twinkle days(白石vs財前/2年生)
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足が動かない。地面とくっついとるみたいや。
目の前の光景を見ていられなくて視線を逸らしたが、その直後にぱちんと音がして。そちらを見ると、財前の頬が少し赤くなっている。
それと同時に、彼女とも目があった。
目を丸くして驚いた表情をすると、すぐに俯いて、傘もささないまま雨の中へ走っていく。
泣いとった?
そう見えた瞬間、くっついていた足が地面を蹴った。
財前の前を通り過ぎようとして、ぐ、と腕を掴まれたが、その手を振り払う。
「離しや」
「…部長が追いかける意味、わからんのですけど」
「…泣いとる子をそのままにはしておけんやろ」
財前にそれだけ言うと、彼女が見えなくなった先に走る。
雨は通り雨だったのか、弱まってきた。
色々な所を探したけれど、彼女の姿は見つからない。
どこか外にいる?それとももう家に帰った?
でも、もし外にいるままなら…
「(どこにおるんや?大丈夫なんか?)」
探せど、姿は見えない。
足を止めると、空を見上げた。
「(…俺、何してんのやろ。
引き返すどころか、入っていってるやん。
第一、好きでもない男にこない心配されるんも、迷惑ちゃうん…?)」
「ー…、わからんなってきたわ…」
雨で濡れた頭を、がし、と掻く。
水滴が頬をつたった。
次の日、情けない事に風邪をひいたか、熱はないものの咳がひどい。マスクが息苦しい。
風邪なんていつぶりだろう。
「(ほんま、情けないわ…。部活が休みの間に治さなあかん)」
事もあろうに部長が風邪をひいたのでは、他の部員に示しがつかない。
「白石、おはようさん…って、どないしたんや!風邪か?」
「謙也…おはようさん。ご覧の通りや…。すまんな、部活始まるまでには必ず治す」
「おお、それはええんやけど、大丈夫か?なんや…もうすでにしんどそうに見えるんやけど…」
「そうか…?」
「おお。何かあったら言いや。無理するんちゃうで」
「…そうするわ。ありがとな…」
それから、授業をうけていたものの、頭がぼんやりしてきた。それでも頭では色々考えてしまう。
「(苗字さんは、学校きてるんか?…大丈夫、やろか…)」
…偶然見てしまったキスも、泣いてた顔も、頭から消えてくれない。
あかん、今度は頭が痛なってきた。
授業中ではあったが、先生に保健室に行かせてほしい旨を言い、重くなった身体でなんとか保健室まで歩く。
保健室にたどり着くと、先生はいない。
「(まあ、ええか…)」
なんとかベッドまでたどり着くと、そこに横になった。はあ、と息をつくと、急に眠気が襲ってくる。ーそこから、眠りにつくのは早かった。
ーー額が、ヒヤリとする。
気持ちええ、な。
額の気持ち良さに、閉じていた目をうっすら開けると、目の前に彼女が見えた。
驚いて身体を少し起こすと、額から薄い桜色のハンカチが布団の上に落ちた。
「苗字…さん…?」
「あ…起こしてしまってすみません」
「なんでここにおるん…?夢ちゃうよな」
「あの、今は放課後なんですけど」
「放課後……放課後⁈…やってもうた…俺ずっと寝てたんやな」
ふと、布団の上に落ちたハンカチが目に入った。
「この額にあててくれてたハンカチ、苗字さんのか?」
「はい。熱で寝苦しそうだったので…。冷えピタとか探したんですけど場所が分からなくて。先生も出張でいないみたいだし…。」
「そうか…。もしかして…ずっとハンカチ替えてくれてたん?」
「勝手にごめんなさい」
「いや、おかげで大分楽になったわ。ありがとうな、苗字さん」
そう言うと、彼女は安心したように微笑んで。
その顔を見たら、もう、後戻りはできんって思った。
「でも、苗字さんは大丈夫か?」
「え?」
「保健室来とるから。どこか具合悪いんかと思て」
そう尋ねると、彼女は少し俯きがちに首をふる。
ーー具合が悪いわけじゃない。なら別の理由だろう。それ以上は訊ねなかった。
「………」
「………」
会話がやまって、静けさが残る。
「ーー苗字さん、一緒に帰ろか?俺、送って行くわ」
「えっ」
「それとも、迷惑?」
彼女は驚いた顔で俺を見ると、首を横に振る。
「っ、そんな事ないです…ありがとうございます」
「ほな、ちょっと待っててくれるか。鞄取ってくるわ」
軋むベッドから降りると、もう頭痛などもない。
保健室の扉に手をかけると、後ろから彼女が俺を呼ぶ。
振り向けば、俯いて一生懸命に言葉をしぼりだしているようだった。
「先輩、…何も聞かないでくれて、ありがとうございます…」
「…ああ。ー…やけど、もし言いたくなったら、溜め込む前に言うんやで。俺でよかったら話聞くからな」
「…っ、はい」
正直、気にならんと言えば嘘や。
でも、彼女の気持ちの整理ができるまでは、何も聞かないと決めた。
俺が側でおってええなら、なんぼでも側におるから。
目の前の光景を見ていられなくて視線を逸らしたが、その直後にぱちんと音がして。そちらを見ると、財前の頬が少し赤くなっている。
それと同時に、彼女とも目があった。
目を丸くして驚いた表情をすると、すぐに俯いて、傘もささないまま雨の中へ走っていく。
泣いとった?
