短編小説

 ひどく疲れています。どうして生きているんだろう、と思ってしまいます。
 何をしていても疲れるのです。起きているだけで疲れるのです。一生部屋に閉じこもって好きなこと、例えばゲームだけしていられたらいいのに。でも、ゲームだけしていては餓え死にしてしまいます。
 努力をしなければ。
 周囲に馴染もう、外で遊ぼう、計画的な人間になろう。これまでたくさん努力をしてきました。友達を作ろう、休日は出掛けよう、仕事はすぐに片付けよう。やってもやってもうまくいかず、ただ苦しさが増すばかり。
 心の中ではもう諦めています。だけど努力がやめられない。体が努力を拒否します。だけど頭が許してくれない。きっと無駄だとわかっているのに、さんざんやって駄目だったのに、ポーズだけの努力がやめられない。
 ポーズだけの努力は無行動と一緒です。努力ができない人間。努力を信じられない人間。
 疲れている。心も体も疲れきっている。
 生きているだけで疲弊していくのです。空回りして疲弊していくのです。未来に希望が持てないのに、どうして明日に向かえましょうか。
 窓から鬱陶しく差し込んでくる月の光は嫌に明るく、田舎の闇夜には眩しすぎます。
 太陽でさえ嫌なのに、月までもが私を照らすのです。
 努力ができない駄目な人間がここにいるよと世界に指し示すのです。
 布団を被っても感じる月明かりに目を閉じて、羊の数を数えて、瞼の裏から消えてくれない月明かりに脳をぼやかして、今日やったゲームのことだけ考えて。
 日が差す頃、切れた電球のように意識が落ちるのです。
 月が私を見ています。
 逃れることは許さないと光を射し続けます。
 雨戸を閉めてしまったらきっと一生開けられないから、開けたままで布団を被り。
 そして今日も、羊の数を数えます。


(おわり)
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