや藁が敷かれてはいるものの、尻もちをついたようで少し痛む。まわりは土で覆われて、ほの暗い。
……また、穴に落ちてしまった。
「おやまあ。またですか?」
「あ、綾部喜八郎くん!」
灰色のうねった髪をなびかせ、まん丸の目で穴の上からこちらを覗いている。この穴を掘った張本人だ。助けに来てくれたのかな……? 罠にはめたのに助ける、というのもおかしいのだけど。
喜八郎くんはスッと飛び降りると、胡座をかきじっと座り込んでいる。なぜか二人で向かい合い、穴の中に佇んでいた。
満足そうな顔でまじまじ見つめられる。
……何を考えているのか検討もつかない。
穴が開くほどの視線に、だんだん顔が熱くなってくる。狭い空間で、どうしたら良いのだろう……!? 恥ずかしさに両ほほをぱっと抑えた。
「あ、あのっ。助けてくれないの……?」
「助ける? ……穴の中って、こんなに落ち着くのに」
「そう言われてみれば、そうだけど……」
「それに、この土の香り。なんとも心が癒されるでしょう?」
気持ちよさそうに深呼吸する喜八郎くん。そんな彼を前に苦笑してしまう。面白いことを言うなあ、なんて思いながら着物についた土をはらっていく。所々、着物が茶色になってしまった。
「好きな人が良い香りにまみれたら……堪らないじゃないですか」
「えっと、それは……!」
「ねぇ、もっと汚れちゃえばいいのに」
いたずらに細められた目に射抜かれ、どうすることもできない。ただただ、ぺたんと座り込むのだった。
雲ひとつない抜けるような青空に目を奪われ、中庭をそろそろと進む。
……ふぅ。
深く息を吸い込み、まだ夏の暑さが残る空気を感じていると、身体がふわりとする。
――どすんっ
葉っぱや藁が敷かれてはいるものの、尻もちをついたようで少し痛む。まわりは土で覆われて、ほの暗い。
……また、穴に落ちてしまった。
「おやまあ。またですか?」
「あ、綾部喜八郎くん!」
灰色のうねった髪をなびかせ、まん丸の目で穴の上からこちらを覗いている。この穴を掘った張本人だ。助けに来てくれたのかな……? 罠にはめたのに助ける、というのもおかしいのだけど。
喜八郎くんはスッと飛び降りると、胡座をかきじっと座り込んでいる。なぜか二人で向かい合い、穴の中に佇んでいた。
満足そうな顔でまじまじ見つめられる。
……何を考えているのか検討もつかない。
穴が開くほどの視線に、だんだん顔が熱くなってくる。狭い空間で、どうしたら良いのだろう……!? 恥ずかしさに両ほほをぱっと抑えた。
「あ、あのっ。助けてくれないの……?」
「助ける? ……穴の中って、こんなに落ち着くのに」
「そう言われてみれば、そうだけど……」
「それに、この土の香り。なんとも心が癒されるでしょう?」
気持ちよさそうに深呼吸する喜八郎くん。そんな彼を前に苦笑してしまう。面白いことを言うなあ、なんて思いながら着物についた土をはらっていく。所々、着物が茶色になってしまった。
「好きな人が良い香りにまみれたら……堪らないじゃないですか」
「えっと、それは……!」
「ねぇ、もっと汚れちゃえばいいのに」
いたずらに細められた目に射抜かれ、どうすることもできない。ただただ、ぺたんと座り込むのだった。
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