このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

中途半端

「ぼくはからだがふあんていなので。いちど、おんなのこになったときがあるんです。そのとき、かおるがそのままのかなたくんでいいんだよ、といってくれて」
うれしかったです、と深海先輩が言う。
頰を仄かに染め、羽風先輩の姿を思い描いているのか、少し遠くを見ながら。
先輩がこんなに幸せそうな顔をするのは海の生き物相手だけだと思っていた。思わず見惚れてしまう。
「ふふ。かおるにはないしょですよ。……といっても、つたわってしまっているのかもしれませんけど」
「伝わっ……?」
「しらないですか、みどり。『せきれい』と『あしかび』には『かんのうのうりょく』があってですね?」
「かんのうのうりょく……?」
音を聞いても意味が想像できず、首を傾けると、深海先輩は濡れた指で噴水の淵に文字を書き始めた。薄っすらと、コンクリートが濡れて色が変わる。
感応能力。
「『せいしんかんのう』といったほうがわかりやすいかもしれませんね」
「……つまり?」
「せきれいのかんがえていることはあしかびにもつたわります。ぎゃくもしかり、です」
こたいさがあるんですけどね、と先輩。
なんだそれ。もし、それが本当なら。
「俺がうだうだ悩んでることも筒抜けかもしれない、ってことスか……?」
「かもしれない、ですけどね」
うわあ、なんだそれ、恥ずかしすぎる。鬱だ、死にたい。
「ふふ。みどり、『ゆでだこ』みたいですねー?」
7/17ページ