Sin - 罪 -
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サーキースさんは何処か話しやすく、他愛のない話がたくさんできた。
それはきっと頭がいいから、私に合わせてくれてるんだと感じる。実際のところはわからないけど。
それでも私も人と話せるんだって錯覚できるから楽しかった。
「ッッな、なんだよベラミー、急に殺気だって」
「…帰る」
「カエル?ッ?!」
「バカなこと言ってねぇで帰るぞ!」
ベラミーさんから感じた違和感をすぐにサーキースさんが感じ取って場を和まそうとしたのに。そんな気遣いにも見向きもせず先を歩いていくベラミーさんの後ろをサーキースさんはさりげなく私に謝りながら追いかけた。
私のことを見向きもしないベラミーさんに、寂しくなって普段なら絶対に言えないような勇気を気づけば叫んでいた。
全く見向きもされなかったけど、気づいてもらえているような気はしたから、それだけで満足だった。
店に戻り、普段通り仕事を切り盛りし始め賑やかになり始めた頃、突然聞こえた心臓を逆撫でするような声。
思わず持っていたグラスが宙に舞い、床に叩きつけられそうになる。
「おっと。……この声はサーキース君だね。気になるかい?」
「はい」
「なら気にせず見てくるといい。気づいているんだろう?この妙な気配を」
「はい!すみません、お店をお任せします!」
私が見捨てたグラスを、マスターはいとも簡単にその運命から逃し、綺麗に並べられたグラスの一つとしてその輪に加えた。
店の品を見捨て、怒られると思ったのに。その表情は想像よりも険しく、問いかけられたのはベラミーさんのことだけ。
二、三言会話で事態を把握したマスターは、言葉にこそしなかったが確かに助けてこい。とそう言ってくれた。
表通りへ出ると、今にもベラミーさんに剣を降り下ろしそうなサーキースさんに、全てを諦めたように流れに身を任せるベラミーさん。その傍らには不思議な手をしながら見守る王下七武海のドフラミンゴさんの奇妙な3人の姿があった。
そんな奇妙な関係を気にも留めず私はただ、ベラミーさんを助けたくてサーキースさんに向かって叫んだ。
その場だけ時間が止まってしまったのかと問いたくなるほど全てがスローモーションに動く。
音など当然聞こえるわけもなく、わかるのはベラミーさんが何かを叫び、ドフラミンゴさんが至極不機嫌ということだけ。
終わった。
ドフラミンゴさんの表情で死を確かに感じた。
でも、すぐに愉快そうな笑いに変わり、何かが少しドフラミンゴさんの嗜好に刺さったんだって安心した私は馬鹿だった。
だって、サーキースさんの矛先が私に変わったから。
逃げなきゃ。
距離を取らないと、殺される!
頭ではわかってるのにさっきの一瞬で勇気を捨て去ってしまった私は、その場から逃げることさえままならないままならずその場に留まる。
もう、すぐそこまで来ているサーキースさんに思うは"無"。
死にたくない。とか生きたい。とそんな生への叫びは跡形もなく消えた。
「……これはこれは」
一瞬、ドフラミンゴさんの何処か馬鹿にしたような、楽しそうな声が聞こえた次の瞬間の船への勧誘。
肩で息をするしか安心できないほどの緊張感。
何せ私には戦闘員になれるほどの力もなければ度胸もない。となれば船に乗った先で待ち受けるのは欲の捌け口。
ちらりとベラミーさんを見る。
ベラミーさんもその末路が分かっているのに、私に船に乗るよう全身を使って訴えている。
確かに、船に乗れば命の保証はできる。ではベラミーさんの命の保証は?
