短編小説(2庫目)

 何も得ず、何も進まず、このままここで凍結していたい。
 俺はそう思った。
 雪の下、地面の下の地下空洞で、コタツの中にもぞもぞと入り込んだまま、昔好きだった歌だけ聴いていたい。
 新しいことを覚える能力はもうなくなってしまったし、新しいことを楽しむ能力もなくなってしまった。
 きっと俺はもう、過去に生きる者となったのだろう。
 何一つ受け入れることができない、何も楽しめない、そんな生き物に。
 追っているシリーズの新しいゲームが出なければいいと思う。追っているシリーズの新刊が出なければいいと思う。
 それはとても不健全な願いで、追っているものは早く終わってほしい。だらだらと長くなる前に。
 不健全だ。
 俺の人生もだらだらと長くなってしまった。もはや収拾がつかない。
 けれど生きていたいと思う。凍結したまま生きていたいと思う。
 これ以上歳は取りたくないし。感情も動かしたくない。
 疲れているんだと人は言う、けれども何に疲れているんだ?
 わからないままずるずると老いていく。体が経年劣化していく。
 ああ。嫌だな。
 のびのびになって、それで終わり。
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