短編小説(2庫目)

「最近の若者はよくわからないモンスターみたいだ」
 と日記に書いてあった。
 俺も若者だったときはきっとよくわからないモンスターに見えてただろうよ。
 そう思う。
 当時の俺は必要以上に若者に怯え、若者を嫌っていた。
 今の俺?
 ……わからない。わかるのは、生きる意味が見出せないということ。
 意味のある人生などはなく、人間生きてる以上無意味であり、というのは意味のある人間しか生きてはいけないのかという議論になるからの反駁であり……はあ。
 俺はカーテンを開けかけて、
 カッと光る日差し。途端に充満しそうになる熱気。
 やめた。
 もう9月も始まるというのにこの暑さは何だ? クーラーつけっぱなしの部屋にずっといる俺としても、それでも熱気の上がり下がりはわかる。
 アパート最上階の俺の部屋は熱を遮るものもなくガンガン天井が照らされ、日中非常に暑い。
 なので、クーラーを最低温度でぶん回している。
 電気代?
 不規則な生活で長生きはしないから、いいんだ。
 貯蓄はどんどん減ってく。
 毎月入る僅かな収入じゃとても足りないんだ。家賃に消えるだけ。
 暗い気持ちになってきた。
 朝(昼)からこんな暗い気持ちになってどうする? どうしようもない。
 暑い。ただ、暑い。
 ああ。……寝起きの水分補給をしていないからか。
 俺はコップを取り、冷蔵庫に入れてあった水差しから水を注いで飲み干した。
 ……あまり冷えていない。
 俺の冷蔵庫はもうボロで、コンビニの弁当などを入れっぱなしにしているとカビが生えたりする。
 あまり冷えないのだ。
 能力不足で本当に使ってほしい相手に迷惑をかける。
 まるで何者にもなれず引きこもっている俺のように。
 ここで冷蔵庫が喋り出してくれれば孤独を解消する手段にもなるというのに、圧倒的現実の前でそれは幻聴にすぎないことを俺は知っている。
 暑い。
 俺は食べるものも食べずに布団に潜り込んだ。
 外には長らく出ておらず、ネットショッピングで生活を賄っている。
 クレカの口座が止まったら終わりだな。
 そう、思う。
 不規則な生活と運動不足のせいで、全く体力が無い。
 引きこもりの中でも筋トレやらをする輩もいるが、俺はああはなりたくないね。
 なぜなら。
 マッチョイズムに迎合して、せめて筋トレだけはとかいう惨めな根性が透けて見えるのが格好悪いからだよ。
 ……俺の心の中の冷蔵庫が「こらっ」と言う。
『そんなこと言ったら君も不幸になるよ』
 不幸かどうかは俺が決めることで、冷蔵庫の決めることではない。
 そして冷蔵庫が喋り出した時点で俺はたぶん、何か食べた方が良い。
 疲れて弱っているのは明白だからだ。
 それでも俺は布団から出ない。
 ぐるぐるぐるぐる考える。
 不規則な生活。他の全てを憎んでも、自分だけは憎まないようにしよう。
 それとも、自分を深く憎んでも、他の全ては憎まないように、だろうか。
 わからないまま、遠く、いなくなってしまったものを恨んだ。
 健康。時間。若さ。停滞。
 それらの全てを、恨んだ。

 おわり。
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