回らない頭で交渉の言葉を考える。
だって、私は船に乗るだけで保証がされるのにそれはとてもおかしな話じゃないか。
例えベラミーさんを庇ったからと理由で殺されようと、こんな身を呈して守ってくれたベラミーさんを放っておけるほど私は腐ってない。
「フッフッフッフッ!!勘違いするな。俺はベラミーに最大の絶望を与えようとお前に船に乗るように誘っただけだ!別にお前の意見なんざ最初から気にしちゃいねぇよ」
言い切るか言い切らないか。そんな束の間、私はその場のに似つかわしくないほどのスピードで走りドフラミンゴさんの胸へと飛び込んでいた。
まるで、私から求めたみたいに。
「……お、おい。権兵衛」
ベラミーさんの脱力した声に違うって叫びたかったのに、それは言葉として口から出ていくことなくドフラミンゴさんの唇に吸い込まれた。
「お前はそこで指でもくわえて好きな女が他の男にとられるところでも見てろ」
口づけを交わし、私の首にピリッと痛いこいつは俺の所有物だと言わんばかりの鬱血痕を残し、反動で出た私の声でベラミーさんは絶望と怒りが混ざったとても怖い色を身に纏う。
これで今回のことはチャラだ。そう吐き捨て私を腕に抱きながら港へと踵を返した。
ドフラミンゴさんの肩越しから見る最後の町は普段見ることができない高さから見たためか少し寂しく見え泣きたくもないのに、少し涙が滲んだ。
「……」
「……」
港に着けば何か大きな船があると思っていたのに、そんな船は一隻もなく、普通の船とベラミーさんの船のみ。
不思議に思っているとこれから空を散歩する。と言いながらドフラミンゴさんの身体ごと宙に浮く。
驚きの連続に、真下の海に、もしかしたら移動中すぐに海に消えるかもしれない。
生きるか死ぬかの分岐点だと一人勝手に不安になり、気づけば過呼吸を起こしていた。
「……んぅ?!」
目の前にドフラミンゴさんの端正な顔。
思うことはたくさんあったけど、これは救命処置なんだって気づかされた瞬間が一番恥ずかしかった。
「どうだ、落ち着いたか?」
最後に厭らしく鳴らされたリップ音に不適な笑み。
全身で悪役を演じるドフラミンゴさんのそのサングラスの奥に隠れる瞳の真意は見えないが、声色だけはとても優しく、この人も何故悪人をやっているのか不思議になる。
「……あ、ありがとうございます」
赤くなる顔を誤魔化すように俯きお礼を述べる。
「……気にするな」
移動中のドフラミンゴさんはとても静かで、考えてしまうのはベラミーさんにマスターの事。
家族は元よりいないから、その心配も物思いに更けるほどの時間も要らない。
……傷も確かに心配だけど、知り合いを失う方があの人たちにはとても辛いはず。
「もうすぐ俺の城に着く。フフッ、なに心配入らねぇさ。みんな気の良い奴等だ」
「……?」
海に捨てられることなくドフラミンゴさんの拠点まで来てしまったことに驚きを隠せず、失礼ながら穴が開くんじゃないかってほど見つめてしまった私をドフラミンゴさんも不思議がった。
「……私を捨てないんですか?」
「なぜ捨てる必要がある」
至極可笑しそうに笑うドフラミンゴさんがわからず黙った。
「おかえりなさい、若様」
「まあいいさ」
「……そのお嬢さんは」
「フフフフフッ、俺のだ。気にするな」
初めて見る大きなお風呂の前に露出の激しい女の人たちが私を睨む。
中には今にも叫びそうなほど顔を歪めた人だっていた。
綺麗な人が怒ると怖いとはよく聞くが、実際はそんないことないのかと気づかされる。
「そんなとこじゃ風邪引くだろう?」
何処か優雅に肩を抱き、城の中へと導かんとする姿はまるで王子様。
なるようになれ。
ドフラミンゴさんが今ここに私といるということは、ベラミーさんの命は保障されたと受け取ってもいいはずだから、私はドフラミンゴさんの神経を逆撫でしないように最善を尽くすだけ。
覚悟を決めた私の表情を見て、少しつまらなさそうな顔をしたドフラミンゴさんだったがすぐにそんな顔を隠し笑った。
長い廊下を黙って歩く二人の間に不思議と嫌な空気は感じず、そのまま成り行きに任せて黙ったままついて行く。
「あえて言うがお前の部屋はここだ」
「……」
「返事くらいはしろ」
この廊下を歩くだけでもたくさんの部屋があった。それにきっとまだまだ上にも階があるはず。地下もあって牢獄のような場所が必ずある。
