マイクロノベル

記事一覧

  • ある日

    20210504(火)08:50
    「ねー、ある日っていつの日かなあ」
    「ある日はある日だよ」
     ■の曖昧な答えに僕は首を傾げる。
    「でもそれがいつ来るか教えてもらえないと準備できないじゃないか」
    「いつ来るかわからないから『ある日』なんだよ」
    「そんなのおかしいよ」
    「どうして」
    「いつ来るかわからないなら知ってても意味ないじゃん」
     風が吹く。
     ■が消える。
    『意味はあったさ』
     既に過去なのだから。
     そうだね、と僕。
     本当はわかっている、全てが終わったこと。
     けれど繰り返す、あの日までの全てを。
     何一つ変えられないと知っているけど。
  • 手帳

    20201226(土)19:01
     山がある、ただある。俺はそれを漫然と眺めて、漫然と、ではいけない、思い直して手帳を開く。手帳はぐちゃぐちゃのまま役に立たない。文字を書いても写らない。俺は新しい手帳を出す、手帳はぐちゃぐちゃのまま役に立たない――
  • 数列

    20201226(土)18:58
     わからないものを埋めたままわからないでいる。
     それさえもわからぬままわからないでいる。
     目の前で掘り出すのを他人事のように見、終わったことだと解釈したそれを数列にした。
  • 潜行する

    20201226(土)18:55
     潜行する。それはいない。どこへ行ったのか問うても知らない、俺しかそれのことを知らない。
     潜行する。それはいない。何だったのかもわからない。
     わからなくなったそれを探して潜行して、潜行して、海の底で1バイトに圧縮されたそれを、
     待っている。
  • 暗いもの

    20201226(土)18:55
    「暗いもの、暗いもの」
     呼んでいる、呼んでいる。誰を? って俺を。
     「それ」は本当に俺なのか? それ、が本当に俺なのか?
     わからないまま呼ばれて出ていく、呼ばれているのは「俺」だから。
  • 無念の巻物

    20201217(木)00:02
    救われずに埋もれていった無念の作品たち…それが合わさり世は大戦国時代となった。
    絵巻物から虎が出る、龍が出る。
    そこの兄さん寄ってきな、作品避けの魔鈴だよ。いらない? まあまあそう言わず、無念は気を汚す、まけとくからまあ一つ、そうそうそうでなくちゃ、似合ってるよ、行ってらっしゃい!
  • 闇の創作者

    20201206(日)20:41
    「うーんうーん、闇の創作者………はっ! もう夜か……」「やあ」「わあ!?」「蟹だよ」「なんだ蟹か、びっくりさせないでくれよ」「部屋に蟹がいたことについてはびっくりしないんだね」「そりゃ俺は『選ばれる』ってわかってたからな」「絶望の中でも自信を失わない人間は嫌いじゃないけど」「けど?」「よくわからないね」「何が?」「こっちの話さ」
  • チョコモグ

    20201205(土)22:58
    「チョコモグチョコモグ」
    「やめろ蟹! 虫歯になるぞ!」
    「蟹なので虫歯にはなりませんモグモグ」
    「太るぞ!」
    「蟹なので太りはしませんモグモグ」
    「体に悪いぞ!」
    「蟹なのでオールオッケーモグモグ」
    「それ俺のチョコだよな?」
    「……モグ……」
    「なあ?」
    「細かいことは気にしないモグモグ」
    「蟹ーっ!」
    「モグモグ」
  • 10:46pm · 23 Oct 2020

    20201023(金)22:47
    「蟹~どこだ」「蝶を探しているのですか?」「いや、俺は蟹を」「蝶を探しているのですか?」「蝶は探してない」「蝶を」「探してるのはあんただろ」「……」「見つからないのか」「蝶が、」「ちょっとだけなら付き合ってやってもいいぞ」「……ありがとうございます」
  • 天使の蟹

    20201004(日)22:04
    「天使がいる!」「天使ってあそこの蟹か?」「そう!」「普通の蟹にしか見えないがそれは俺が人間だからか」「羽生えてるでしょ!」「うん?」どこに? と思いながら見ていたらチキキ、という音とともにその蟹が羽を広げた。「うわ」「天使だ」「天使なのか?」「そういう役割なんだよ」「ああ…」