短編小説(2庫目)
「時が経つにつれ表情筋がどんどん固まってった」
「君それは病んでるんじゃない?」
「病んでないぞ。ただ仕事を辞めて外に出ることがなくなって人と接することがなくなっていって一日に言葉を発することがなくなって」
「ストップストップ! それ以上行くとなんか悲しい!」
「事実を述べてるだけなんだが」
「ん~……まあ。そこに僕が来たんだろ」
「そうだが?」
「そうだが? じゃないんだよ。君はその引きこもり根性を直す気はないのかい」
「無いが?」
「……う、今のはなんか失言だった。君の内部の何かを受信してしまったみたい」
「内部?」
「君、自分を責めてるだろう」
「いや。そういうのはとっくに卒業した」
「ならこの『ごめんなさい』の乱舞は何だい。僕、謝られても嬉しくないよ」
「……俺の心の中ってそんなになってる?」
「なってる」
「そんなに?」
「そんなに」
「あー……」
どうしようかね、と君は言った。
「そんなに謝罪が溢れてるってことは、俺が誰かに謝りたいってことなのか」
「自分じゃわかんないものだもんね、そういうのは」
「……そうだな」
君は視線を下げる。僕の影に。
「小さいんだから、影も小さいよ」
「伸縮自在って言ってなかったか」
「今は小さい姿を取ってるからさ」
「そうか」
「うん」
沈黙が落ち、ややあって、君が口を開く。
「俺のこれは……何に対する謝罪なんだろう」
「ん~……それ、僕が言って君すぐ受け入れられる?」
「……」
君は眉にシワを寄せた。
「そう。だからこういうのはあまり急かない方がいいんだよ」
僕はハサミを閉じたまま振る。
「ゆっくりやっていこう、それができなくてもね」
「……そうだな」
君はそう言って、少し笑った。
「君それは病んでるんじゃない?」
「病んでないぞ。ただ仕事を辞めて外に出ることがなくなって人と接することがなくなっていって一日に言葉を発することがなくなって」
「ストップストップ! それ以上行くとなんか悲しい!」
「事実を述べてるだけなんだが」
「ん~……まあ。そこに僕が来たんだろ」
「そうだが?」
「そうだが? じゃないんだよ。君はその引きこもり根性を直す気はないのかい」
「無いが?」
「……う、今のはなんか失言だった。君の内部の何かを受信してしまったみたい」
「内部?」
「君、自分を責めてるだろう」
「いや。そういうのはとっくに卒業した」
「ならこの『ごめんなさい』の乱舞は何だい。僕、謝られても嬉しくないよ」
「……俺の心の中ってそんなになってる?」
「なってる」
「そんなに?」
「そんなに」
「あー……」
どうしようかね、と君は言った。
「そんなに謝罪が溢れてるってことは、俺が誰かに謝りたいってことなのか」
「自分じゃわかんないものだもんね、そういうのは」
「……そうだな」
君は視線を下げる。僕の影に。
「小さいんだから、影も小さいよ」
「伸縮自在って言ってなかったか」
「今は小さい姿を取ってるからさ」
「そうか」
「うん」
沈黙が落ち、ややあって、君が口を開く。
「俺のこれは……何に対する謝罪なんだろう」
「ん~……それ、僕が言って君すぐ受け入れられる?」
「……」
君は眉にシワを寄せた。
「そう。だからこういうのはあまり急かない方がいいんだよ」
僕はハサミを閉じたまま振る。
「ゆっくりやっていこう、それができなくてもね」
「……そうだな」
君はそう言って、少し笑った。
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