そう、思えるような大きいお城で人質ともとれるような人間がまさかの城主と相部屋なんて、聞いたことも読んだこともない。
この人が分からなさ過ぎて開いた口がふさがらなくなる私の心中を察してか、しつこく返事を求められなかった。
男と相部屋。
そう意識するだけで心臓が馬鹿みたいに高鳴っていく。
「倒れるなよ?」
ここに来てからずっと抱かれている肩に、少し力が籠められ心配してくれていのが分かる。
「ありがとうございます」
素直な、何の変哲もないお礼だったにも関わらず、凄く嬉しそうに笑って芽生える必要のない罪悪感が芽生える。
これは、いったい誰に向けた罪悪感なのか。
今はまだわからなくていい。
「腹、減ったか?」
「い、いえ。お気遣いなく、皆さんのお食事の……あ」
そうだ、私は人質で誰かと一緒にご飯なんて食べられるはずがない。
城主と同じ部屋を与えられ優しくされ、勘違いしてしまった。
顔が嫌でも熱くなって恥ずかしくなる。
「俺は言ったはずだ。皆気のいいやつだと。お前が奴らと一緒に飯を食いたいならあいつらも喜んで受け入れるさ」
どうするんだ?
酷く挑戦的な声に悩む時間など必要ない。
「別に食事を用意してもらう方がお手を煩わせそうです。ご一緒させていただきます」
「……そうか、良い判断だ」
一人、優しくソファー座らせ席を離れるドフラミンゴさんの背中をみるだけで、鼓動が早くなる。
少しでも落ち着けようと備え付けの大きな窓から見える果てなど見えない海を見た。
私の命一つでこの先の何処でベラミーさんが生きている。
囚われた先で酷い扱いを受けることなく優しく扱われる。
それだけで幸せを感じて段々と落ち着いていく心臓。
「……ぁ」
不意な眠気に抵抗するため目を強く擦る。
流石に男と二人きりの部屋で主がいないからと言って寝るわけにはいかない。
そうは思うのに、抗えないほどの睡魔が私を重力の奴隷とした。
それはきっと頭がいいから、私に合わせてくれてるんだと感じる。実際のところはわからないけど。
それでも私も人と話せるんだって錯覚できるから楽しかった。
「ッッな、なんだよベラミー、急に殺気だって」
「…帰る」
「カエル?ッ?!」
「バカなこと言ってねぇで帰るぞ!」
ベラミーさんから感じた違和感をすぐにサーキースさんが感じ取って場を和まそうとしたのに。そんな気遣いにも見向きもせず先を歩いていくベラミーさんの後ろをサーキースさんはさりげなく私に謝りながら追いかけた。
私のことを見向きもしないベラミーさんに、寂しくなって普段なら絶対に言えないような勇気を気づけば叫んでいた。
全く見向きもされなかったけど、気づいてもらえているような気はしたから、それだけで満足だった。
店に戻り、普段通り仕事を切り盛りし始め賑やかになり始めた頃、突然聞こえた心臓を逆撫でするような声。
思わず持っていたグラスが宙に舞い、床に叩きつけられそうになる。
「おっと。……この声はサーキース君だね。気になるかい?」
「はい」
「なら気にせず見てくるといい。気づいているんだろう?この妙な気配を」
「はい!すみません、お店をお任せします!」
私が見捨てたグラスを、マスターはいとも簡単にその運命から逃し、綺麗に並べられたグラスの一つとしてその輪に加えた。
店の品を見捨て、怒られると思ったのに。その表情は想像よりも険しく、問いかけられたのはベラミーさんのことだけ。
二、三言会話で事態を把握したマスターは、言葉にこそしなかったが確かに助けてこい。とそう言ってくれた。
表通りへ出ると、今にもベラミーさんに剣を降り下ろしそうなサーキースさんに、全てを諦めたように流れに身を任せるベラミーさん。その傍らには不思議な手をしながら見守る王下七武海のドフラミンゴさんの奇妙な3人の姿があった。
そんな奇妙な関係を気にも留めず私はただ、ベラミーさんを助けたくてサーキースさんに向かって叫んだ。
その場だけ時間が止まってしまったのかと問いたくなるほど全てがスローモーションに動く。
音など当然聞こえるわけもなく、わかるのはベラミーさんが何かを叫び、ドフラミンゴさんが至極不機嫌ということだけ。
終わった。
ドフラミンゴさんの表情で死を確かに感じた。
でも、すぐに愉快そうな笑いに変わり、何かが少しドフラミンゴさんの嗜好に刺さったんだって安心した私は馬鹿だった。
だって、サーキースさんの矛先が私に変わったから。
逃げなきゃ。
距離を取らないと、殺される!
