優しい彼の裏側
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
一人暮らし初日。
昼間から始めた引っ越し業者さんとの荷物運びも、何とか夕方には終わる。
しかしまだ休めない。
何故なら口下手な私がもっとも苦手とする挨拶回りが残っているから。
嫌だ嫌だと逃げていてもしょうがない。ととある箱から同じように包まれは箱を数箱取り出し、袋に積め、外へ出る。
まずは近場から。と右隣の人はチャイムを鳴らし相手が出てくるのを待つ。思ったよりも早く出てきてくれたのは気さくな女性で、特に緊張することもなく、軽い挨拶をしてながら袋を渡し別れる。
スタートダッシュはいい感じだ。
浮かれる気分で左隣の家へも行く。表札を見ると、おついち。と書かれいる。
……だからなんだというんだ。特に気に止めることなくチャイムを押す。しかしいくら待っても出てこない。
生活の流れは人それぞれ。今は出掛けてるのかな?と思い、また出直そうと次の家へと向かう。
二軒、三軒と、ここへ来るまではどことなく口数の少ない人たちが多かったため、順調に進む。しかし、あとは端っこの人だけ。となったところでよくお喋りする人にあたり、挙動不審になりそうな程、あれこれとされる質問。
何とか全てを切り抜け、漸く玄関前へ。思わず出てくるため息。
「お疲れ様です」
「そんな、全然疲れて……え?」
極々自然に声をかけられ答えてしまったが、ここへ知り合いは一切いない。
いったい誰が。
声の主を確認しようと左隣に目を向ける。
「あ、す、すみません!これ!つまらないものですが!バタバタとしてしまったお詫びです!」
あまりにも優しそうで、かっこいい人に、パニックになって大袈裟なくらいオーバーなアクションをつけ、袋を差し出す。
それでも男の人は優しそうに微笑みながら受け取ってくれた。
「……あの、お名前を伺っても?」
一瞬はてなが浮かぶが、理解した途端慌てて自己紹介。
「そんなに緊張しないでください。別に取って食おうなんて思っちゃいませんから」
言葉に詰まる。
おついちさんは、優しい顔でさらりと怖いことを言った。
私が引きつった顔で固まると、名無しのさんて嘘つけない人なんですね。と笑われた。
いい気はするはずもなく、早く話を切り上げようと家の掃除を理由にお辞儀をする。
「……ここは都心。あなたがこの汚れきった場所で、潰れてしまわないかと心配です」
ずっとこちらを見ていたおついちさんの瞳は、廊下の外、空へと移動する。
その姿は哀愁漂っており、さっきまで感じていた不愉快さはいとも簡単に消え、同時にこの人が怖いと思った。
「無理言って上京した身としては潰れるわけにはいきません。何としても生き残りますよ」
自然と笑いながら彼にそう伝える。
その私の姿に、少し妖しい笑みに変えたような気がした。
昼間から始めた引っ越し業者さんとの荷物運びも、何とか夕方には終わる。
しかしまだ休めない。
何故なら口下手な私がもっとも苦手とする挨拶回りが残っているから。
嫌だ嫌だと逃げていてもしょうがない。ととある箱から同じように包まれは箱を数箱取り出し、袋に積め、外へ出る。
まずは近場から。と右隣の人はチャイムを鳴らし相手が出てくるのを待つ。思ったよりも早く出てきてくれたのは気さくな女性で、特に緊張することもなく、軽い挨拶をしてながら袋を渡し別れる。
スタートダッシュはいい感じだ。
浮かれる気分で左隣の家へも行く。表札を見ると、おついち。と書かれいる。
……だからなんだというんだ。特に気に止めることなくチャイムを押す。しかしいくら待っても出てこない。
生活の流れは人それぞれ。今は出掛けてるのかな?と思い、また出直そうと次の家へと向かう。
二軒、三軒と、ここへ来るまではどことなく口数の少ない人たちが多かったため、順調に進む。しかし、あとは端っこの人だけ。となったところでよくお喋りする人にあたり、挙動不審になりそうな程、あれこれとされる質問。
何とか全てを切り抜け、漸く玄関前へ。思わず出てくるため息。
「お疲れ様です」
「そんな、全然疲れて……え?」
極々自然に声をかけられ答えてしまったが、ここへ知り合いは一切いない。
いったい誰が。
声の主を確認しようと左隣に目を向ける。
「あ、す、すみません!これ!つまらないものですが!バタバタとしてしまったお詫びです!」
あまりにも優しそうで、かっこいい人に、パニックになって大袈裟なくらいオーバーなアクションをつけ、袋を差し出す。
それでも男の人は優しそうに微笑みながら受け取ってくれた。
「……あの、お名前を伺っても?」
一瞬はてなが浮かぶが、理解した途端慌てて自己紹介。
「そんなに緊張しないでください。別に取って食おうなんて思っちゃいませんから」
言葉に詰まる。
おついちさんは、優しい顔でさらりと怖いことを言った。
私が引きつった顔で固まると、名無しのさんて嘘つけない人なんですね。と笑われた。
いい気はするはずもなく、早く話を切り上げようと家の掃除を理由にお辞儀をする。
「……ここは都心。あなたがこの汚れきった場所で、潰れてしまわないかと心配です」
ずっとこちらを見ていたおついちさんの瞳は、廊下の外、空へと移動する。
その姿は哀愁漂っており、さっきまで感じていた不愉快さはいとも簡単に消え、同時にこの人が怖いと思った。
「無理言って上京した身としては潰れるわけにはいきません。何としても生き残りますよ」
自然と笑いながら彼にそう伝える。
その私の姿に、少し妖しい笑みに変えたような気がした。
1/8ページ