七松小平太
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〜落とし穴に落ちたら〜
透き通るような青空が広がり、ふぅっと深呼吸しながら食堂へ向かっていたのが少し前のこと。
今は暗くてじめっとした穴の中に閉じ込められ、膝を抱えながらぼーっと助けを待っている。
だんだんと身体の芯から冷えてきて、鼠色の事務服の上から腕をさする。そうするだけでも、わずかに暖まるような気がした。
いつまでそうしていただろう。
人けの無い場所だからか、一向に忍たま達が通る気配もない。寒さにうつらうつらして、まぶたが重くなってきた頃。
ゴゴゴゴーと地響きのような轟音が耳に届く。だんだん近づいてくるその音に、逃げ場もなく身体を縮こませた。
「いけいけどんどーん! ……って、あれ!?」
「きゃっ……!」
土壁が崩れ落ちると共に、茶色にまみれた小平太くんが目の前に現れた。穴の中で出会うという想定外のことに身体が固まる。小平太くんも私の存在に気がつくと、丸い目をさらに大きくして驚いた。
「どうしたんだー?! こんなところで」
「落とし穴に落ちちゃって……えへへ」
「ああ! ここは穴が掘ってあったのか!」
「小平太くんは、塹壕掘り?」
「そうだ! 体力を持て余してしまってな」
「あの、助けて欲し……」
「私と一緒にこい!」
こちらの話を聞いてくれているのかどうか……。いけいけどんどーん!と気合を入れてから、お構いなしにグッと手を掴まれ、引きずられて行く。
途中、土が顔にかかると手で払ってを繰り返す。薄目を開けながら、暗くて変わらない景色を眺めていた。
前を進む小平太くんは、苦無で土を掘りながらとても楽しそうだ。表情は見えないけれど、発せられる声色や込められた手の力から、そんな様子が伝わってくる。
「よーし!ついたぞ!」
「つ、着いたって、どこに……?」
よく分からないまま引っ張られて、突然立ち止まる。小平太くんは手を離すと、今度は一人で上へ上へと掘り進めていく。
ザク、と音が響くとぽっかり穴が開いて眩しい光が差し込む。その明るさに思わず目を細めた。
ストンと下に降りた小平太くんと向かい合う。その近さに、意識してしまうからか頬がじわじわと熱を帯びていく。
「この上は食堂だ! 行こうとしていたのだろ?」
「よく分かったね!?」
「だって、そろそろお手伝いに行く時間じゃないか」
「そうだけど……」
「お前のこと、つい気になってしまってな! 私にはなんでもお見通しだ」
汗と泥にまみれながら、ニカッと笑っている。私よりも背が高くて、手のひらだってゴツゴツして大きい。先ほどの豪快さとは打って変わって、ぽんと優しく頭を撫でられた。
薄暗い、狭い空間が柔らかい光に包まれて。そんなことを言われたら、嬉しいのに恥ずかしくなってくる。照れを隠すように両手でほほを挟むと、小さくはにかむのだった。
透き通るような青空が広がり、ふぅっと深呼吸しながら食堂へ向かっていたのが少し前のこと。
今は暗くてじめっとした穴の中に閉じ込められ、膝を抱えながらぼーっと助けを待っている。
だんだんと身体の芯から冷えてきて、鼠色の事務服の上から腕をさする。そうするだけでも、わずかに暖まるような気がした。
いつまでそうしていただろう。
人けの無い場所だからか、一向に忍たま達が通る気配もない。寒さにうつらうつらして、まぶたが重くなってきた頃。
ゴゴゴゴーと地響きのような轟音が耳に届く。だんだん近づいてくるその音に、逃げ場もなく身体を縮こませた。
「いけいけどんどーん! ……って、あれ!?」
「きゃっ……!」
土壁が崩れ落ちると共に、茶色にまみれた小平太くんが目の前に現れた。穴の中で出会うという想定外のことに身体が固まる。小平太くんも私の存在に気がつくと、丸い目をさらに大きくして驚いた。
「どうしたんだー?! こんなところで」
「落とし穴に落ちちゃって……えへへ」
「ああ! ここは穴が掘ってあったのか!」
「小平太くんは、塹壕掘り?」
「そうだ! 体力を持て余してしまってな」
「あの、助けて欲し……」
「私と一緒にこい!」
こちらの話を聞いてくれているのかどうか……。いけいけどんどーん!と気合を入れてから、お構いなしにグッと手を掴まれ、引きずられて行く。
途中、土が顔にかかると手で払ってを繰り返す。薄目を開けながら、暗くて変わらない景色を眺めていた。
前を進む小平太くんは、苦無で土を掘りながらとても楽しそうだ。表情は見えないけれど、発せられる声色や込められた手の力から、そんな様子が伝わってくる。
「よーし!ついたぞ!」
「つ、着いたって、どこに……?」
よく分からないまま引っ張られて、突然立ち止まる。小平太くんは手を離すと、今度は一人で上へ上へと掘り進めていく。
ザク、と音が響くとぽっかり穴が開いて眩しい光が差し込む。その明るさに思わず目を細めた。
ストンと下に降りた小平太くんと向かい合う。その近さに、意識してしまうからか頬がじわじわと熱を帯びていく。
「この上は食堂だ! 行こうとしていたのだろ?」
「よく分かったね!?」
「だって、そろそろお手伝いに行く時間じゃないか」
「そうだけど……」
「お前のこと、つい気になってしまってな! 私にはなんでもお見通しだ」
汗と泥にまみれながら、ニカッと笑っている。私よりも背が高くて、手のひらだってゴツゴツして大きい。先ほどの豪快さとは打って変わって、ぽんと優しく頭を撫でられた。
薄暗い、狭い空間が柔らかい光に包まれて。そんなことを言われたら、嬉しいのに恥ずかしくなってくる。照れを隠すように両手でほほを挟むと、小さくはにかむのだった。
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