Sin - 罪 -
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「おーーい、こっちの酒が足りねぇぞーー」
「こっちもだー」
今日も大変繁盛しているジャヤのとある酒屋。
ここは毎日大金を持った新入りさんや賭け事に目がない常連さんが行き来している。
「おい女、この島で一番高い酒を持ってこい」
「……わかりました」
この顔が怖い人はベラミーと言うこの島で一番の厄介者。
正直、ここが酒屋じゃなかったら声をかけられたくないほど怖くてしかたがない人だ。
「お、ありがとな。……お前、この島の人間か? 」
「……」
「……」
「……」
辺りが静かになる。
また酒に酔ったお客さんの争いかと憂鬱になりながら席を離れようと引き返した瞬間、誰かに手を掴まれた。
「おいおいおい、無視は態度が悪すぎるんじゃねぇのか? 」
「……え? 」
「……は? 」
飲み込めない話に噛み合わない空気。いったい全体何がどうなっているのか。
「……おい、権兵衛! お前が質問されてるんだぞ! 」
「……ど、どこで誰に? ! 」
「俺がお前にだ」
どんどんと重くなる空気にいまだ捕まれた手が私を急速に動揺させる。
渦中は私。
「すみません、もう一度いっていただけませんか? 」
「……お前はこの島の人間か? って聞いたんだ」
なんだ、そんなことか。と半ば呆れながら生まれも育ちもこの島だと告げる私に対し、彼はどこか楽しげに私の返答を聞いていた。
そうして二、三私のことを聞いて彼らは帰っていった。
「……権兵衛。いくら普段注文の受け答えしかないからって周りの声を聞かんのはいかんぞ。ベラミー様のように他愛もない会話をしたい客もいるんだ。そこを忘れるな。わかったな? 」
「……はい、マスター」
怖い人には近づきたくない。
そんな言葉を飲み込みマスターの教えを胸に刻む。
マスターも私の本当の心がわかるのか、少し笑いながら仕事を切り上げるよう言う。
お酒を奢ってくれるらしい。
「……」
「本当にしゃべらないな」
「……苦手なんです。人が」
生まれてこのかた、この島の住人なのに人と関わったことがない。
否、関わるようなことがあっても私から逃げていた。
どうしてか物心つく前から人が苦手なのだ。
「知ってるよ。それでも私の店で働いてくれるのは大きな一歩だと私は思うよ」
「……私は、変われていますか? 」
「ああ、変われてるよ。ゆっくりと確実にね」
嘘でもその言葉が私をひどく安心にさせる。
「……よう、もう店じまいか? 」
足音もなく、私の背後に立ったベラミーさん。
マスターも気づいてるなら教えてくれればいいのに。昔と変わらず意地悪で変に飛び上がった肩が恥ずかしい。
「そのつもりだったがお客さんが来ちゃ閉められないな。何がいいかね? 」
「……こいつと同じやつ」
「かしこまりました」
……マスターオリジナルのほとんどアルコールの入ってないカシス・オレンジ。
極端に酔いやすい私のためにマスターが作ってくれたお酒。
ベラミーさんに合うのかな?
「……自家製の……って言わなくてもわかってるか。なにかあったら権兵衛に頼んでくれ。俺は奥に引っ込んでるよ」
お酒を差し出して笑いながら奥に消えたマスターに、思わず立ち上がる。
「おい、酒、温もるぞ」
「……」
ベラミーさんの言葉で大人しく座りはしたが、緊張からかグラスを持つ手が小刻みに震え氷が鳴る。
「……ッ」
早く空にして席を立とうと一口を多めに口に含むと、いつもなら美味しく飲めるお酒が焼けるように痛い。
「……そんなに緊張するなよ。こっちまで緊張しちまう」
笑いながら声をかけてくるベラミーさんに少しの違和感を感じ、思わず見つめてしまう。
「ベラミー、さん。そんなやさしい笑いかた、できたんですね」
何も変なことを言ってないのに豪快に、大袈裟に笑うベラミーさんに不快感を抱く。
それでも怖い気持ちのほうが強く、再びグラスの中身を飲み干すことに専念する。
「はぁー、いやいや、悪ぃな。まさかそんな事を言われるとは思わなくってよ、つい……ッはははははッ」
「謝る気無いじゃないですか……」
アルコールが回り、思わずこぼれた本音に身構える。
するとさらに笑いだすベラミーさん。
段々と腹が立ってくる。
「……ッなんなんですか! 私何か変なこと言いましたか? ! 」
「いやー、変なことは言ってねぇと思うぜ? ただ、俺にそんなこと言うやつぁまず、いねぇだろうな……ッて、ふふっあはははははッこいつぁ面白ぇや! 」
「……」
とても楽しそうに、嬉しそうに笑う彼が、なんだかとても子供に見えた。
