時のターコイズ
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「此処に1~6部までのそれぞれ第一巻が置いてある」
「はい」
「この中から一つ選んでおくんなまし」
私のマスターは、いわゆる「変人」の部類に入る人だ。いや、人かどうかはわからないけども。
マウスカーソルの矢印が立体的になったような姿かたちで、大きさはサッカーボールくらい。どこから声が出てるのか、どうやって生きてるのかもわからないし、名前だって「マスターとよんでおくれよン!」と言われたからそう呼んでいるだけ。
素性が知れない人だけど、唯一漫画やアニメなんかの趣味はピッタシハマるんだ。
だからこそ、今の私は困惑している。
「なぜ6部までなんですか?」
「私がそこまでしか持ってないから。というか六部はまだ読んでない」
「私だって四部の途中までしか読んでないです」
目の前に置かれた六冊のコミック本。目をつむるでも、無造作にでも、好きにでもいいから一つ選べ、と私は推された。なぜなのか、質問してもいいからいいからとなだめられてしまう。
仕方なしと私は一冊だけ選んだ。
「へー、やっぱそうだよね」
「なんか一番に頭にシーンが浮かぶんですよね。はまったきっかけっていうのもあるんでしょうけど……」
「OK,好みは把握した。楽しみにしといてよね」
「いったい何が始まるっていうの」
「第三次大戦だ」
コミックをどうやってか抱えたマスターさんは、どうやってかけらけら笑いながら部屋を出て行った。日暮れのことだった。
夕食をとり、風呂に入り、すこし絵を描いたら眠くなったので、そのまま眠った。
熱気でじんわりと苦しい中、やけにスムーズに眠気が襲ってきた気がした。
あおいちゃんのかみのけってきれいね。でもへんだよ。みんなとちがうね。
「うん……かくせいいでん、っていうんだって」
「へー。えきまえにね、うちがわだけ、あおいちゃんみたいなかみの人がいたの。
そのひともそうかなぁ?」
「わかんないなあ」
「そっかあ」
ヘンだよってね。みんな言うの。
おかあさんはね、とってもほめてくれた。宝石みたいできれいよって。それがすっごくうれしくて、夏場にあつくても、うっとおしくても、きれいに保って伸ばしてた。
あたまをなでてくれるのがうれしかった。梳いてくれるのがうれしかった。
今じゃあ、フトモモまで届くくらいなの。
父親はそうじゃなかった。気味悪がって、私を産んだお母さんもつっぱねた。
離婚した。お母さんは私を責めなかったけど、心のどこかで私を恨んでいたでしょうね。だってお母さんはあの男が大好きだったもの。いつだって恋する乙女の顔だった。
最終的には、盲目的にあの男を欲してしまって、私は都心から遠い場所で暮らすことになったの。
文句はないよ。だって、そうなるべきだったって確信が、「納得」が心の内側にあるもの。
だから謝らないで母さん。わたし、あなたの子どもで幸せよ。
胸の内側からはりさけそうなくらい熱くて苦しかったの。しんじゃうんじゃあないかって先生にすあったけど、
「あいつがしでかすだけだから問題ない。眠ってなさい」
って冷えた手で頭を撫でてくれるだけだった。いつかのかあさんの手のひらみたいにやわからかくて、安心できそのまますぐに眠ったの。ずっと兄さんが手を握っててくれたから、さみしくもならなかったの。
それでもあるとき、本当に心細くて、つらくて、だれにも気づかれたくなくて、隠れて泣いてたの。そしたらね、そのこがまほうをかけてくれたの。
道路の真ん中で泣いててもだれも私を気にしなくなって、思う存分私は泣きわめけたの。私にとってもよく似ていて、ずっと頭をなでてくれた。
先生が迎えに来てくれて、兄さんがだっこしてくれて一緒に帰るまで、そのこが一緒にいてくれたの。そのこはいつまでも私の隣にいてくれた。
家族のような存在。
私は、その子のことが、本当に、
*