短編小説(2庫目)

 俺は愚痴が多い。
 何かというと愚痴が沸く。自分が評価されないとか、誰にも構って貰えないとか、そのような種類のどうしようもない愚痴。
 しまいにはその愚痴で構って貰おうとするんだから、救えない。
 朝起きたら愚痴。昼を食べるときも愚痴。夜寝るときも愚痴。
 愚痴は留まることなく流れ続け、俺の頭を支配する。
 このままでは「魔王」になってしまうのではと思うが、何の力もない一般人にできることなどただのいやな人になるだけだ。
 俺と接することを嫌がって皆離れてゆく。俺の作ったものたちも皆捨てられる。あのかわいい人形たちだ。
 人形たち。
 俺は裁縫をするのが趣味で、人形を作って飾っている。
 それを見ると心が和んで良かったのだが、通販サイトで売り出してから風向きが変わった。
 完璧なものにしなければならないという気持ちが先行して、少しのミスも許せなくなった。
 部屋に飾った人形たちを見ても、型紙切るときにミスをしたとか、目の刺繍をやりすぎたとか、そんな失敗が思い浮かんで止まらない。
 全員かわいい人形たちなのだが、どうしても。どうしても、失敗の記憶が蘇るので、俺は上から布をかけてしまった。
 昔から、俺は愚痴が多かった。
 愚痴を言わなければ生きていけないような性格をしていた。嫌な性格だ。友人を捕まえては愚痴を吐くだけ吐いて、ありがとう気が楽になったよ、などと言って解放する。当たり屋と言われても仕方がない。
 愚痴が多い子供。そう見られるのも当然だ。若く見られて当然だ。もういい歳なのに。
 人形なんて作っているから若く見られるのだろうか。ぬい文化はそこそこ若者向けの文化だと俺は思っている。だから、
 など。
 理由を探しても意味がない。
 俺の愚痴は何もない鳴き声のようなものだと知っている。
 ただ苦しいから、つらいから漏れ出る鳴き声。
 しんしんと降り積もる雪を思い出す。
 あれが降って、人形にかけた布みたいに俺の心を覆い隠し、愚痴を消してくれればいいのに。
 そう思う。
 人形を燃やすことはしない。火事が怖いし。恨まれそうだし。
 忠実なる我がしもべ、すなわち人形たちは俺のことを被造物なりに愛していて、反抗したり恨みを抱いたりすることはない。俺は傲慢にもそう思っていて、しかしながら創造主である俺がこんな性格では、人形も俺に似るのではないか。
 魂のないものにこんな思考を回していても意味がない。
 俺は意味のない思考を回すのが得意だ。
 どんどんわけがわからなくなっていく。支離滅裂な愚痴と化していく。
 俺は、俺は、俺は。
 どうしたいのだっけ?

 そして何もなくなった。
 俺の心にはあの雪が降り積もり、ただ漠然とつらい気持ちを押し隠すのみとなった。
 白い布の下の人形たち。
 それが、俺の心だったのかも。
 なんて。
 どうしようもない話だ。
 
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