短編小説(2庫目)

「ハマれるものがなくなった」
「インプットが無ければアウトプットも無いよ」
「なに、なんで今日そんなに厳しいの蟹」
「厳しくはないよ」
 ちら、と横目(?)で俺を見る蟹。
「君はアウトプットしたいのかい?」
「いや、俺は平穏に暮らして行ければそれで」
「本当に?」
「…………」
 俺が何をしたいか。
 それはともかく、この眠気を晴らさなければ解決しない。
「毎日眠いんだ」
「うん」
「眠くて眠くてぐったりしてしまう」
「そうみたいだね」
「薬のせいだと蟹医者は言うけど」
「寝不足ではないみたいだね」
「そうだな」
 俺は首を傾げた。
「蟹に選ばれれば不調は消えるんじゃなかったのか」
「薬の調整を地道にしていかなきゃな世界線もあるからねえ」
「世界線」
「本人の常識の程度による、というか、蟹について、君ができないと思ってることは僕にもできないし、できると思ってることは僕にもできるというか」
「そんな込み入った感じだったのか」
 蟹は頷く。
「端的に言えば、僕を信じろって感じだね」
「うーん」
「あ、まだそこまで信頼度行ってない感じ?」
「信じれば何でもできるってのがなあ」
「不服ポイントそこか~」
「……まあ、闘病地道に頑張るよ」
「そっか」
 蟹は俺の肩をぽんぽんと叩いた。
「えらい!」
 えらい。
21/157ページ
    スキ