幽霊イコールどうしようもないもの
「【Trois】」
【ひとりめは、わたしのおかあさんをころしたやつ】
また
「【Sept】」
【ふたりめは、わたしのしんゆうをだましたやつ】
あんたはなんだ
「【Cinq】」
【さんにんめは、だましたやつにかたんしたやつら】
なんなんだ
「【Six】」
【よにんめは、いもうとをひどくいじめたやつ】
…いやだ。まけるものか
「【Quatre】」
【ぜんいん】
笛の音が
【Comprends mon coeur】
うるさい
「【Trois】」
おとがなりやまない
「【Sept】」
【Toi aussi pareil que moi】
やめ
「えおえお?」
「………………ぁ」
混沌とした意識が引き戻される。
嗚呼、いつもうるさいようで、こういうときだけいつも救われる。
ぐちゃぐちゃした心が、ちょっと綺麗になった。
ぼやけた視界で、必死に友人の姿を探す。もしかしたら、少し涙が滲んでいるかもしれない。
意識がはっきりとしてきた。大丈夫だ。まだ、耐えきれる。
空は真っ黒だが綻び始めていて、今は多分お昼前なのだろう。
「お前、今日きっくん家に行くってLINEきただろ!既読つかないから心配してるぅ〜ってきっくんがもうさっきらかうるさくてうるさくて!」
「ふふ…“さっきらか”」
「蒸し返すんじゃねぇ!」
おらおらと顎を突き出して迫ってくるFBに呆れながらも、とても安心した。
傍から見たら確実ににやけているであろう自分に引かないのは、彼の優しさか。
しかしおれはいつの間にか外に出ていたらしい。まずいな、そこまで重症だったとは。
そろそろ処置とかしなければならないんだろうか。いや、でも多分おれに憑いてるコレは、というか絶対外国人さんだ。
しかも英語じゃない。意思疎通ができない。英語だったとしてもできないが。
今更あいつらに相談するのも気が向かないので放っておいたが……。
ネガティブ思考は辞めよう。
「おら、行くんだろ?おれスマホしか持ってないけど」
「電車乗るけど大丈夫っしょ!最近だとほら、スマホで電車乗れるっていうのもあるし」
アプリを入れてすぐ使えるものは大変便利だ。こういうのを考えた人ってすごいと思う。どうすごいかは知らない。
快速列車の時刻表を見て、帰る時間帯の表を無意識に覚えたのは、誰にも言えない秘密だ。
電車に乗り込み、何駅か先のきっくん家への最寄り駅を目指す。
揺れる電車と隙間から覗いていた日の光に心地良さを覚え、船を漕ぎ出した後から意識が夢の世界に飛びだったのは理解した。
ふと、胸のあたりに違和感を感じて、それだけだった。