真昼の月は燃え上がる


「どうして怒ってるの?」

 台車を引きながら、ふいにあんたは、私にそう尋ねた。本当、なんて言葉ふだん信じないけど、本当に何気なくって、嫌味のない声音だった。声をかけられるだけで、何となくぞっとする私だけど、その声に引かれて、私はあんたの顔を見た。人の目を見る事なんて、ずいぶんしていなかった。日差しを受けるあんたの濃い茶色の瞳はとても澄んできらきらしていて、黒い瞳孔まではっきりと見えた。

「城田さんはいつも怒ってるね。どうして?」

 そう言って、笑った。やわらかくて、おだやかで 、日差しの強さに何もかもが反していた。何でだかわからないけど、私は思わず口を開いたんだ――

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