短編小説(2庫目)

「8月……今年も行ってしまうのか」
「ああ、行くぜ。行かなきゃ9月が来られないからな」
「8月……せっかくまた会えたのに、俺……」
「まあまあ。夏らしいことしたろ。一緒にスイカ食べたりアイス食べたり」
「でも…」
「まあ落ち着け。あと3日もあるの忘れたか? 終わるまで楽しもうぜ、ゆっくりとな」



 9月2日――

 倒れているうちに8月が去ってしまって、起きると俺は9月に介抱されていた。
「君ねえ……何? 8月くんが行っちゃうの倒れちゃうほど悲しかったの?」
「悲しかったさ……8月、あいつどんな顔して行ってしまったんだろうな……」
「うーん僕と8月くんは現世に同時存在できないからなあ……。また僕が帰ったときに聞いとこうか?」
「それ来年8月に直接聞いた方が早くないか?」
「いやでもそれ君すごい気まずくない?」
「確かに」
「来年はちゃんと見送れたらいいね……って言っても悲しくて倒れちゃうんなら無理かあ……」
「うう……9月……俺ってなんでこんなんなんだろうな……」
「ちょ、ちょっと、しっかりしてよ俺くん……よーしじゃあ栄養つけさせるために秋の味覚いっぱい食べさせちゃうぞ~」
「うわやめっカロリーもご……」
「おいしいでしょ」
「おいしい……」
「待っ、泣かないでよ~……いや泣いてもいいよ、泣きたまえよいっぱいね……それでおいしいものいっぱい食べたまえよね……」
「9月~~~!!!!!!」
「僕が行くときに倒れないでよ?」
「倒れないよ!」
「ふふん、じゃあ期待してるからねっ」
「ああ!」
 また来年。
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