マイクロノベル
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2024/11/14 20:35
20241114(木)20:36「流暢に喋るということができなくなってきている、Xでの喋り方を忘れてしまいました、でもXだけじゃない、喋り方そのものを忘れているから何の問題もありません」と言った█は元気にしているかな。【蟹】きょうはうみにいって、ざりがにをみました
20241112(火)20:41「きょうはうみにいって、ざりがにをみました」
「君それはざりがにじゃなくてロブスターじゃないか?」
「そうかも」
「そうだろうね」
「ろぶすたーはおいしいの?」
「美味しいよ、食べるかい」
「たべるー」
「茹でて差し上げよう」
「キャッキャ」
そしてぼくと蟹はろぶすたーをおいしくたべましたとさ。
おわり。【蟹】新・お誕生日は終わりゆく
20241026(土)17:58「お誕生日は終わりゆく」
「そうだね。いい一日だった?」
「どっちでもないかな、日常だった」
「そんなこと言って、非日常を楽しんだんじゃない?」
「秘密」
「君にも僕に言わない秘密ができたんだねえ」
「……」
「大丈夫さ」
絶望が和らいでも、蟹は消えない。【蟹】教師の噂
20241015(火)18:31「あの教師は蟹が無くならなかったことを気に病んでいるらしい」
「そりゃまた、どうして」
「蟹は多くの人を惑わす。それが無くならなかったのは、蟹ハンターを辞めてしまった自分のせいだと」
「勝手な思い込みだね。僕たちは人を惑わすけれど、だからってハントされるのはお門違いさ」
「人を惑わすとこは否定しないのか……」
「しないよ。怪異そのものだからね。危険じゃないか? できるだけ近づかない方がいい」
「そんな蟹に選ばれた俺たち人間のことも考えてくれよ」
「運が良かった、としか言いようがないね。そのままにしておくと死んでしまっていただろうから」
「恩着せがましい~!」
「事実なんだから仕方ないだろ?」
「はー……」
そんな蟹のことを好いてしまっている俺も俺だが。
蟹ハンター不足を嘆いた教師の噂。カニを たから?
20241015(火)15:51昔の人の文章。
『カニを食べるのは面倒だから嫌という人もいるが私はカニが鬼ほど好きなのでそのような手間は厭わない。完璧に食べきって見せるぜ』
「……皆さん、そんなカニも絶滅して久しくなりました。先生は昔の人だからカニを食べたことがありますが、皆さんは無いでしょう。カニはいいですよ、脳がおかしくなるような美味を味わうことができまして、それで、カニ、カニ、カニ……」
……先生は捕まり、収容センターに入れられた。
そういうことがあるからカニは絶滅したのかな、と別の先生に訊くと、ヒトのエゴとなんでも結びつけるのはよくないですよ、カニが絶滅したのは████のせいですからと答えてくれた。
そうだよね。
僕たちのせいだなんて、あるわけがないから。
おわり。
LTLがないとき
20241012(土)14:23「静まり返っちゃった」
「何が?」
「TLが」
「そういうときのためのローカルTL」
「Xにはないでしょ」
「そうだった」
「誰もいない、何して遊べばいいんだろう」
「それはね……」
「え何不穏」
「僕と君、二人で永遠に遊びましょう。日が昇るまで」
「え……」
「どうです」
「エモいから採用!」
「やったー!」
そうして二人は日が昇るまでポテチを食べたりラーメンを啜ったり、ゲームをしたりしながら楽しく遊びましたとさ。
めでたし、めでたし。【蟹】蟹ですから
20240905(木)15:28「解放された気分だよ」
「何から?」
「この世全てのしがらみから」
「すぐそういうこと言う。まあ解放したのは僕だけど」
「蟹だなあ」
「蟹ですから」【蟹】夢を追うなら
20240729(月)20:25いつも夢を追って生きてきた。
夢の先がどうなるかなんて、考えたこともなかった。
夢が追えなくなったとき、それは██の██だった。
こういうときは泣けないものだと聞いていたが、私は泣いた。
『劣勢の蟹』。
人生が劣勢になったときに助けてくれる。
そういったものがあると聞き、私は探すことにした。
四方八方探したが、蟹はいない。
いつしか、蟹を探し出すことこそが私の夢になっていた。
薄々感じていた。蟹などいないと。
「ほんとにそう思った?」
ば、と振り向くと、そこには――
―――。【蟹】七夕のあくる日
20240708(月)18:16「蟹」
「うん?」
「昨日、商店街のとこ、七夕の短冊あったろ」
「あったね」
「あれ、何書いた?」
「えっ」
「お前も書いてただろ?」
「君は何書いたんだったっけ」
「おい忘れたのか。〝この生活がずっと続きますように〟だよ」
「あら~いじらしい」
「…………」
そういえば、蟹にはあの短冊、見せていなかったような。
「蟹ぃ……謀ったな!」
「謀ってませ~ん。ちなみに僕は〝相方が元気でいられますように〟だよ」
「なんだその優等生な回答は」
「蟹としては普通じゃない?」
「そうかな」
「そうだよ」
「そうかあ……」
俺はため息を吐き、空を見上げた。
「短冊、もう片付けられたんだろうか」
「だろうね」
「そうかあ……」
見上げた先には青空が広がっていた。忘れ物
20240706(土)17:43『近頃忘れ物が多い。席を立つだけで何もかもを忘れてしまう。脳がどうとかいうドラマがあったがおそらくこれはそんな大したものではなく、寝不足からくるものであろう』
『と思っていた。』
『忘れ物の範囲は広がっていった。それは私の家族にも及んだ』
『何かを忘れ去るウィルス、のようなもの』
『それに私はかかってしまったらしい。』
『ウィルスは猛威をふるい、社会全体が何かを忘れた。』
『忘れたかったものが何かは知らない』
『何かを忘れたのだ。』
『白い空間で、よかったね、と声が聞こえた』
『それで全部おしまいだった。』
〔おわり〕