マイクロノベル
【蟹】ボードゲーム
2024/06/30 15:58「今日も雨~? 雨でできる遊びなんて限られてるよ」
「室内でできる遊びってことか」
「そう!」
蟹はハサミをぴしっと上に上げた。
「ということで、今日は室内遊びを極めよう!」
「え~面倒臭い」
「くっ……そう言われてしまっちゃ仕方ないね」
空中から大きめの箱を出す蟹。
「黒と白! 聞いて驚け見て笑え、」
「オセロか」
「最後まで言わせてよお~」
オセロにはいい思い出が無い。そもそも俺は負けるのが嫌いで、オセロで勝ったことが数えるほどしかない。
「オセロは嫌いだ」
「まま、そんなこと言わずに」
「接待プレイならいらないぞ」
「んん~……わかった」
蟹はオセロを空中にしまう。
「君、もしかして勝ち負けのあるボードゲーム系が苦手かい」
「ああ」
「あ~やっぱりね……だから乗り気じゃなかったのか」
窓の外では雨が降っている。
「きっと嫌な思い出があるんだろうね」
「……わかるのか」
「蟹ですから?」
ドヤ、とつきそうな姿勢をとる蟹。
「絵でも描いて過ごそうよ」
「ああ、そうだな」
俺はほっと胸を撫で下ろした。
◆
蟹にはほんとは君の思考が読めちゃう、なんて言ったら君は泣いたり怒ったりするだろう?
だから今日は黙っている。
今日も、その次の日も、ずっと黙っている。
僕たちが生を終えるまで。
「室内でできる遊びってことか」
「そう!」
蟹はハサミをぴしっと上に上げた。
「ということで、今日は室内遊びを極めよう!」
「え~面倒臭い」
「くっ……そう言われてしまっちゃ仕方ないね」
空中から大きめの箱を出す蟹。
「黒と白! 聞いて驚け見て笑え、」
「オセロか」
「最後まで言わせてよお~」
オセロにはいい思い出が無い。そもそも俺は負けるのが嫌いで、オセロで勝ったことが数えるほどしかない。
「オセロは嫌いだ」
「まま、そんなこと言わずに」
「接待プレイならいらないぞ」
「んん~……わかった」
蟹はオセロを空中にしまう。
「君、もしかして勝ち負けのあるボードゲーム系が苦手かい」
「ああ」
「あ~やっぱりね……だから乗り気じゃなかったのか」
窓の外では雨が降っている。
「きっと嫌な思い出があるんだろうね」
「……わかるのか」
「蟹ですから?」
ドヤ、とつきそうな姿勢をとる蟹。
「絵でも描いて過ごそうよ」
「ああ、そうだな」
俺はほっと胸を撫で下ろした。
◆
蟹にはほんとは君の思考が読めちゃう、なんて言ったら君は泣いたり怒ったりするだろう?
だから今日は黙っている。
今日も、その次の日も、ずっと黙っている。
僕たちが生を終えるまで。