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完成

 今日はことし最後の日。最後の日といえばSS。残念ながら今年もfineは出場は叶わなかったものの、夢ノ咲つながりで余興やらなんやら……宣伝も兼ねた特番だとかで、結局今日も二十一時あたりまでお仕事があった。まあいいことなんだけどね。この時期に暇なのはアイドルとしてちょっとやばいので。年齢による時間制限が緩い英智さまだとか、UNDEADだとかはもうちょっと遅い時間まで仕事が入っているらしい。
 仕事が「あった」とはいうものの、それはあくまでアイドルとしての仕事が二十一時までであったというだけで、残念ながら姫宮家の長男としての仕事は最後ではないのである。
 そう、今年は英智さまがいないからね。英智さまの分までfineの宣伝とか、もちろん姫宮のために顔を売ったりだとか、頑張らねば。



 ……といったことを考えていた気がする。
 気がする、というのは意識がすこし曖昧だからで、たしか張り切ってパーティー会場に来たはいいものの、ひととおり挨拶したところで眠気に耐えきれずに部屋を借りて仮眠を取る羽目になってしまったのだ。たぶん。
 ……相変わらず大人たちは騒いで……というか、ボクがいたときよりさらに盛り上がっているっぽい。お酒が入って声が大きくなっているんだろうか。声だけじゃなくって、音楽のようなものも……ちがう、これは。日和さまと英智さまが。
 がばり、と起き上がったところでだれかに雑に肩を押されてベッドに逆戻りすることになった。
「今は戻らないほうがいいと思いますよ。なかなか酷い感じになっていましたし」
「……こんなとこで何してんの」
 誰かが枕元にいるなあ、弓弦かなあ、とは思っていたけれど。まさかこいつ――、朱桜司だったとは。
「grape juiceがjuiceではなかったんですよね」
「は?」
「……年末の挨拶は父に丸投げしてきたので。そのぶん、明日はKnightsとして動けそうにないんですけど」
「あした」
「明日です。……ああほら、ちょうど向こうは盛り上がっているようですね」
 いつの間にか曲は終わっていて、妙に揃った声が……。
 いやちがう、これは。
 なな、ろく。
 カウントダウンじゃないか。
 よん、さん、に。
 いち。
 いちおう年が明けたっぽいし、挨拶くらいはしておこうと思って開きかけた口は既に何かに塞がれていた。

「あけましておめでとうございます。……伏見先輩はそのうち回収に来ると思いますよ。fineは今日も朝から仕事があるんでしたっけ。きちんと家で休んだほうがいいでしょう」
 それでは私はこれで、だなんて言って部屋を出て行く。
 …………、あ、ボクからあけましておめでとうって言ってない。



 このことを数週間後のボクは「ジュースではなかった」とはワインを飲まされたの意であり、酔っていたからなのだと結論づけたのだけど、さらに数年後、ボクはあいつがザルであることを知ることになる。




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未成年飲酒を推奨する意図はありません。
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