マイクロノベル

【蟹】じめじめ梅雨

2024/06/23 14:59
「蟹~!」
「な~に」
「雨続きで洗濯物が干せないよお」
「そんなときは!」
 蟹がハサミをちょきんちょきんとする。
「うお、洗濯物が乾いた!」
 なぜだ!? 明らか合理的じゃないんだが! つっても蟹の存在自体が合理的じゃないからアレか、アレ……
「そう、湿気という概念を切ったのさ」
「すごい、何でも切れるのか」
「こんにゃくも切れるよ」
「へえ……?」
「えっへん」
 なぜか胸を張る蟹に、俺は首を傾げる。
「いっつも切ってないか? こんにゃく。特筆すべきことじゃないよな」
「まあ、世代ってやつだね」
「蟹に世代が?」
「あるよ~。世界に出てきた世代がね。必要事項は蟹クラウドで共有できるとはいえ、好きなネタは蟹によって違うし」
 俺は洗濯物を畳みながら思う、蟹とネタを並べられるとお寿司みたいになるからやめて欲しい。
「実際に体験したことと、クラウドで頭に入れられていることとは違うんだよ」
「へえ……」
 やっぱり蟹には謎が多い。

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