短編小説(2庫目)

「みんなここにいる。みんなここにいるのに寒くてたまらないのはなぜだろうな?」
 咳をしてもひとり。俺はもうどうしようもなく寒さにやられて布団にくるまっていた。
 視線を外すように後ろを向けられたフィギュア。俺はそれが好きだった。何かしらの力によってそれは裏返されてしまった。
 裏側の裏側はなお裏側であり、一度裏返されたものが元に戻るのは難しい。
 精神を数学的に示そうとしたヒトがいたらしいが、現実はそううまくはいかなかった。
 
 俺が何を言いたいか、「どうしようもなく一人である」ということを言いたかった、それだけのことをこんな風にだらだらと述べてきたわけである。
 頼みの綱の蟹も「留守」だし、さながら路頭に迷った犬である。
 ワン。
 犬の鳴き声が「ワン」であることは事実であるが、いや、事実ではなくそう聞こえるというだけのことであるが、俺は自分を犬であると称されることがたまにあるが、
 そんなことはどうでもよくて。
 
 また、雪が降っている。
 天窓から銀粉が滑り落ちる、誰一人ここにはいない。
 
 おわり。
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