そう見えた瞬間、くっついていた足が地面を蹴った。
財前の前を通り過ぎようとして、ぐ、と腕を掴まれたが、その手を振り払う。
「離しや」
「…部長が追いかける意味、わからんのですけど」
「…泣いとる子をそのままにはしておけんやろ」
財前にそれだけ言うと、彼女が見えなくなった先に走る。
雨は通り雨だったのか、弱まってきた。
色々な所を探したけれど、彼女の姿は見つからない。
どこか外にいる?それとももう家に帰った?
でも、もし外にいるままなら…
「(どこにおるんや?大丈夫なんか?)」
探せど、姿は見えない。
足を止めると、空を見上げた。
「(…俺、何してんのやろ。
引き返すどころか、入っていってるやん。
第一、好きでもない男にこない心配されるんも、迷惑ちゃうん…?)」
「ー…、わからんなってきたわ…」
雨で濡れた頭を、がし、と掻く。
水滴が頬をつたった。
次の日、情けない事に風邪をひいたか、熱はないものの咳がひどい。マスクが息苦しい。
風邪なんていつぶりだろう。
「(ほんま、情けないわ…。部活が休みの間に治さなあかん)」
事もあろうに部長が風邪をひいたのでは、他の部員に示しがつかない。
「白石、おはようさん…って、どないしたんや!風邪か?」
「謙也…おはようさん。ご覧の通りや…。すまんな、部活始まるまでには必ず治す」
「おお、それはええんやけど、大丈夫か?なんや…もうすでにしんどそうに見えるんやけど…」
「そうか…?」
「おお。何かあったら言いや。無理するんちゃうで」
「…そうするわ。ありがとな…」
それから、授業をうけていたものの、頭がぼんやりしてきた。それでも頭では色々考えてしまう。
「(苗字さんは、学校きてるんか?…大丈夫、やろか…)」
…偶然見てしまったキスも、泣いてた顔も、頭から消えてくれない。
あかん、今度は頭が痛なってきた。
授業中ではあったが、先生に保健室に行かせてほしい旨を言い、重くなった身体でなんとか保健室まで歩く。
保健室にたどり着くと、先生はいない。
「(まあ、ええか…)」
なんとかベッドまでたどり着くと、そこに横になった。はあ、と息をつくと、急に眠気が襲ってくる。ーそこから、眠りにつくのは早かった。
ーー額が、ヒヤリとする。
気持ちええ、な。
額の気持ち良さに、閉じていた目をうっすら開けると、目の前に彼女が見えた。
驚いて身体を少し起こすと、額から薄い桜色のハンカチが布団の上に落ちた。
「苗字…さん…?」
「あ…起こしてしまってすみません」
「なんでここにおるん…?夢ちゃうよな」
「あの、今は放課後なんですけど」
「放課後……放課後⁈…やってもうた…俺ずっと寝てたんやな」
ふと、布団の上に落ちたハンカチが目に入った。
「この額にあててくれてたハンカチ、苗字さんのか?」
「はい。熱で寝苦しそうだったので…。冷えピタとか探したんですけど場所が分からなくて。先生も出張でいないみたいだし…。」
「そうか…。もしかして…ずっとハンカチ替えてくれてたん?」
「勝手にごめんなさい」
「いや、おかげで大分楽になったわ。ありがとうな、苗字さん」
そう言うと、彼女は安心したように微笑んで。
その顔を見たら、もう、後戻りはできんって思った。
「でも、苗字さんは大丈夫か?」
「え?」
「保健室来とるから。どこか具合悪いんかと思て」
そう尋ねると、彼女は少し俯きがちに首をふる。
ーー具合が悪いわけじゃない。なら別の理由だろう。それ以上は訊ねなかった。
「………」
「………」
会話がやまって、静けさが残る。
「ーー苗字さん、一緒に帰ろか?俺、送って行くわ」
「えっ」
「それとも、迷惑?」
彼女は驚いた顔で俺を見ると、首を横に振る。
「っ、そんな事ないです…ありがとうございます」
「ほな、ちょっと待っててくれるか。鞄取ってくるわ」
軋むベッドから降りると、もう頭痛などもない。
保健室の扉に手をかけると、後ろから彼女が俺を呼ぶ。
振り向けば、俯いて一生懸命に言葉をしぼりだしているようだった。
「先輩、…何も聞かないでくれて、ありがとうございます…」
「…ああ。ー…やけど、もし言いたくなったら、溜め込む前に言うんやで。俺でよかったら話聞くからな」
「…っ、はい」
正直、気にならんと言えば嘘や。
でも、彼女の気持ちの整理ができるまでは、何も聞かないと決めた。
俺が側でおってええなら、なんぼでも側におるから。