大木先生
名前変換
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ピカッ
――ザーッ―… ゴロゴロ……
強い風が、家の戸や壁をガタガタと揺らしていく。激しい閃光が隙間から入り込むたび、身をすくめてビクビクしていた。
「きゃっ。……ここ最近、ずっと外に出られませんね」
雨が入らないように戸も閉め切って、薄暗い室内は息が詰まる。
……これからどうなるのか不安で。
嵐が止んで、晴れる日が来るのか。
……いや、もう来ないんじゃないか。見えない恐怖におそわれる。そんな事ないと頭では分かっているのに、どんより心が暗くなっていく。
「そうだなあ。畑も心配だ」
「ケロちゃんラビちゃんも、ずっとお家だと可哀想で」
「こんな事なかなかないからなあ」
「……はい。気が滅入っちゃいます」
雅之助さんは肘をついて床にうつ伏せにながら本を読んでいる。言葉とは反対に、なんだかあまり落ち込んでない様子が感じられた。
「名前。お前もこっちに来い」
「はぁい」
雅之助さんの隣にぴったりとくっ付いて、同じようにころんと寝転ぶ。本を覗き込むと、もさもさした茶色の毛先が顔にかかってむずむずする。払っても払ってもキリがない。
くすぐったさに身を捩る。ふいに触れた肩や腕がぽかぽか温かくて気持ち良い。もっとその温度を感じたくて、甘えるようにもたれ掛かかった。
「こんなにいちゃいちゃできるなんて、これはこれで良いもんだな!」
「……雅之助さんったら、そんなこと言って」
わははと大きく笑うから、余計に目尻が下がっている。そんな子どもみたいなところにクスッと吹き出した。
非難するような口ぶりで返したけれど、本当は嬉しくてたまらない。あふれる想いを誤魔化すように、肩口へ顔をうずめる。
たくましい腕が身体に回され、ぎゅっと抱き寄せられた。
お互いに顔を見合わせてほほ笑む。
雅之助さんの手から本が離れ、パタンと音を立てて閉じていく。
そのうち、視線が絡まって吐息が重なりそうだ。真剣な眼差しに、じわじわ顔が熱くなっていく。
まぶたを閉じると、優しく唇を塞がれる。
こんな時だからこそ、心の底からあたたかくなる。離れたと思ったらまた近づいて、今度はもう少し深くついばまれた。
「わたし、幸せです」
「わしもだ」
至近距離で見つめ合うと、気恥ずかしくなって目線を逸らしてしまった。
……床に落ちた本が目に入る。
ずっと、何を読んでいたんだろう……?
ドキドキした気持ちを振り払うように、本をぱらぱらとめくってみる。
「えっと、少し気が早いんじゃないですか……?!」
「そうか? 備えておくことは大切だぞ」
だって、子育ての本なんて……!
照れるけれど、嬉しい気持ちが隠せない。
「そうですね。落ち込んでる場合じゃないですねっ」
「そうだ。どんな時も、どこんじょー!で乗り切るぞ」
おかしくって、くすくす笑う。
この人と一緒なら、きっと幸せだ。
止まない雨はないから、大丈夫。
晴れたら、何をしよう。
雅之助さんとしたいことが沢山ある。
まずは、荒れてしまった畑を整えて、茅葺き屋根も直さないと。
それから、ふたりで……
楽しいことを考えたら、わくわくして気分が明るくなっていく。
この気持ちを伝えたくて。
もう一度、ぴたりと身体を寄せてみるのだった。
――ザーッ―… ゴロゴロ……
強い風が、家の戸や壁をガタガタと揺らしていく。激しい閃光が隙間から入り込むたび、身をすくめてビクビクしていた。
「きゃっ。……ここ最近、ずっと外に出られませんね」
雨が入らないように戸も閉め切って、薄暗い室内は息が詰まる。
……これからどうなるのか不安で。
嵐が止んで、晴れる日が来るのか。
……いや、もう来ないんじゃないか。見えない恐怖におそわれる。そんな事ないと頭では分かっているのに、どんより心が暗くなっていく。
「そうだなあ。畑も心配だ」
「ケロちゃんラビちゃんも、ずっとお家だと可哀想で」
「こんな事なかなかないからなあ」
「……はい。気が滅入っちゃいます」
雅之助さんは肘をついて床にうつ伏せにながら本を読んでいる。言葉とは反対に、なんだかあまり落ち込んでない様子が感じられた。
「名前。お前もこっちに来い」
「はぁい」
雅之助さんの隣にぴったりとくっ付いて、同じようにころんと寝転ぶ。本を覗き込むと、もさもさした茶色の毛先が顔にかかってむずむずする。払っても払ってもキリがない。
くすぐったさに身を捩る。ふいに触れた肩や腕がぽかぽか温かくて気持ち良い。もっとその温度を感じたくて、甘えるようにもたれ掛かかった。
「こんなにいちゃいちゃできるなんて、これはこれで良いもんだな!」
「……雅之助さんったら、そんなこと言って」
わははと大きく笑うから、余計に目尻が下がっている。そんな子どもみたいなところにクスッと吹き出した。
非難するような口ぶりで返したけれど、本当は嬉しくてたまらない。あふれる想いを誤魔化すように、肩口へ顔をうずめる。
たくましい腕が身体に回され、ぎゅっと抱き寄せられた。
お互いに顔を見合わせてほほ笑む。
雅之助さんの手から本が離れ、パタンと音を立てて閉じていく。
そのうち、視線が絡まって吐息が重なりそうだ。真剣な眼差しに、じわじわ顔が熱くなっていく。
まぶたを閉じると、優しく唇を塞がれる。
こんな時だからこそ、心の底からあたたかくなる。離れたと思ったらまた近づいて、今度はもう少し深くついばまれた。
「わたし、幸せです」
「わしもだ」
至近距離で見つめ合うと、気恥ずかしくなって目線を逸らしてしまった。
……床に落ちた本が目に入る。
ずっと、何を読んでいたんだろう……?
ドキドキした気持ちを振り払うように、本をぱらぱらとめくってみる。
「えっと、少し気が早いんじゃないですか……?!」
「そうか? 備えておくことは大切だぞ」
だって、子育ての本なんて……!
照れるけれど、嬉しい気持ちが隠せない。
「そうですね。落ち込んでる場合じゃないですねっ」
「そうだ。どんな時も、どこんじょー!で乗り切るぞ」
おかしくって、くすくす笑う。
この人と一緒なら、きっと幸せだ。
止まない雨はないから、大丈夫。
晴れたら、何をしよう。
雅之助さんとしたいことが沢山ある。
まずは、荒れてしまった畑を整えて、茅葺き屋根も直さないと。
それから、ふたりで……
楽しいことを考えたら、わくわくして気分が明るくなっていく。
この気持ちを伝えたくて。
もう一度、ぴたりと身体を寄せてみるのだった。
1/1ページ