たぬきかきつねのロンサムサバイブ

「こんなところにいたんですか、たぬきくん」
 振り返ると、見慣れた金髪緑目の青年。
「きつねか、今この子供を……」
「行きますよ」
「どこに?」
「村は壊滅です。これ以上ここにいても得る物はないでしょう」
「えっでも」
「お兄ちゃん?」
「生き残りだ。死んだ母親に花を捧げたいって言うんだ、それに付き合おうと思って」
「お馬鹿さんですね、そんなことしても意味ないですよ」
「おい」
「なんです?」
 俺はきつねに近付き、顔を寄せた。
「この子の前でそういうことを言うのはやめろ、この子は……」
 その拍子に、きつねに身体が触れた。
「おに……■■■」
 子供の声が歪み、消える。
「どうした!?」
 振り返った俺の目に映ったものは、
「なんだ、これ……」
 一つ目の、白い機械のようなもの。
 縦長の楕円形、下半身からアームのようなものが四本生えていて、直立している。
「■■■……■」
 聞き取れない音で唸ると、機械はすうと消えた。
「え……」
 何だ? あの子はどこに行った?
「『化かされてた』んですねぇ」
「……どういうことだ」
「さっきのやつが幼獣に化けてたんですよ。端的に言うと、君は化かされたんです」
「機械がたぬきを化かすのか?」
「獣を化かすでしょう、機械は。たぬきもきつねも迷彩赤外線カメラを仕掛けられて動物番組にされたりとかざらじゃないですか」
「えーとつまり……たぬきの子供はいなかったのか?」
「……そうですよ」
「……」
 俺は黙った。ちょっと気持ちの整理がつかない。子供はいなかった? 俺は化かされた? 誰に? 何の目的で?
「知りませんよ、そんなこと」
「きつねでも……わからないか」
「そりゃあ僕もただの生物ですからね。神様でもないんですから何でもは知りませんよ」
 この村に母親が死んだたぬきの子供なんて最初からいなかったってことか?最初からあれは機械だった、じゃあ俺のしたことは何だったんだ、きつねに……
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