短編小説(2庫目)

 カウンターが回る、俺は思う。
 AIが食ってる音だ。
 カチカチと音を立てながら、奴らは俺のサイトの文章を食っている。
 まるで紙魚のように。
 
 ここまで敵対路線になってしまったのは、洗脳かもしれないし、対立煽りかもしれないし、その両方かもしれない。
 机の横のコーラを呷る。
 それでなくとも俺は騙されやすい。コーラとハンバーガーが世界一の食べ物だと信じるようになったのもSNSの影響だし、AIが俺の文章を食うことを苦痛に思うようになったのもSNSの影響だ。
 SNSにはこの世の真理が書いてある。SNSこそが正しく、そのほかのメディアは一切正しくなく、間違っているのだ。
 
 くだらないことを書いている間にまた、AIが俺の文章を食っている。
 カチカチと、カチカチと。
 俺が今まで無料の文章をやってきたのはAIにタダで食わせるためだったのか? タダの文章、誰でもありがたみゼロで食い散らかして構いません。
 そういう意味で書いていたのか? 俺は。
 結果的にそうなってしまった。そういうことだ。
 最初はそんなことになるとは思っていなかったんだが、どうしてこうなってしまったのか。未来は予測できない。
 何を食われても構わないと思っていた。けれど、文章だけは嫌だった。
 そんなくだらない意地で俺は文章を辞めるのか。
 AIに食われたくないから。だから、辞める。
 10年も続けたものを?
 
 ……知るわけがない。
 
 そうして俺は筆を置いた。
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