「こっちもだー」
今日も大変繁盛しているジャヤのとある酒屋。
ここは毎日大金を持った新入りさんや賭け事に目がない常連さんが行き来している。
「おい女、この島で一番高い酒を持ってこい」
「……わかりました」
この顔が怖い人はベラミーと言うこの島で一番の厄介者。
正直、ここが酒屋じゃなかったら声をかけられたくないほど怖くてしかたがない人だ。
「お、ありがとな。……お前、この島の人間か? 」
「……」
「……」
「……」
辺りが静かになる。
また酒に酔ったお客さんの争いかと憂鬱になりながら席を離れようと引き返した瞬間、誰かに手を掴まれた。
「おいおいおい、無視は態度が悪すぎるんじゃねぇのか? 」
「……え? 」
「……は? 」
飲み込めない話に噛み合わない空気。いったい全体何がどうなっているのか。
「……おい、権兵衛! お前が質問されてるんだぞ! 」
「……ど、どこで誰に? ! 」
「俺がお前にだ」
どんどんと重くなる空気にいまだ捕まれた手が私を急速に動揺させる。
渦中は私。
「すみません、もう一度いっていただけませんか? 」
「……お前はこの島の人間か? って聞いたんだ」
なんだ、そんなことか。と半ば呆れながら生まれも育ちもこの島だと告げる私に対し、彼はどこか楽しげに私の返答を聞いていた。
そうして二、三私のことを聞いて彼らは帰っていった。
「……権兵衛。いくら普段注文の受け答えしかないからって周りの声を聞かんのはいかんぞ。ベラミー様のように他愛もない会話をしたい客もいるんだ。そこを忘れるな。わかったな? 」
「……はい、マスター」
怖い人には近づきたくない。
そんな言葉を飲み込みマスターの教えを胸に刻む。
マスターも私の本当の心がわかるのか、少し笑いながら仕事を切り上げるよう言う。
お酒を奢ってくれるらしい。
「……」
「本当にしゃべらないな」
「……苦手なんです。人が」
生まれてこのかた、この島の住人なのに人と関わったことがない。
否、関わるようなことがあっても私から逃げていた。
どうしてか物心つく前から人が苦手なのだ。
「知ってるよ。それでも私の店で働いてくれるのは大きな一歩だと私は思うよ」
「……私は、変われていますか? 」
「ああ、変われてるよ。ゆっくりと確実にね」
嘘でもその言葉が私をひどく安心にさせる。
「……よう、もう店じまいか? 」
足音もなく、私の背後に立ったベラミーさん。
マスターも気づいてるなら教えてくれればいいのに。昔と変わらず意地悪で変に飛び上がった肩が恥ずかしい。
「そのつもりだったがお客さんが来ちゃ閉められないな。何がいいかね? 」
「……こいつと同じやつ」
「かしこまりました」
……マスターオリジナルのほとんどアルコールの入ってないカシス・オレンジ。
極端に酔いやすい私のためにマスターが作ってくれたお酒。
ベラミーさんに合うのかな?
「……自家製の……って言わなくてもわかってるか。なにかあったら権兵衛に頼んでくれ。俺は奥に引っ込んでるよ」
お酒を差し出して笑いながら奥に消えたマスターに、思わず立ち上がる。
「おい、酒、温もるぞ」
「……」
ベラミーさんの言葉で大人しく座りはしたが、緊張からかグラスを持つ手が小刻みに震え氷が鳴る。
「……ッ」
早く空にして席を立とうと一口を多めに口に含むと、いつもなら美味しく飲めるお酒が焼けるように痛い。
「……そんなに緊張するなよ。こっちまで緊張しちまう」
笑いながら声をかけてくるベラミーさんに少しの違和感を感じ、思わず見つめてしまう。
「ベラミー、さん。そんなやさしい笑いかた、できたんですね」
何も変なことを言ってないのに豪快に、大袈裟に笑うベラミーさんに不快感を抱く。
それでも怖い気持ちのほうが強く、再びグラスの中身を飲み干すことに専念する。
「はぁー、いやいや、悪ぃな。まさかそんな事を言われるとは思わなくってよ、つい……ッはははははッ」
「謝る気無いじゃないですか……」
アルコールが回り、思わずこぼれた本音に身構える。
するとさらに笑いだすベラミーさん。
段々と腹が立ってくる。
「……ッなんなんですか! 私何か変なこと言いましたか? ! 」
「いやー、変なことは言ってねぇと思うぜ? ただ、俺にそんなこと言うやつぁまず、いねぇだろうな……ッて、ふふっあはははははッこいつぁ面白ぇや! 」
「……」
とても楽しそうに、嬉しそうに笑う彼が、なんだかとても子供に見えた。
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