短編小説(2庫目)

 夜ごと、嫌な夢で目が覚める。
 睡眠時覚醒で夢の残滓は残り、泥棒に入られる夢だとか、ヒトに見放される夢だとか。
 そんな夢たちがぐるぐる、ぐるぐる。

 友人に相談すると、気にしすぎだと言われた。
 言われた俺は思う。その言葉が多くの奴等を崖っぷちに追い込んでいくんだと。

 だがおそらくは答えてくれるだけましなのだ。
 この年代は何かと忙しい。そんな中で俺と会ってこんなくだらない、医者に言ってもどうしようもなかった話なぞを聞いてくれる奴がいるだけありがたいと思うべきで、そう。俺は性格が悪いので。

 そんな友人も俺の病気のせいで無くしてしまった。
 幻覚・妄想に支配されて頭の中がぐるぐるになった俺は、妄想の中で何事かをそいつのせいにしたらしい。
 そんなこんなで多くの人々に見放された俺は、自分の行動全てに罪がへばりついている気がして、身動きが取れなくなった。

 困ったな。
 そう思う。
 ぐるぐるになって入退院した俺は、入退院で何もわからなくなった。
 同じことを二度言う。二度書く。二度思う。
 言葉もすぐに出てこない。
 病気とはここまでヒトを壊すものかと思った。

 ヒト。
 であれば。
 よかった。
 
 本来俺はヒトに化けた█████で、化けきることが儀式の完遂だった。
 ヒトの病気にまでなってこんなことになって、まさしく化けきったと言えるだろう。
 しかし、儀式が完遂した後、俺がどうなるかということまでは教えてもらえなかった。

 どう思う?
 これも俺の妄想かもしれない。
 本当は俺はヒトで、儀式なんてなくて、病気でおかしくなっているだけ。
 そんな考え方もあるよな。

 文章の中だけは書き手は嘘ばかり吐ける。███もそうだった。
 そう。
 そうであれば、
 そうであれば?

 ……もう言葉は出てこない。
 俺の手記は終わりだ。
 性格が悪いから、「誰も何もしてくれなかった」で終わる。
 さあ、どれが嘘だろう。
 探すゲームをしてもらっているうちに、俺は寝るよ。
 おやすみ。
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