短編小説(2庫目)

 反復の毎日。
 辺りは白で、何もない。
 俺が毎日積んでいる塔。この塔の材料。初めは白くて、透き通っていた。
 劣化を経て、塔は■■色になった。
 思い起こしたくないものは思い起こしたくない、当然のことなのだが劣化した塔を見る度に思い出してしまう。
 そんなことはどうでもいいのだが。
 本当にどうでもいいのか?
 という問いはもう何度も繰り返して、でも、どうでもいいということにしておかなければどうでもよくなくなってしまう。
 劣化したことがどうでもよくなかったとしたら、「成長」できないまま劣化だけしたとしたら、それは希望なのか絶望なのか、よくわからないまま、それすら「よくわからない」に落ちるのだ。
 そういうことにしておかなければならないから。
 どうだっていい、そう、どうだっていい。繰り返さないと堕ちてしまうから。
 ■が■■したことも。
 忘れられたことも。
 忘れることも。
 陳腐な悲劇になったことも。
 全てをどうだっていいに変えなければ俺は生きてゆけない。狂ってしまう。
 既に狂気だとわかっているのに回すのか。塔を回すのか。
 うさぎは塔から身を投げたのか。
 ■は塔を壊したのか。
 それら全てがどうでもよくなければ困る。忘れてもいいことでなければ困る。言及する価値すらないことでなければ困る。
 こんなことは誰にも言えない。
 言えないって? 世界は滅んでいるんだ、言うべき相手もいやしない。
 それなら真に「どうでもいい」のかもしれないと。
 そんなはずがあるわけがない、結局はわからないが。
 そういうことになっている。
 狂気の枷は繰り返す、二度と外れることはなく。
 今日もまた、終わってゆく。
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