短編小説(2庫目)

 いいことがありました。
 とてもいいことが。

 それはとてもいいお話でした。落ち込んで腐ってしまった私を真っ直ぐにしてくれるようなお話でした。

 その人は私を叱ってくれました。
 このままではいけない、■■■■■■どうするつもりだ。心を入れ替えろ、明日から真人間として生きていけ。

 とてもためになるお話でした。
 そう思いました。



 それはとてもいいお話でした。昔のことが忘れられなくて囚われてしまった私の心を洗ってくれるようなお話でした。

 その人は私を元気づけてくれました。
 罪を次の人生にまで持ち越すのは愚か者のすることだ。自分の人生に責任を持て、■■だ■■のぶんまで■■に生きろ。忘れなさい、忘れなさい。

 とてもためになるお話でした。
 そう思いました。



 それはとてもいいお話でした。■■、■■■■。

 その人は■■。
 ねえもう疲れたでしょう。■■■のを辞めてもいいんだよ。君は充分頑張った。お疲れさま。ここらで少し休みましょう。さあ、■■を■■■、家に帰ろう。
 家に。

 私は、それはよくない、と思いました。
 けれども抗えませんでした。
 そう思いました。



 何もかもがなくなって、真っ黒になった世界で私は思いました。
 最初から何もしなければこんなことにはならなかったのに。
 後悔。
 と、
 だけどどうしようもなかった。生まれた時点で積んでいた。
 こうなるしかなかった。こうするしかなかった。
 諦め。

 いい話でした。いいことでした。全て私のためでした。優しい人でした。

 今日は四月一日だから、全て嘘でくるんでしまえば幸せに生きられるから。
 だから私は明日も笑顔でいます。

 いい話でした。
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