第5夜
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ラジがクラリネスから祖国タンバルンへ帰って数日後。
やはりラジの【あの発言】によって、白雪はなんとなく居心地の悪い思いをしていた。
「じゃあゼン、私行くね」
「ああ、またな」
ゼンと別れ、自分に挨拶をしてくれる衛兵たちに返事をしながら、白雪は城内を走る。
1度立ち止まって振り返り、また走り出す。
その様子を見ていたのは不審な男だ。
物陰に隠れ、白雪のことを「たかが小娘」と言いながら紙に何かを書き込む。
男が1度口笛を鳴らすと、城壁の向こうから同じように口笛が返った。
それを確認した男は、紙を入れた筒を城内の向こう側へ向かって投げる。
しかし。
『ほっ』
「!?」
空中でそれを取ったのは、クラリネス王国第二王子直属の従者・アキ。それを確認したゼンは筒を投げた男を倒し、その背に馬乗りになった。
「う、うわっ!」
「“対象 青あり。他の家からの接触は見られず”」
アキから受け取った筒の中身を確認し、ゼンが紙に書かれた内容を読み上げる。
『青あり...ゼン様と会っていたということでしょうか』
「だろうな。お前に見えやすいようにした甲斐があったな」
『“たかが小娘”を監視するとは…随分仕事熱心なお方のようで』
「全くだ。…誰に言われて動いている?」
男の眼前に剣を突き立てたゼンに、男は言う。
「な、なんの話を...。そっ、その筒は、落ちていたのを投げ捨てようと」
「ゼン!」
走って近づいてくる白雪に「こっちに来るな」と伝えると、城壁の向こうからゼンに声がかかった。
「ゼン殿下!こちら確保しました!」
「ご苦労!」
『報告待ちのお仲間は捕まりましたよ。洗いざらい吐いていただきましょうか』
にこやかに男に語りかけるアキ。
すると。
「くそっ!」
「おわっ」
男は渾身の力で跳ね起き、ゼンを振り切って走り出す。
後ろへひっくり返ったゼンを見たアキの纏う空気が、一瞬にして冷え切った。
走り出した男の目の前に素早く回り込むと、腕を掴んで投げ飛ばす。
「うわあ!」
倒れた男の背にゼンと同じように馬乗りになり、アキは男の右腕をぎりぎりと締め上げた。
「いっ…!!」
男の悲鳴など気にもせず、アキは男の耳元にぐっと近づき囁く。
『二度と筒など投げられないように、この腕へし折ろうか』
「やっ…やめてくれ…!」
「アキ!」
『ゼン様、お怪我は』
「ない。…お前、目の色変わってるぞ」
ゼンの指摘通り、アキの深い紫の目は、いつの間にか薄い金色へと変わっていた。
「色が変わる…?昔聞いたことあるぜ…。裏の仕事をこなす女に、そんなやつがいるってな…!」
『…ではお兄さん、特別に教えてあげましょう。私の目の色が変わるのは、感情が昂ぶったとき。例えば戦いの最中だとか』
一旦言葉を切ったアキの目は、冷ややかだった。
『例えば、相手への強い殺意を感じたときだとか』
「っ…!!」
ぎり、ともう一度腕を締め上げられ、男は呻いた。
「衛兵!」
「はっ!」
ゼンの声に衛兵が集まり、男が連れて行かれる。
アキはゆっくりと目を閉じた。
次に目を開けた時には、いつも通りの紫に戻っていた。
「ゼン、アキさん!」
走り寄ってくる白雪に、アキはにこりと笑って答える。
『(久しぶりに色変わったな…)』
何度か瞬きを繰り返し、アキはぼーっと考える。
『(…からだ、熱い)』
目の色が変化したとき、いつも体が熱を帯びる。
「ーー構えることはないからな、白雪」
「うん、そうだね」
『(話、終わったみたいだ)』