短編小説(2庫目)

 今日は復讐を積む。
 そんなものを積んだって誰も幸せになどならないと知っていながら復讐を積む。
 少し前に積むのをやめた塔のパーツはどれも風化し濁っている。そんな中、「復讐」のパーツだけが新鮮な黒で、それだけが新しいのだということがわかる。
 だからどうというわけでもない。
 生活の中に復讐が現れたって俺が勇者じゃなくなるわけじゃないし、復讐を胸に生きる勇者だってどこかの物語の中にはいるはずだし、いいんだと思う。
 俺の役目は今のところこの塔を積むことだけで、そろそろ次の世界に行かなきゃいけないとわかったところで塔はなくならないし、風化はしたままだし、未完成の塔を残したままここを離れてしまうことは、心残りってほどじゃないが抵抗がある。
 変化を嫌っているだけなのかもしれないが。

 「復讐」の塔が完成したら、今度こそ俺はここを離れることができるかもしれない。
 ぎらぎらと光る真っ黒なパーツで構成された、塔。
 それが完成したとき、俺は何を感じるのだろう。
 達成感だろうか、満足感だろうか。
 あるいは、後悔だろうか。
 わからないから積み続ける。これまでと全く同じように。
 積んで、積んで、それが天に達したら。
 取っておいたジャーキーでパーティーでもしよう。
 それで終わり。
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