短編小説(2庫目)

 書く文章がどんどんおかしくなっていった。
 俺のことについては、たぶんそう。

 空には未確認飛行物体が飛ぶようになり、深夜に人が訪ねてくるようになった。

「こんな深夜に、なんですか」
『██████』

 言っていることは聞き取れない。
 しかし、そこに確かに人がいるのだ。
 俺は玄関のドアを開けた……誰もいなかった。

「……気のせいか」

 寝室に戻り、ベッドに潜り込む。
 眠りはすぐにやってきた。

 俺は売れない作家をやっている。
 作家と言っても同人作家で、印刷所に本を頼んで売るだけのもの。
 そんな俺の元に██がやってきたのはある夏の日のことだった。

〝目覚めた〟俺は旅をした。
 色々なところに、電車に乗って、バスに乗って、色々な観光先、色々なビジネスホテルに行った。
 せっかくの観光先でも観光に出ずに、ホテルで書きかけの小説を直したり、完成させたりしていた。

 だが俺は後に気付くことになる。
 自分の書いた小説がめちゃくちゃになっていることに。

 ██は俺に囁く。
「お前は偉大な小説家だ」と。
 俺はそれをにこにこして聞いていた。

 結局俺のそれは狂気だったということがわかるのだが、それはまあ、後の話。
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