短編小説(2庫目)
睡眠時間が一定値を超えると夢と現実の境が曖昧になる。
昔出会った詩人が言っていたことを、この身で体験する日が来るとは思わなかった。
睡眠時間はXX時間。起きるとぼんやり、外を走って空を飛んでいたような気がした。
もはや夕食になってしまった朝食を食べながらまたぼんやり。空を魚が飛んでいたから。
こんな携帯食料よりももっといい食事があるはず。昨日食べたコノミリシイパが入ったミラネヌオリチはおいしかった。
友人と呑んでいたんだっけ、マスクを忘れてどうしたらいいのかわからなくなっていたら目の前にマスクが現れたから。
何が本当で何が夢なのか、しかし全てが確からしい気がするんだ。
どうなっているのかはわからない。ただ睡眠時間が増えただけで。
コノミリシイパを取りにいかなければならない。庭に生えていたっけ。あれは冒険しなければ手に入らないものじゃなかったか。
けれども起きてしまえば何もかもが水の中にいるかのように濁って、手を上げるのすら面倒になる。
起きているか寝ているかの区別をつけるとしたら、今その行動をするのが面倒で嫌か、軽くひょいっとできるかの違いだ。面倒で嫌だったら起きている。軽くひょいっとできるならそれは夢だ。
人間の身体は重い。重くて重くて嫌になる。
もう一眠りした方が良いのだろうか。いや、もう眠るのはうんざりだ。眠って眠って、何も楽しくなどないのに眠くて、起きられなくて、随分経って、夕方。
起きてる時間の方が圧倒的に短いんだ。だけど夢が現実みたいだから、別に今日何もしなかったとかそういう気持ちにはならない。いやなる。まやかしだ。まやかしが俺を靄の中に閉じ込めている。
今日も充実した一日だったという靄の中に。
今日の夜も冒険に出る。何の冒険だかわからないけど。
宣言が出ているのに祭典は起こるし、宣言が出ているのに■は街に出るし、宣言が出ているのに俺は夜冒険に出る。大量発生しているミイレハイカイを討伐しなければならないから。
何もかもがうんざりならこれもうんざりだしあれもうんざりだし、それを忘れられる夢うつつが一番幸せなんじゃないのか? ともう一人の俺が言うけれど、俺はそんなのは嫌だし、現実に生きていたいし、起きていたいんだ。
もう一人の俺は違うみたいだけど。
もしかして、分裂してるからこんなに寝てしまうのだろうか。もう一人の俺は完全に絶望していて、眠りにこそ真実があるとでも思っていて、だから俺は……
馬鹿らしい。そんなことがあってたまるか。
そんなことより今日はもう食べ物がなくなる日なんだ。買い物に行かなければ。近くのコンビニでいいだろ。
そうして携帯食料を買ってきて食べる。あまりおいしくはないが、仕方がない。
食べたらぼうっとしながら色々考えて、風呂に入って歯を磨いて寝る。そこまではとても短い。
だけど起きてる時間の方が楽しいんだ。そうだよ。楽しいに決まってるだろ。何事も起こらない平穏な日常こそが人間を最も幸福にする薬なんだ。
外は■■■なことになってるけど。
そんなことはどうでもいい。
さっき行ったコンビニでは■■■がうろうろと歩き回っていて、入り口にいる■■■に気付かれないようにそうっと通り過ぎなければならなかったけれど。
何を言っている? そんなことがあるはずがない。全部妄想だ。俺の夢だ。
けれど、もう区別がつかないんだ。テレビの横に足が生えていても、空を魚が跳んでいても、ミイレハイカイが大量発生していても、■■■が周囲をうろついていても、全て同じ、同じことだ。同じ「■」という名の一つの事象として俺を取り巻いていて、俺はぼんやりとそれを見て、食べて、寝るだけ。
どうなっているかなんてわからない。どうだっていいんだそんなことは。
そう思うことで自分を保っているんだ。
だから今日も同じ、何も写さなくなった画面の前でぼんやりする。 足は枯れていなくなった。
それで終わり。
