第41夜
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「イザナ殿下も目を通されています」
「…」
『…』
ここはクラリネス第二王子・ゼンの執務室である。
ゼンを訪ねてきた男・ハルカ侯爵に渡された紙を見て、ゼンは渋い顔をしている。
アキは少し離れた机で書き物をしながら、静かにその様子を伺っていた。
「城に招かれるならば一度に…」
「……‥」
「聞いておられますか、ゼン殿下」
「…聞いているが聞き入れてはいない」
「殿下!!」
『(うーーん…)』
ハルカ侯爵が持ってきたそれは、妃探しの夜会に関して書かれたものだった。
ゼンは過去、兄であるイザナの妃探しのための夜会に参加したことはあるものの、ゼン個人の夜会は経験がなかった。
「アキ!」
『は、はいっ』
突然自分に矛先が向いて、アキはペンを走らせる手を止める。
「お前からも説得をせんか!」
『いや、私は殿下が思われる道を支えようと……なんでもありません』
ハルカ侯爵にギロリと睨まれ、アキは思わず顔を逸らした。
『(オビ…逃げたな…!)』
相も変わらず窓からこの執務室に侵入しようとしたオビが、ハルカ侯爵の気配を感じて引き返したことには気付いていた。
そして恐らく、いまこの会話を部屋の外から聞いているということも。
「しっかりとお考えください。この国と、次期国王であるイザナ殿下を支えるお立場から」
ハルカ侯爵にそう告げられ、ゼンは小さく息を吐いた。
「その為の務めならなんでもしよう。わかっているつもりだ。…だが妃は、」
一度言葉を切って、ゼンは真っ直ぐにハルカ侯爵を見つめる。
「妃を探すつもりはない。それは兄上にも伝えてある」
「――…殿…」
ハルカ侯爵が何か言いかけた時に、ガチャリと執務室の扉が開いた。
「失礼致します、殿下」
入ってきたのはミツヒデで、彼はいくつかの書類を抱えてる。
「これはハルカ侯爵どの」
「――ともかく。いずれにせよ、何もしない訳には参りません」
「参ろうがなかろうが夜会はやらん!その気もなくやるわけにいくか!」
『確かに令嬢方に失礼ではありますね』
「ゼン殿下はそう仰るだろうとイザナ殿下も仰っておられたので、夜会は無理にとは申しません」
「え?」
思わぬハルカ侯爵の返しに、ゼンは首を傾げた。
「ですが、どなたかお一人だけでも会って頂きます。殿下が婚姻を放棄していない事を示して頂かねば。それはお分かりでしょうな」
「……」
ハルカ侯爵の言葉に、ゼンは苦く笑いながら書類に目を向ける。
「…一対一の見合いなんて尚の事…」
言いかけて、ゼンは軽く目を見開いた。
『?』
「――…兄上も目を通したと言ったな、ハルカ侯……」
ゼンはハルカ侯爵に対して確認するように言葉を繋げる。
「ここに名のある者は皆、妃としての候補にあるという事か?」
「無論。横並びにというわけではありませんが」
「…………」
『…』
何かを思いついたのであろう主人を見て、アキは口元を少しだけ緩めた。
「…会うのは一人だけでいいと言ったな?」