頭ではわかってるのにさっきの一瞬で勇気を捨て去ってしまった私は、その場から逃げることさえままならないままならずその場に留まる。
もう、すぐそこまで来ているサーキースさんに思うは"無"。
死にたくない。とか生きたい。とそんな生への叫びは跡形もなく消えた。
「……これはこれは」
一瞬、ドフラミンゴさんの何処か馬鹿にしたような、楽しそうな声が聞こえた次の瞬間の船への勧誘。
肩で息をするしか安心できないほどの緊張感。
何せ私には戦闘員になれるほどの力もなければ度胸もない。となれば船に乗った先で待ち受けるのは欲の捌け口。
ちらりとベラミーさんを見る。
ベラミーさんもその末路が分かっているのに、私に船に乗るよう全身を使って訴えている。
確かに、船に乗れば命の保証はできる。ではベラミーさんの命の保証は?
回らない頭で交渉の言葉を考える。
だって、私は船に乗るだけで保証がされるのにそれはとてもおかしな話じゃないか。
例えベラミーさんを庇ったからと理由で殺されようと、こんな身を呈して守ってくれたベラミーさんを放っておけるほど私は腐ってない。
「フッフッフッフッ!!勘違いするな。俺はベラミーに最大の絶望を与えようとお前に船に乗るように誘っただけだ!別にお前の意見なんざ最初から気にしちゃいねぇよ」
言い切るか言い切らないか。そんな束の間、私はその場のに似つかわしくないほどのスピードで走りドフラミンゴさんの胸へと飛び込んでいた。
まるで、私から求めたみたいに。
「……お、おい。権兵衛」
ベラミーさんの脱力した声に違うって叫びたかったのに、それは言葉として口から出ていくことなくドフラミンゴさんの唇に吸い込まれた。
「お前はそこで指でもくわえて好きな女が他の男にとられるところでも見てろ」
口づけを交わし、私の首にピリッと痛いこいつは俺の所有物だと言わんばかりの鬱血痕を残し、反動で出た私の声でベラミーさんは絶望と怒りが混ざったとても怖い色を身に纏う。
これで今回のことはチャラだ。そう吐き捨て私を腕に抱きながら港へと踵を返した。
ドフラミンゴさんの肩越しから見る最後の町は普段見ることができない高さから見たためか少し寂しく見え泣きたくもないのに、少し涙が滲んだ。
「……」
「……」
港に着けば何か大きな船があると思っていたのに、そんな船は一隻もなく、普通の船とベラミーさんの船のみ。
不思議に思っているとこれから空を散歩する。と言いながらドフラミンゴさんの身体ごと宙に浮く。
驚きの連続に、真下の海に、もしかしたら移動中すぐに海に消えるかもしれない。
生きるか死ぬかの分岐点だと一人勝手に不安になり、気づけば過呼吸を起こしていた。
「……んぅ?!」
目の前にドフラミンゴさんの端正な顔。
思うことはたくさんあったけど、これは救命処置なんだって気づかされた瞬間が一番恥ずかしかった。
「どうだ、落ち着いたか?」
最後に厭らしく鳴らされたリップ音に不適な笑み。
全身で悪役を演じるドフラミンゴさんのそのサングラスの奥に隠れる瞳の真意は見えないが、声色だけはとても優しく、この人も何故悪人をやっているのか不思議になる。
「……あ、ありがとうございます」
赤くなる顔を誤魔化すように俯きお礼を述べる。
「……気にするな」
移動中のドフラミンゴさんはとても静かで、考えてしまうのはベラミーさんにマスターの事。
家族は元よりいないから、その心配も物思いに更けるほどの時間も要らない。
……傷も確かに心配だけど、知り合いを失う方があの人たちにはとても辛いはず。