昔出会った詩人が言っていたことを、この身で体験する日が来るとは思わなかった。
睡眠時間はXX時間。起きるとぼんやり、外を走って空を飛んでいたような気がした。
もはや夕食になってしまった朝食を食べながらまたぼんやり。空を魚が飛んでいたから。
こんな携帯食料よりももっといい食事があるはず。昨日食べたコノミリシイパが入ったミラネヌオリチはおいしかった。
友人と呑んでいたんだっけ、マスクを忘れてどうしたらいいのかわからなくなっていたら目の前にマスクが現れたから。
何が本当で何が夢なのか、しかし全てが確からしい気がするんだ。
どうなっているのかはわからない。ただ睡眠時間が増えただけで。
コノミリシイパを取りにいかなければならない。庭に生えていたっけ。あれは冒険しなければ手に入らないものじゃなかったか。
けれども起きてしまえば何もかもが水の中にいるかのように濁って、手を上げるのすら面倒になる。
起きているか寝ているかの区別をつけるとしたら、今その行動をするのが面倒で嫌か、軽くひょいっとできるかの違いだ。面倒で嫌だったら起きている。軽くひょいっとできるならそれは夢だ。
人間の身体は重い。重くて重くて嫌になる。
もう一眠りした方が良いのだろうか。いや、もう眠るのはうんざりだ。眠って眠って、何も楽しくなどないのに眠くて、起きられなくて、随分経って、夕方。
起きてる時間の方が圧倒的に短いんだ。だけど夢が現実みたいだから、別に今日何もしなかったとかそういう気持ちにはならない。いやなる。まやかしだ。まやかしが俺を靄の中に閉じ込めている。
今日も充実した一日だったという靄の中に。
今日の夜も冒険に出る。何の冒険だかわからないけど。
宣言が出ているのに祭典は起こるし、宣言が出ているのに■は街に出るし、宣言が出ているのに俺は夜冒険に出る。大量発生しているミイレハイカイを討伐しなければならないから。
何もかもがうんざりならこれもうんざりだしあれもうんざりだし、それを忘れられる夢うつつが一番幸せなんじゃないのか? ともう一人の俺が言うけれど、俺はそんなのは嫌だし、現実に生きていたいし、起きていたいんだ。
もう一人の俺は違うみたいだけど。
もしかして、分裂してるからこんなに寝てしまうのだろうか。もう一人の俺は完全に絶望していて、眠りにこそ真実があるとでも思っていて、だから俺は……
馬鹿らしい。そんなことがあってたまるか。
そんなことより今日はもう食べ物がなくなる日なんだ。買い物に行かなければ。近くのコンビニでいいだろ。
そうして携帯食料を買ってきて食べる。あまりおいしくはないが、仕方がない。
食べたらぼうっとしながら色々考えて、風呂に入って歯を磨いて寝る。そこまではとても短い。
だけど起きてる時間の方が楽しいんだ。そうだよ。楽しいに決まってるだろ。何事も起こらない平穏な日常こそが人間を最も幸福にする薬なんだ。
外は■■■なことになってるけど。
そんなことはどうでもいい。
さっき行ったコンビニでは■■■がうろうろと歩き回っていて、入り口にいる■■■に気付かれないようにそうっと通り過ぎなければならなかったけれど。
何を言っている? そんなことがあるはずがない。全部妄想だ。俺の夢だ。
けれど、もう区別がつかないんだ。テレビの横に足が生えていても、空を魚が跳んでいても、ミイレハイカイが大量発生していても、■■■が周囲をうろついていても、全て同じ、同じことだ。同じ「■」という名の一つの事象として俺を取り巻いていて、俺はぼんやりとそれを見て、食べて、寝るだけ。
どうなっているかなんてわからない。どうだっていいんだそんなことは。
そう思うことで自分を保っているんだ。
だから今日も同じ、何も写さなくなった画面の前でぼんやりする。 足は枯れていなくなった。
それで終わり。
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