短編小説(2庫目)

 つよいくすりを飲んだ。
 だから俺は幸せになった。
 そうだろ。

「君がそうして見てる『大丈夫』なんてないのと同じさ」

 俺は、と語り始めるのも億劫だ。
 ふわふわしていて幸せだ。
 それは本当に?
 頭が痛い。つよいくすりを飲んだから。
 それは、本当に?
 そういうことにしておいた方が、俺としては助かる。そうでなければこの状態は説明できやしないからだ。
 どういうことか。
 つよいくすりは飲んでいる。毎日。そうだ。あたまをふわふわさせるくすり。憂鬱な気分から抜け出すくすり。精神の均衡を取るくすり。そのほかたくさん、たくさん。
 多くのくすりを飲んで、そうして俺は幸せになった。

 何も感じない。
 何も。
 不幸も、憂鬱も、孤独も、苦しみも、何も感じなくなった。
 だから俺はこれでいいんだと思う。
 俺の置かれた状況がいかに不幸でも、俺の置かれた家庭がいかに幸福でも、俺は今██だ。それでいいんだと思う。

 すっきりとした気持ちでいる。それでもこれもくすりのせいにすぎない。
 つよいくすりのせい。おかげ。
 よかったね、と俺が言う。よかったな、と俺が言う。
 バッドをキメた俺の行く先はまあ、そのへんなんだろう。

 おわり。
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