概念サバンナの今日たち
夢。夢。夢。
雪の降らない地方、なのに外は大雪。
今日は家で眠らなければ。
そんなわけで眠っている。
眠っている、が、意識がある。
夢を見ていた、サバンナの夢。
サバンナでも雪が降っていて、ライオンが俺を見ていた、俺もライオンを見ていた。
けれどライオンのことなんて見ない方がいい、早く、深い眠りに落ちてしまった方がいい、忘れてしまった方がいい。
眠る、眠る、努力して意識を手放す。
落ちていく、その狭間、ちらりとサバンナが見えたような気がした。
◆
雪原。
雪を被ったライオンが立っている。
戦え、と声が言う。
失われた神の声。
戦え、敗北は許されない。戦え、そんなライオンごとき、他と比べて小さく弱いライオンごとき。お前は恵まれた人間だ、そんなライオンなど何ということはない。お前は恵まれた人間、ゆえにお前はライオンと戦わねばならない。戦え、戦って勝て、さもなくば――
目の前に槍が落ちる。
これで戦えということか。
俺はうさぎの穴を探す、当然穴も雪で塞がれていて、どこにあるのかわからない。
仕方なく槍を拾い上げる。
ライオンが大きく口を開けた。
◆
重い。何かが載っている。
夢の中で俺はあっけなくライオンに負け、飛びかかってきたライオンがずしりと俺の上に載って。
それじゃあこれはライオンなのか?
眠い目を無理矢理開く、果たして身体の上には、
何もない。
丸まった黒い布団が一つ。
寝相が悪くて丸めてしまった布団が身体の上に載っていたのか。
夢の中の俺はどうなってしまったのだろうか。
夢の中。
それともここだってまだ、夢の中なのかもしれない。
あの学校やサバンナと同じように、夢の中……
ふよふよと視界が揺れる。
睡眠不足か。
これだけ眠って睡眠不足なんてことはないとは思うが、俺が俺であるがゆえに俺は万年睡眠不足だ。
そんなことはどうでもいい、が、なおも視界はふよふよと揺れる。
黒い布団、だったと思っていたものが動く、ぷよぷよとした黒い影。
「お前……」
いや、「お前」じゃない。これは複数形だ。
ぷよぷよの影たちは部屋にぽつりぽつりと点在し、俺を見ている……のかと思ったのだが圧を感じないのでこれはたぶん見ていない。
どうなってるんだ。やっぱりここは夢の中なのか。
何度も何度も夢を見すぎて夢と現実の境が曖昧になっている、ここも「狭間」なのだろうか。
何でもいいようなよくないような。
お腹の上のぷよぷよをつつく。
ぷよぷよはふるり、と揺れた。
俺はため息を吐く。
カーテンの隙間から外を見ると、雪はもうやんでいた。
雪の降らない地方、なのに外は大雪。
今日は家で眠らなければ。
そんなわけで眠っている。
眠っている、が、意識がある。
夢を見ていた、サバンナの夢。
サバンナでも雪が降っていて、ライオンが俺を見ていた、俺もライオンを見ていた。
けれどライオンのことなんて見ない方がいい、早く、深い眠りに落ちてしまった方がいい、忘れてしまった方がいい。
眠る、眠る、努力して意識を手放す。
落ちていく、その狭間、ちらりとサバンナが見えたような気がした。
◆
雪原。
雪を被ったライオンが立っている。
戦え、と声が言う。
失われた神の声。
戦え、敗北は許されない。戦え、そんなライオンごとき、他と比べて小さく弱いライオンごとき。お前は恵まれた人間だ、そんなライオンなど何ということはない。お前は恵まれた人間、ゆえにお前はライオンと戦わねばならない。戦え、戦って勝て、さもなくば――
目の前に槍が落ちる。
これで戦えということか。
俺はうさぎの穴を探す、当然穴も雪で塞がれていて、どこにあるのかわからない。
仕方なく槍を拾い上げる。
ライオンが大きく口を開けた。
◆
重い。何かが載っている。
夢の中で俺はあっけなくライオンに負け、飛びかかってきたライオンがずしりと俺の上に載って。
それじゃあこれはライオンなのか?
眠い目を無理矢理開く、果たして身体の上には、
何もない。
丸まった黒い布団が一つ。
寝相が悪くて丸めてしまった布団が身体の上に載っていたのか。
夢の中の俺はどうなってしまったのだろうか。
夢の中。
それともここだってまだ、夢の中なのかもしれない。
あの学校やサバンナと同じように、夢の中……
ふよふよと視界が揺れる。
睡眠不足か。
これだけ眠って睡眠不足なんてことはないとは思うが、俺が俺であるがゆえに俺は万年睡眠不足だ。
そんなことはどうでもいい、が、なおも視界はふよふよと揺れる。
黒い布団、だったと思っていたものが動く、ぷよぷよとした黒い影。
「お前……」
いや、「お前」じゃない。これは複数形だ。
ぷよぷよの影たちは部屋にぽつりぽつりと点在し、俺を見ている……のかと思ったのだが圧を感じないのでこれはたぶん見ていない。
どうなってるんだ。やっぱりここは夢の中なのか。
何度も何度も夢を見すぎて夢と現実の境が曖昧になっている、ここも「狭間」なのだろうか。
何でもいいようなよくないような。
お腹の上のぷよぷよをつつく。
ぷよぷよはふるり、と揺れた。
俺はため息を吐く。
カーテンの隙間から外を見ると、雪はもうやんでいた。