たぬきかきつねのロンサムサバイブ

 海。
 目の前には大きな船。
『ヒトを載せる役目を終え、沈まされた船ですねぇ』
 それを見て「死ぬのが怖く」なったきつね。
 そう、あいつは死ぬのが怖いのだ。
 代替わりしたらあいつは消えてしまう。消えてしまったらどこへ行くのか。
 どこへも行かない、消えるのだ。
 それがきっと怖いのだ。
 それで、俺にあんなことを言ったのだ。
「……」
 代替わりを呑んでも、拒否しても、あいつは消えてしまうのだ。
 俺はどうしたいのか、それを考えなければいけないのだった。
 呑むか、拒否するか。
 景色が切り替わる。



 白の街はついさっきまでいた場所なのに、随分前のことのようだ。
 きつねはいったいどんな気持ちでこの街を歩いていたのだろうか。
 死ぬのが怖いという気持ちを押し殺しながら歩いていたのだろうか。
 呑むか、拒否するか、本当にその二択しかないのだろうか。
 景色が切り替わる。
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