短編小説(2庫目)
森の中を走っていた。
そう、あのときはまだ。
抜けられたのかどうかは知らない。さらに深い霧の中。何一つ見えることはない。
あの森はどうしたか。
ここがそうなのか。
知らない、わからない、問題はあの時の俺が森を走っていたということ、今の俺が霧の中にいるということ。
森を走っている間に勇者は消えてしまった。
だからボランティアでそれをやっている。俺が。
報酬はない。知名度も名誉も。
誰もそれを知らない。勝手にやっている。
魔王はいる、いはするのだが、本当に倒さなければいけないのかどうかはわからない。
そもそも勇者そのものが見捨てられた職業ではあるのだ。
邪魔者、しかし世界のパーツとして必要ではあるもの。
皆扱いに困っている。捨てたがっている。
そんなものをなぜボランティアでやっているのか。
なぜだろうな。
救いたかったのかもしれない。
世界を。
いや、魔王をか?
親しかったことはない。そもそも面識すらない。
最近では動きもないようで。
俺も昔は村に住んでいた、村にいたころの俺は……魔王の子、と呼ばれていた。忌み子だと。
真実そうなら俺の親族は魔王というわけで、もしそうならやっぱり会いにいきたいじゃないか。
ならば俺が救いたいのは魔王ではなく、俺自身の孤独であるのか。
わからない。
それでもいい。
霧の中を歩き続ける目的が欲しいだけ。
「希望」が欲しいだけ。
ここをずっと歩いて歩き続けた先で魔王、同胞に会えるなら。
歩き続けるのも悪くはないなと思うのだ。
そうして今日も、霧の中を歩いている。
そう、あのときはまだ。
抜けられたのかどうかは知らない。さらに深い霧の中。何一つ見えることはない。
あの森はどうしたか。
ここがそうなのか。
知らない、わからない、問題はあの時の俺が森を走っていたということ、今の俺が霧の中にいるということ。
森を走っている間に勇者は消えてしまった。
だからボランティアでそれをやっている。俺が。
報酬はない。知名度も名誉も。
誰もそれを知らない。勝手にやっている。
魔王はいる、いはするのだが、本当に倒さなければいけないのかどうかはわからない。
そもそも勇者そのものが見捨てられた職業ではあるのだ。
邪魔者、しかし世界のパーツとして必要ではあるもの。
皆扱いに困っている。捨てたがっている。
そんなものをなぜボランティアでやっているのか。
なぜだろうな。
救いたかったのかもしれない。
世界を。
いや、魔王をか?
親しかったことはない。そもそも面識すらない。
最近では動きもないようで。
俺も昔は村に住んでいた、村にいたころの俺は……魔王の子、と呼ばれていた。忌み子だと。
真実そうなら俺の親族は魔王というわけで、もしそうならやっぱり会いにいきたいじゃないか。
ならば俺が救いたいのは魔王ではなく、俺自身の孤独であるのか。
わからない。
それでもいい。
霧の中を歩き続ける目的が欲しいだけ。
「希望」が欲しいだけ。
ここをずっと歩いて歩き続けた先で魔王、同胞に会えるなら。
歩き続けるのも悪くはないなと思うのだ。
そうして今日も、霧の中を歩いている。
152/157ページ