マイクロノベル

1:15am · 12 Jul 2019

2019/07/13 18:24
あの時見た彼女は壁に沿って歩きながらうわ言のように蟹…と呟いていた。その顔があまりにも鬼気迫っていたので声をかけることができなかったのだけれど、次の日学校で会った彼女にそんな雰囲気は欠片もなくただ普通。「おいしいクレープ屋さん見つけたんだけどさ」なんて言ってきて、「マジ? 行きたいね」って返す。普通だ。私と彼女のいつもの空気。「昨日B8地区にいた?」「いたけど」「…見なかった?」「何を」「蟹」ぞわり。私は思わずごめんちょっとトイレと言って廊下に出たけど廊下には「蟹…」「見つけた」笑顔で蟹の大群に駆け込んだ彼女の体が小さくなり、変化して、「蟹…」
ふらふらと家に帰ると今日のご飯は蟹チャーハンで、「蟹…」チャーハンはとてもおいしかった。

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