短編小説(2庫目)

 もうどこにもいないなら探しても無駄なんじゃないだろうか。
 そう思って探すのをやめてから何年経っただろうか。

 何を探すのも飽きてしまった。
 探しても探してもないのだから、飽きるのも仕方がない。
 ■もない。■■もない。あれもこれもない。ないものだらけ。
 探すだけ無駄だ。諦めた方が早い。
 わかっているのに、俺は困っている。
 それらがないせいで困っている。

 困っているなら探すべきなのだが、探しても見つからない。だから諦めている。
 いつから探すのをやめたんだったか。
 確か……

 そんなことはどうでもいい。
 問題はあれらがないせいで困っているということ。
 今さら新しく手に入れるのも無理な話だし、俺はどうすれば困らずに生きていけるのだろうな?

 どうもこうもない。ないものがないということで困らずに生きていけるんならここまで必死に探さなかった。
 ないものがないのは困る、なければ何もできない。「劣っている」だけならいい、比較して暗い気持ちになるのはつらいが、なくても生活できるなら我慢できる。
 俺が困っているのは、そもそもなければ始まらないものが多いということだ。
 では本当に「なければ始まらない」のだろうか。
 確かめるまでもない。
 これまでの人生で散々思い知ったじゃないか。
 ないものはない。だから困っている。見つからないから解決できない、探す気力もない、じゃあどうするか?
 どうするかって?

 窓から光がさす。
 こんな夜中なのに光がさすということがどういうことなのかは知っている。
 UFOが来たのだろう。

 窓を開けるとやっぱりUFOが来ていた。こちらに強い光が向いて、俺の身体が浮き上がる。

 さよなら。
 さよなら。
 失くし者は見つからなかった。
 だから、これで終わり。
 さよなら。
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