Sin - 罪 -
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ここに長期滞在ようになって、妙に俺の目に留まる女がいる。
何、どうということはない普通の女。それに、身寄りもねえらしい。
奪って奪えねえこともない相手を何故いまだ奪えてねえのか、その理由はあいつの警戒心の強さにあった。
何をしても、何を話してもビクビクされちゃ船旅での苦労が手に取るようにわかる今、そんなに先を急いでるわけでもねえ。
警戒心をほどいて連れて行くのも悪くねえと思ってあれよこれよと試しちゃいるが。
どうも権兵衛は酒が入らねえと本音が言えねえ質のようで中々と手こずっている。
それは今日とて同じこと。
「…おい、権兵衛」
「…追加注文ですね。しばらくお待ちください」
「…」
ご覧の通り、少しの隙も見せちゃくれねぇ。隙だけじゃねえ、目すら合わせねえ始末だ。
……夜はあんなに笑ってくれるのによお。
そんなに怖いか?俺のことが。
らしくもないこと考えてると、タイミングよく横を通った権兵衛の手を俺は思わず掴んでいた。
「……」
「……ッッ」
不意な接触に肩を激しく震わせる。
そんな可愛い反応を他の奴らに見られたのは当然俺が原因なのに、理不尽な怒りが収まらねえ。
「……なんでもねえ」
「……そう、ですか。あ、お酒の追加要りますか?」
訂正。こいつは隙だらけだ。バカみてぇに隙だらけだ。その証拠にさっきの反応に今のこう、小首をかしげて尋ねてくる仕草。
抱き潰してもいいのか?
「…どんまい。ベラミー」
「黙れ、サーキース」
早く夜が来ればいいと願ったのは、今日が初めてかもしれないと笑ったのは内緒のはなし。
「あー、自分も相当のバカだ」
「…あの、お酒の…」
「ああ、頼むよ。いつもの、でわかるか?」
俺が喋らないのをいいことにサーキースがベラベラと権兵衛と話し出す。
元々サーキースが女慣れしているのが功を成しているのか権兵衛は普通に話をしていた。
「ッッな、なんだよベラミー、急に殺気だって」
「…帰る」
「カエル?ッ?!」
「バカなこと言ってねぇで帰るぞ!」
この流れも、アイツにはなんの非もねぇのに、俺は最低だ。せめて権兵衛の前でだけでもかっこよくいてぇのに。
「っまた!来てください!待ってます!」
権兵衛は勇気を出して俺に言葉を投げ掛けてくれたのに、俺はなにも言わないまま、店を出た。
「おい、いいのか。権兵衛ちゃんのこ…ッ」
「気安くあいつを名前で呼ぶな!サーキース!」
俺の殺気に物怖じせず、声をかけてくるこいつは本当にいいやつだと思う。むしろ海賊なんてやってねぇ方がいいとさえ思うときがあるほどにサーキースはいいやつだ。
話の引き出しも、短気な俺よりたくさん持ってる。
本当はサーキースに色々教わるべき立場の俺が、何をやってんだ。
「…落ち着いたか?」
「ああ、すまなかった」
「なに、気にするな。俺も配慮が足りなかった」
サーキースの心の広さに俺は空を見る。どこまでも広い空は、海を連想させ、もし、本当に空島があるのなら、俺は、空へいきたい。
ふと、現実逃避にも似た本音が渦を巻く。
もう、考えるのはやめて俺に戻ろう。
それがいい。と、サーキースを見る。
「…おい、サーキース、感じるか?」
「ああ、なんだ?この妙な気配は」
「…ッおい!サーキース!走れ!」
今までに、感じたことの無い恐怖は、どんどんと知った空気にかわり、俺をその恐怖の奥底へしまいこむ。
「逃げても無駄だってわかってるだろう?……ベラミー」
遅かったか。
それを思えただけ、昔よりは成長している。
俺はこの空気の根元を見上げ膝をつき、何時ものように笑って謝り倒した。
何、そんなに大した失敗はしていないはずさ。
そんな、軽い気持ちだった。
「……ッ」
恐怖を呼ぶ異様な気配とは真反対の気配を感じ左を見た。
何処か軸がおかしいのに今にも降り下ろしそうな姿でサーキースが立っている。
「やめてくださいッ!!」
もうすぐ俺の首は仲間の手によって飛んでいく。
最後に見るのはあいつの顔がよかった。なんて考えながら俺は今世に別れを告げた時、嫌でも覚えてしまった聞き慣れた声が耳に届いた。
「あ?誰だ?」
いつもの笑顔は影に消え、あるのはあの冷酷な表情。
俺はやめろ!俺なんか放っておけ!と、ドフラミンゴの前だというのに叫び、身の危険を伝えたのに、ドフラミンゴに気圧された権兵衛には到底届いてはなかった。
「フフフフフッ、そうか、こいつはお前のこれか?」
サーキースを操り自由の効かない右手とは反対の左手で小指をたて、厭らしい笑みを浮かべるドフラミンゴ。
違う、そんなんじゃない。俺が勝手にこいつが好きなだけで、こいつはそんなんじゃ……。
何も言えず黙り込む俺にドフラミンゴは痺れをきらし、サーキースの進路を権兵衛へと向けた。
「違う!権兵衛は俺が勝手に惚れ込んだ女だ!関係ねえから手を出すな!!」
「……これはこれは。フフフッ、おい権兵衛、と言ったか。俺の船に乗らねえか?」
何、どうということはない普通の女。それに、身寄りもねえらしい。
奪って奪えねえこともない相手を何故いまだ奪えてねえのか、その理由はあいつの警戒心の強さにあった。
何をしても、何を話してもビクビクされちゃ船旅での苦労が手に取るようにわかる今、そんなに先を急いでるわけでもねえ。
警戒心をほどいて連れて行くのも悪くねえと思ってあれよこれよと試しちゃいるが。
どうも権兵衛は酒が入らねえと本音が言えねえ質のようで中々と手こずっている。
それは今日とて同じこと。
「…おい、権兵衛」
「…追加注文ですね。しばらくお待ちください」
「…」
ご覧の通り、少しの隙も見せちゃくれねぇ。隙だけじゃねえ、目すら合わせねえ始末だ。
……夜はあんなに笑ってくれるのによお。
そんなに怖いか?俺のことが。
らしくもないこと考えてると、タイミングよく横を通った権兵衛の手を俺は思わず掴んでいた。
「……」
「……ッッ」
不意な接触に肩を激しく震わせる。
そんな可愛い反応を他の奴らに見られたのは当然俺が原因なのに、理不尽な怒りが収まらねえ。
「……なんでもねえ」
「……そう、ですか。あ、お酒の追加要りますか?」
訂正。こいつは隙だらけだ。バカみてぇに隙だらけだ。その証拠にさっきの反応に今のこう、小首をかしげて尋ねてくる仕草。
抱き潰してもいいのか?