「もうすぐ俺の城に着く。フフッ、なに心配入らねぇさ。みんな気の良い奴等だ」
「……?」
海に捨てられることなくドフラミンゴさんの拠点まで来てしまったことに驚きを隠せず、失礼ながら穴が開くんじゃないかってほど見つめてしまった私をドフラミンゴさんも不思議がった。
「……私を捨てないんですか?」
「なぜ捨てる必要がある」
至極可笑しそうに笑うドフラミンゴさんがわからず黙った。
「おかえりなさい、若様」
「まあいいさ」
「……そのお嬢さんは」
「フフフフフッ、俺のだ。気にするな」
初めて見る大きなお風呂の前に露出の激しい女の人たちが私を睨む。
中には今にも叫びそうなほど顔を歪めた人だっていた。
綺麗な人が怒ると怖いとはよく聞くが、実際はそんないことないのかと気づかされる。
「そんなとこじゃ風邪引くだろう?」
何処か優雅に肩を抱き、城の中へと導かんとする姿はまるで王子様。
なるようになれ。
ドフラミンゴさんが今ここに私といるということは、ベラミーさんの命は保障されたと受け取ってもいいはずだから、私はドフラミンゴさんの神経を逆撫でしないように最善を尽くすだけ。
覚悟を決めた私の表情を見て、少しつまらなさそうな顔をしたドフラミンゴさんだったがすぐにそんな顔を隠し笑った。
長い廊下を黙って歩く二人の間に不思議と嫌な空気は感じず、そのまま成り行きに任せて黙ったままついて行く。
「あえて言うがお前の部屋はここだ」
「……」
「返事くらいはしろ」
この廊下を歩くだけでもたくさんの部屋があった。それにきっとまだまだ上にも階があるはず。地下もあって牢獄のような場所が必ずある。
そう、思えるような大きいお城で人質ともとれるような人間がまさかの城主と相部屋なんて、聞いたことも読んだこともない。
この人が分からなさ過ぎて開いた口がふさがらなくなる私の心中を察してか、しつこく返事を求められなかった。
男と相部屋。
そう意識するだけで心臓が馬鹿みたいに高鳴っていく。
「倒れるなよ?」
ここに来てからずっと抱かれている肩に、少し力が籠められ心配してくれていのが分かる。
「ありがとうございます」
素直な、何の変哲もないお礼だったにも関わらず、凄く嬉しそうに笑って芽生える必要のない罪悪感が芽生える。
これは、いったい誰に向けた罪悪感なのか。
今はまだわからなくていい。
「腹、減ったか?」
「い、いえ。お気遣いなく、皆さんのお食事の……あ」
そうだ、私は人質で誰かと一緒にご飯なんて食べられるはずがない。
城主と同じ部屋を与えられ優しくされ、勘違いしてしまった。
顔が嫌でも熱くなって恥ずかしくなる。
「俺は言ったはずだ。皆気のいいやつだと。お前が奴らと一緒に飯を食いたいならあいつらも喜んで受け入れるさ」
どうするんだ?
酷く挑戦的な声に悩む時間など必要ない。
「別に食事を用意してもらう方がお手を煩わせそうです。ご一緒させていただきます」
「……そうか、良い判断だ」
一人、優しくソファー座らせ席を離れるドフラミンゴさんの背中をみるだけで、鼓動が早くなる。
少しでも落ち着けようと備え付けの大きな窓から見える果てなど見えない海を見た。
私の命一つでこの先の何処でベラミーさんが生きている。
囚われた先で酷い扱いを受けることなく優しく扱われる。
それだけで幸せを感じて段々と落ち着いていく心臓。
「……ぁ」
不意な眠気に抵抗するため目を強く擦る。
流石に男と二人きりの部屋で主がいないからと言って寝るわけにはいかない。
そうは思うのに、抗えないほどの睡魔が私を重力の奴隷とした。