概念サバンナの今日たち

 うさぎが跳ねる。
 頭の中で。
 それは過去。終わってしまったものの話。
 うさぎは死んだ、死んで、いなくなった。



 俺はうさぎと向き合えなかった、俺はうさぎのことを忘れる。
 ジャミングの雪がうさぎを覆い隠し、日常が帰ってきて丸まって眠る……いくら目を逸らしても穴は空いたまま、うさぎは死んだまま。
 ぴょんぴょん跳ねていたうさぎは薄れて色褪せる。
 にんじんのオレンジ、うさぎの灰色。それにもはや命はなく、ただのイコン、ただのスライド。薄れてゆくのだ、許されるかどうかはともかくとして。
 夢の中、うさぎは既に終わった話。
 狭間ですらそれが生き返ることはない。死んだ者、過ぎた過去、終わった話。
 決然としてそれはある、変えようもなくそれはある。
 夢を見ていた、褪せる夢。
 過去だった。
 過去になった。



 部屋の黒いぷよぷよたちはまだ揺れていて、俺はぼうっとそれを見る。
 このものたちに害はない。このものたちに他意はない。
 そんなものたちが存在しているということは俺にとって、ある種の■■で■■だった。
 それすら過去では許されなかった、死せしものは現実を変える、
 お前は生きても良いのだと。
12/13ページ
スキ