「…どんまい。ベラミー」
「黙れ、サーキース」
早く夜が来ればいいと願ったのは、今日が初めてかもしれないと笑ったのは内緒のはなし。
「あー、自分も相当のバカだ」
「…あの、お酒の…」
「ああ、頼むよ。いつもの、でわかるか?」
俺が喋らないのをいいことにサーキースがベラベラと権兵衛と話し出す。
元々サーキースが女慣れしているのが功を成しているのか権兵衛は普通に話をしていた。
「ッッな、なんだよベラミー、急に殺気だって」
「…帰る」
「カエル?ッ?!」
「バカなこと言ってねぇで帰るぞ!」
この流れも、アイツにはなんの非もねぇのに、俺は最低だ。せめて権兵衛の前でだけでもかっこよくいてぇのに。
「っまた!来てください!待ってます!」
権兵衛は勇気を出して俺に言葉を投げ掛けてくれたのに、俺はなにも言わないまま、店を出た。
「おい、いいのか。権兵衛ちゃんのこ…ッ」
「気安くあいつを名前で呼ぶな!サーキース!」
俺の殺気に物怖じせず、声をかけてくるこいつは本当にいいやつだと思う。むしろ海賊なんてやってねぇ方がいいとさえ思うときがあるほどにサーキースはいいやつだ。
話の引き出しも、短気な俺よりたくさん持ってる。
本当はサーキースに色々教わるべき立場の俺が、何をやってんだ。
「…落ち着いたか?」
「ああ、すまなかった」
「なに、気にするな。俺も配慮が足りなかった」
サーキースの心の広さに俺は空を見る。どこまでも広い空は、海を連想させ、もし、本当に空島があるのなら、俺は、空へいきたい。
ふと、現実逃避にも似た本音が渦を巻く。
もう、考えるのはやめて俺に戻ろう。
それがいい。と、サーキースを見る。
「…おい、サーキース、感じるか?」
「ああ、なんだ?この妙な気配は」
「…ッおい!サーキース!走れ!」
今までに、感じたことの無い恐怖は、どんどんと知った空気にかわり、俺をその恐怖の奥底へしまいこむ。
「逃げても無駄だってわかってるだろう?……ベラミー」
遅かったか。
それを思えただけ、昔よりは成長している。
俺はこの空気の根元を見上げ膝をつき、何時ものように笑って謝り倒した。
何、そんなに大した失敗はしていないはずさ。
そんな、軽い気持ちだった。
「……ッ」
恐怖を呼ぶ異様な気配とは真反対の気配を感じ左を見た。
何処か軸がおかしいのに今にも降り下ろしそうな姿でサーキースが立っている。
「やめてくださいッ!!」
もうすぐ俺の首は仲間の手によって飛んでいく。
最後に見るのはあいつの顔がよかった。なんて考えながら俺は今世に別れを告げた時、嫌でも覚えてしまった聞き慣れた声が耳に届いた。
「あ?誰だ?」
いつもの笑顔は影に消え、あるのはあの冷酷な表情。
俺はやめろ!俺なんか放っておけ!と、ドフラミンゴの前だというのに叫び、身の危険を伝えたのに、ドフラミンゴに気圧された権兵衛には到底届いてはなかった。
「フフフフフッ、そうか、こいつはお前のこれか?」
サーキースを操り自由の効かない右手とは反対の左手で小指をたて、厭らしい笑みを浮かべるドフラミンゴ。
違う、そんなんじゃない。俺が勝手にこいつが好きなだけで、こいつはそんなんじゃ……。
何も言えず黙り込む俺にドフラミンゴは痺れをきらし、サーキースの進路を権兵衛へと向けた。
「違う!権兵衛は俺が勝手に惚れ込んだ女だ!関係ねえから手を出すな!!」
「……これはこれは。フフフッ、おい権兵衛、と言ったか。俺の船に乗らねえか?」