短編小説(2庫目)
秋は空虚の季節だ。
俺は空を見上げた。まだ暑いのに、秋の虫が鳴いている。
秋は空虚。俺も空虚。
何もかも空虚になる前に何ができるだろう? 俺は無力感に苛まれていて、何かをすることなど不可能だ。
何を言うこともできない。なぜなら俺の言葉に力はないから。
誰に何を言うこともできない。なぜなら――かっこつけちゃいるが、俺はとても頭が悪い。
人と話していても次の言葉が出てこないし、揚げ句の果てに喋ろうとして場に合わないことを言ってしまう。
何の能力なら高かったのだろうか。何であれば社会に貢献できたのだろうか。
今となっては、何もかも遠い話だ。
空虚を紛らわすにはどうすればいいか、と問いを立てた仙人がいたそうだ。本当はいないのだが、いたということにする。
空虚を紛らせるには食うか、寝るか、集中するかしかない。
俺は食うのが好きなので食って紛らせた。一日中寝る中で少しだけ起き上がってパンを5個食う。それすら面倒だが、俺は食うのが好きなので美味いとは思う。紛らわせられるわけじゃないがまあ……死なずにはすむ。
集中する、は……動画を一日中見るとか、ゲームを一日中するとか、そういうことだ。ちなみに俺はこれをやって大学の単位を全て落とした。
何でこんな話してるかって?
そうだな。
友人が音信不通になった。
秋という季節もあるのかもしれない。俺の周囲からはとにかく人がいなくなる。人生そんなもんか? 聞いてないんだが。
でもそれはたぶん、俺が引き留めず声もかけないからだろう。
気付いていても、何も言えない。
コンプレックスがあるから。ひどい無力感があるから。
どうせ俺が声をかけても彼ら彼女らは消えていく。音信不通になるのだ。
俺には何の力もないし、彼ら彼女らが苦しむどの問いへの答えも思い付かない。
つらさを処理するにはどうすればいいかとか。俺はそれに耐えきれなくて医者の薬を飲んだ側で。つらさは脳のバグだ。バグは直せばいいのだが、それが難しいのだと仙人は言う。全ての責任から遠ざかったとき、つらさは幾分かマシになると仙人は言うが、俺としてはフラッシュバックがあるのでしばらく苦しむでしょうとしか返しようがない。
仙人は強くなったので上から何でも言える。俺は強くないのでこうしてただ言い立てるだけだ。
それでも俺の話をこうして聞いてくれるヤツがいるだけでありがたいと思っていて、普通、こんな俺の話は社会不適合者の戯言として流されてしまいそうなものだが、まあ、俺が己を社会不適合者と言うと他のヤツを傷付けてしまうだろう。
そうだな。
ずっと半身を探している。
失ってしまった半身を。
きみたちの誰にもきっと、テーマがあるのだろう。俺は今になってまあようやく気付いた。
半身。それが俺のテーマなのだ。
で?
で、なんだよな。俺が自分の話をするだけじゃ変わらないんだ。何も。いや。俺は何かを変えようとしてるわけじゃない。
そうだな。
誰かが音信不通になったら、俺は寂しいってだけの話なんだ。俺が話をするのはたったそれだけのくだらない理由なんだ。
戻ってくるのだろうか。きみたちも、友人も。
俺にはわからないから、ただ、行かないでくれ、ずっと現世にいてくれ、寂しいから、って駄々をこねて待ち続けることしかできないんだ。
そんな話。
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