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中途半端

 だってもう二年だよ?
 僕だってもう二十歳になったのだ。
 いつまでも妹扱いだなんて、そんなの嫌だ。
 風呂上がり、ブラジャーをつけないままパジャマを着る。そうだよ、僕には胸っていう武器があるんだから。……モデル復帰を願う泉さんが、それを好いているかどうかは別として。でも、おとこのひとは、誰でも好きなものでしょ。あんなに、おとこのひと向けのあれこれに大きい胸が描かれていたりするのだから。
 深呼吸をして洗面所を出る。リビングの泉さんは録画していた、夢ノ咲の同級生が出る番組を見ているようだった。
「……あ、ゆうくん上がった? ちゃんと乾燥機着けてくれた?」
 カチャ、とドアを開けると泉さんが番組を一時停止させて話しかけてくる。
「大丈夫だよ。……泉さん、ちょっとだけ目瞑っててもらえないかな」
 いくら上にパジャマを着ているとはいえノーブラなのが恥ずかしく、ドアに半分隠れたまま返す。
「ゆうくん……?」
「いっ、いいから! 前向いて目瞑ってよ!!」


 泉さんがちゃんとめを瞑っていることを確認して、念のため目に左手を当てつつ、泉さんを跨ぐようにソファーの上に膝立ちになる。
 ぎ、とソファーがきしむ音がして、泉さんが不審そうな声をあげる。
「ゆうくん……?」
「黙って」
 左手はそのまま、右手を泉さんの頭の後ろに添えて、きゅ、と泉さんの頭を胸元に引き寄せた。そっと左手を外して、ぐいっと胸に押しつけるようにする。
 ボタンのないデザインのものを選んだから、たぶん今、泉さんの顔には布と僕の胸の感触しか伝わっていないはず。

「あのねゆうくん」
「なに、泉さん」
「胸に顔を埋めて死ぬ人間はゆうくんが思ってる以上に多いって覚えておいて」


「ってかゆうくんなんなの、下着は? 自分の胸の大きさぐらい分かってるよねえ? 抱き寄せたらどうなるかって、」
「……わかんないの、泉さん」
 ぴたり、と泉さんの動きが止まった。
「ゆう、くん?」
 泉さんの頬が仄かに赤い。
「パジャマ、ボタンがあったら痛いかなって思って無いやつ選んだんだよ」
 ああ、顔が熱い。これも全部、泉さんが悪いんだから。全然、手を出してくれない泉さんが。
 僕の肩を掴んだままの泉さんの手を引きはがして、胸に押し当てる。
「今日、姫宮さんと話してて。僕には胸があるんだから使えば良いじゃない、て。……だめだった……? 泉さん、こういうの好きじゃない……?」



「朱桜くんと姫宮さん、大丈夫かな」
「まあ、なるようになるでしょ……桃くんと何話してたの?」
「僕が話してただけ。姫宮さんは? って訊いたけどありそうに見える? って返されちゃった」
「……あの二人、生まれたときから一緒だったんでしょ。……男女で、同い年で、家柄も似たようなもんだったら、たぶん周りから色々言われて育ったんだと思う。……それで高校時代は仲悪かったんでしょ。そこからああなったんだから、そりゃあ拗れるよねえ」

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